【中小企業の銀行対策】「その意味、わからんから教えてくれ」と経営者が質問しないリスクとは?
1 銀行取引は専門用語の塊である
非上場の中小企業にとって、より良好な銀行取引は事業継続の重要な鍵です。
それぞれの中小企業にはそれぞれの企業文化があるの同じで、金融機関も独特の組織風土を有しています。
預金にせよ、融資にせよ、為替取引にせよ、基本的には全て債権債務に関わることなので、金融機関内では別業界からは一見異様に見えるような専門用語が当たり前に使用されています。
なので、金融機関役職員が特に融資先との商談上であっても、金融機関内で使用されている専門用語が多用されてしまいます。
困ったことに、金融機関役職員も専門用語の多用が常態化しているため、金融村の中の専門用語の多用が世間の非常識であることに思いが至らずにいます。
北出は、お客様の中小企業のお手伝いをさせて頂くことになってその初期段階で、資金繰り表や場合によってはいきなり経営改善計画書を提出すべくメイン行から下位行の順番で経営者と共に金融機関にお邪魔するのですが、初の金融機関訪問後、クルマに社長と一緒に車に乗った途端、経営者から北出に「先生と銀行員との会話が半分くらいは意味がわからへんかったですわ」と言われることがままあります。
確かに、いざ、金融機関役職員と北出が話をし始めると、率直で突っ込んだ話をしてしまうので、余計に専門用語が飛び交うのかもしれませんが、正直、(今までどうやってコミュニケーションとられてきたのかなあ・・・)と心配になったりします。
そのような時は、経営者の方に「納得が行くまで聞いて下さい。聞き倒して下さい」とお願いしますし、そうすることで、経営者の方と北出の信頼関係を深める効果もあります。
少し脱線しましたが、金融機関では専門用語が多用され、そこで働いている金融機関役職員も専門用語の多用に違和感を感じていない、というのが、「中小企業と金融機関との橋渡し役」である北出の日常的な風景です。
2 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
北出が大阪に曲がりなりにも仕事場を構えるようになってやがて10年が経過しますが、大阪のお客様の中小企業経営者の方は遠慮なく質問してくれる傾向が強いというのが北出の実感です。
「それって、どういう意味かわからんから教えてくれ」、「あかんあかん、わからん、もっと分かりやすう説明してえや」とかリクエストしてくれます。
これは北出にとっては課題をその場その場でしっかりとやっつけることに直結するので、やりやすくなりますし、仕事も早くなります。
特に銀行取引の中で理解できないことがあると、さくっと質問して下さいます。
他方、地方の例えば4代目さんとか、2代目の70歳台の方とかになると、少し傾向が違います。
「はい」、「はい」、「はい」。
そういってくれるのはいいのですが、後からこちらから「あれってどうなりましたか?」などと質問したりすると、ちゃんと理解してくれていないことが後から分かったりします。
確かに、地方の有力企業であったり、お歳のいった経営者だと、メンツや見栄が邪魔するのか、「それってどういうことやねん?」と質問しづらいのかもしれません。
他方で相手の金融機関役職員からすると、「経営者が『はい』って言ってくれてるんだから、説明はし尽くしたわい」となってしまいます。
このようなその場しのぎの「はい」の連続が、後々、融資先中小企業経営者と金融機関役職員との間の不信感と軋轢を生んでしまいます。
このような相互不理解は極めて非生産的なので、大社長だろうが、老舗企業社長だろうが、下らんメンツや見栄などは葬り去って、率直に「それってどういうことやねん?」と質問しまくって、疑問、疑念を払拭する方がとっても生産的で、実利的です。
「それってどういうことやねん?」を中小企業経営者が繰り返すことによって、半年もたてば中小企業経営者の口から「2期連続黒字になったから当貸のレート、25ベイシスポイント下げてくれや」とか「TIBOR連動やな、スプレッドはなんぼ乗っけとんのや」とかの言葉が出るようになります。
こうなれば、金融機関役職員も「この社長には、下手なこと、言われへんな」と一目置かれる存在となります。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」、と世間でいいます。
中小企業経営者が金融機関と良好な関係を築くためのキラーワードは、実は、「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」なのでした。