【中小企業経営者の心得】紙の手形・小切手の廃止目前で中小企業で実際に起こっていることとは?

今日は、中小企業経営者の心得として、紙の手形・小切手の廃止目前で中小企業で実際に起こっていることについて考えます。

今日の論点は、以下の2点です。
1 不渡が中小企業のモラルハザードとして機能していた
2 不渡が出なくなりある時払いが横行している

どうぞ、ご一読下さい。

1 不渡が中小企業のモラルハザードとして機能していた

紙の手形・小切手の廃止が2027年3月末に迫り、その期限まで1年を切りました。
金融機関の店頭では、紙の手形・小切手の廃止を告知するポスターが貼られていて、手形・小切手を切っている会社はさぞかし大変であろうと考えがちですが、中小企業の経理の現場では、紙の手形・小切手の廃止による影響は実に軽微に過ぎません。

そもそも、紙の手形・小切手の流通量は年々減少の一途を辿っています。
手形の流通量のピークに達したのはバブル華やかりし1990年のことで、手形交換高は1990年に約4,797兆円でしたが、直近の2024年の交換高は75兆円強にとどまっていて、ピーク時と比較すると、98.5%減となっていて、その後もさらに減少傾向が続いていることが見込まれます。

紙の手形は、仕入先や外注先に振り出されていて、120日手形であれば、締め後4ヶ月支払を繰り延べることができ、資金繰り上、プラスに働くメリットがありました。
しかしながら、手形・小切手は振り出されたら、必ず落とさなければならないものでした。
手形・小切手は支払日に決済場所である取引金融機関の当座預金で決済されますが、仮に1円足りなくても、容赦なく不渡となっていました。
不渡は、その昔、全国各地に存在した手形交換所で認定され、手形交換所に所属していたすべての金融機関営業店(支店等)に通知をされていました。
半年内に不渡が2枚出ると、銀行取引停止処分を受けて、当座預金は強制解約されました。

仮に、決済日の前に不渡が回避できないということになれば、手形・小切手を振り出した取引先にお願いをして、組み戻しをかけてもらうことで、不渡を回避することができました。
しかしながら、組み戻しを取引先にお願いすること自体、自社の信用を大きく貶めることになる他、組み戻しの手続きを取引先にやってもらう必要がありました。
組み戻しをお願いされた手形を取引先が金融機関で割引してもらっていたら、その手形を迎えにいかなければならず、その資金も必要になりました。
組み戻す手形を迎えにいくために、別の手形を割引せざるを得なくなるケースも少なくありませんでした。

このように、手形・小切手を振り出すこと自体、1円たりとも足らなければ容赦なく不渡となることで、手形・小切手を振り出す行為が自社のモラルハザードとして機能していた側面があったのです。

今後については、紙ベースの手形・小切手から電子債権に移行していくことになりますが、不渡へのリスクを勘案すると、紙ベース、電子債権ベース共に、手形・小切手の流通量はますます減少していくことが予想されます。

【中小企業経営者の心得】紙の手形・小切手の廃止目前で中小企業で実際に起こっていることとは?

2 不渡が出なくなりある時払いが横行している

紙ベースの手形・小切手の流通量が減少し、電子債権への移行もなかなか進まない現状からすると、今後は、手形も小切手も切らず、買掛金や未払金を支払日に合わせて振込にて支払をすることが主流になることは間違いなさそうです。
ネットバンキングの使い勝手がよくなっていることも、総合振込による銀行振込がますます幅を利かせていきそうな勢いです。

一方、資金繰りが厳しくなってきた場合、先ほども申し上げましたが、経営者は、切った手形を落とすため、必死で金策に走りました。
現在は、手形・小切手の決済が資金不足で不渡になる場合、強制的に午後3時に当座預金を締めてしまいますが、その昔、金融機関営業店の部店長(支店長等)が、「明日の朝10時まで待つ。社長からの連絡を皆で待とう」と英断を下すようなことがありました。
経験則からすると、そのようなケースだと、前夜その社長がどのような金策に走ったのかはわかりませんでしたが、翌朝朝イチで、現金を手に社長が営業店に駆け込んできたような話が現実にはありました。
その昔、経営者と金融機関支店長とは、不思議な信頼関係が存在したのかもしれません。

しかしながら、紙ベースの手形・小切手の廃止によって、電子債権に移行せず、「ある時払い」に舵を切ると、仕入先、外注先も支払が遅れたとしても、「ちゃんと払ってもらわないと受注を止める」という具合の強気にも出られず、ダラダラと支払を後倒しにされる可能性が高まるのです。

取引の力関係上、どうしても弱い立場になりがちな中小企業にとっては、手形・小切手から「ある時払い」に移行されると資金繰り上、入金が読みにくくなってしまいます。

中小企業経営者は、「ある時払い」が起こり得ることを認識して、債権回収を営業担当者に丸投げすることなく、未収債権の債権回収を着実に進めていくことが必要なのです。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA