【中小企業の事業承継】年末年始に息子と事業承継の話をすべき理由とは?
今日は、中小企業の事業承継として、年末年始に息子と事業承継の話をすべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 年末年始だからこそ事業承継の話し合いをする
2 事業承継の最大のネックは銀行取引である
どうぞ、ご一読下さい。
1 年末年始だからこそ事業承継の話し合いをする
今日は、2025年12月26日。
今年もいよいよ終盤です。
今日で仕事納めにして、明日から最大9連休となる会社も少なくなさそうです。
普段は、多忙を極める中小企業経営者ですが、せっかくのお休みなので、海外旅行に行くもよし、国内で温泉に浸かるもよし、自宅で日本酒を飲みながら箱根駅伝や大学ラグビーを視聴して母校を応援するもよし、充実した年末年始を皆さんに過ごして頂きたいものです。
そんな年末年始ですが、ちょっとだけ、時間を割いて、特に、息子に事業承継をさせたいと考えている中小企業オーナー経営者に、息子と真剣に会社の将来を考えて、事業承継について話し合う時間を持って頂きたいと北出は考えています。
バブル期に30代で創業したオーナー経営者は、もう60代から70歳の声を聞こうという年齢に達しています。
オーナー経営者は、三十数年間という長い年月の間、会社を切り盛りし、百戦百勝とはいかなかったとはいえ、会社を大きくして、軌道に乗せてきたという自負がありますし、世間も「あの社長はなかなかのやり手やな」と評価されているものです。
しかしながら、60代から70歳の声を聞く年齢となると、何かを無理が効かなくなってくるのも事実です。
「おかしい、なんでこんなにしんどいんかな」と体が悲鳴を上げている方も中にはいらっしゃるかも知れません。
一方で、そのようなオーナー経営者の下、息子が既に自分の会社に入社して、営業担当専務取締役として、営業面で実権を把握し、社内だけではなく、お客様や仕入先、外注先からも「まもなく、社長に就任する方やな」という暗黙の了解が成立しています。
ところが、オーナー経営者としては、「まだまだオレがしっかりやらないといけない。息子にすぐにバトンを渡すわけにはいかない」という自負もあったりします。
また、息子の方からも「親父、そろそろ引退した方がええんと違うか。あとは俺に任せてくれ」とも言い難いものがあって、なかなか事業承継に踏み切ることができないまま時間だけが経過していくというケースもなきにしもあらずです。
このように、いざ、事業承継をするとなっても、なかなかタイミングが合わないことがままあるのです。

2 事業承継の最大のネックは銀行取引である
タイミングを合わせるのが難しい事業承継ですが、息子に実権を渡していく過程で、営業や製造といった部門は比較的渡していくことが容易です。
しかしながら、事業承継で最後まで残るのが、「銀行取引」です。
会社の抱える取引銀行から借金はいくらで、個人保証の状態はどうなっているのかというのは、会社の中の最高機密と言っても過言ではないほどデリケートな問題です。
ましてや、例えば、粉飾をしていたり、簿外の債務がある場合には、オーナー経営者は、会社の中身を息子に詳らかにすることに躊躇してしまいます。
特に個人保証の問題は、オーナー経営の中小企業にとっては最も口外しにくい内容です。
オーナー経営者としても、「息子に俺の代の借金を背負わせるのは申し訳ない」と感じ、息子からしても、直接口には出さないものの「親父の借金を俺がなんで背負わなあかんねん」と理不尽さを禁じ得なくなります。
一方、個人保証の問題については、経営者保証ガイドラインが定めるとことに沿って会社を変えていければ、個人保証を解除することが可能となります。
もちろん、金融機関としては、債権の保全の観点から、人的保証解除には相当程度抵抗します。
財務の改善、会社とオーナーファミリーとの分別厳格化と取引金融機関への定期的な業況報告という要素をしっかりと満たすことができて、初めて、「個人保証の解除をお願いしていきたい」と取引金融機関と交渉を始めることができます。
財務が傷んでいるようなケースの場合、個人保証解除には数年程度を要することもなきにしもあらずです。
逆に言ってしまえば、個人保証の解除が実現できると、事業承継へのハードルはほとんど超えたと言ってもいいお話です。
このため、個人保証の解除を含めて、事業承継のタイミングをXデー(X年度になるかも知れませんが)を設定して、Xデーに向けて、事業承継のタスクをスケジュール化して、そのスケジュールに従って、粛々と事業承継への準備を進めていくことが肝要です。
取引金融機関、メインバンク担当者も口には出さないまでも、事業承継の時期について大きな関心を持っています。
メインバンクからすれば、オーナー経営者が会長として若社長を支えるような事業承継の実現を心から祈っていることは間違いありません。
このように、事業承継を円滑に実現していくためには、一定程度の時間が必要となります。
事業承継へのXデーと定める前段階として、年末年始を利用して、じっくりとオーナー経営者と息子が向き合って、真剣に議論をする必要があります。
事業承継についてじっくりと議論をするためには、雑音が入りにくい年末年始が絶好のチャンスなのです。
中小企業オーナー経営者は、事業承継の問題を先送りすることなく、早い段階から、事業承継への準備を進めていく必要があるのです。

