【中小企業の銀行対策】長期借入金の一括返済がはらむリスクとは?

今日は、中小企業の銀行対策として、長期借入金の一括返済がはらむリスクについて考えます。

今日の論点は、以下の2点です。
1 期限の利益という権利を簡単に放棄してはいけない
2 長期を一括返済すると銀行担当者との間に溝が入る

どうぞ、ご一読下さい。

1 期限の利益という権利を簡単に放棄してはいけない

円安の影響や同業他社との競合激化によって利幅が縮小、銀行借入金の返済にフワッとした不安があるという中小企業経営者は少なくないかも知れません。
あるいは、今の銀行担当者とソリが合わず、「あんな奴の顔を見るくらいなら、さっさと一括で返済してしまえ」と考えている中小企業経営者がいるかも知れません。
5年前に借り入れたコロナ資金の元本据置期間がやがて満了し、その返済に耐えられるのか枕を高くして寝られない中小企業経営者もいないとも限りません。
ましてや、短プラ連動の長期であれば、金利の上昇基調が続くことを想定すると、利息の負担が近い将来の収益圧迫要因となることも間違いのないところです。

確かに、いずれの不安や不満のごもっともなところがあり、いっそ、一括で長期を返済してしまえばいいと考える中小企業経営者の気持ちもわからないではありません。

ことな資金に関しては、コロナ資金の元本据置期間が満了して、元本返済が始まるケースであれば、仮に、当初実行額50百万円、元本返済据置期間5年間であれば、返済期間は60回となるので、毎月の元本返済額833千円が、既往借入金の元本返済に上乗せとなります。
既往借入金元本返済額にプラス833千円というのは間違いなく中小企業にとっては、少なくない返済負担増となります。

しかしながら、コロナ資金は固定金利で、金利上昇リスクの対象外となります。
加えて、当座預金等流動性預金の平残(平均残高)が10億円超を維持できている中小企業であればいざ知らず、一括返済による50百万円もの多額のキャッシュが一発で出ていってしまうのは、短期的な資金繰り上でも痛手となることは間違いありません。
ましてや、仮に金利上昇リスクのある一般の長期であったとしても、多額のキャッシュアウトの発生は中小企業にとっては大きなリスクです。

そもそも、仮に、50百万円を60回で返済するということは、60ヶ月に渡って、月額833千円を返済しなければならないということですが、逆に言えば、60回の分割返済で構いませんという返済の条件をつけてもらっていることでもあります。
もっと言えば、通常、毎月返済日が設定されていて、仮に、返済日が毎月25日であれば、24日までは「返さなくても良い」ということです。
返済日までは返さなくても良いということを「期限の利益がある」と表現します。
逆に言えば、延滞や法的措置等の期限の利益喪失事項が発生した際には、一括返済を金融機関から求められます。

まとめると、長期借入金を一括で返済するということは、せっかく金融機関から勝ち取った期限の利益を放棄してしまうことになるのです。

普通に考えれば、債務者中小企業側から期限の利益をわざわざ放棄するのはとてもとてももったいないお話です。
したがって、単に、金利の上昇リスクや将来の返済負担への懸念が先走ってしまって、安易に長期を繰り上げ返済するのは大きなリスクを伴うことになるのです。

【中小企業の銀行対策】長期借入金の一括返済がはらむリスクとは?

2 長期を一括返済すると銀行担当者との間に溝が入る

次に、長期を一括返済する場合、融資を出してきた金融機関の姿勢について考えてみることにします。
仮に、メインバンクが地方銀行、第二地銀、信用金庫等の地域金融機関であった場合で、長期50百万円、期間5年間、保全はプロパーの長期資金が融資されていたとします。
資金使徒は、長期運転資金とすると、当初実行時点から5年間の売掛金、在庫、製造業であればリードタイム等を総合的に勘案して、担当者が稟議書を起こして、支店長等部店長か、本部与信所管部署(融資部や審査部等)が然るべく審査を経て稟議決裁された資金です。
担当者からすれば、「社長、頑張って稟議書きました!」というのが本音のところです。

ところが、中小企業経営者から「悪いけど、今回、一括返済させてもらいますわ」と言い渡されたメインバンク担当者からすれば、「社長、そりゃないですわ。ちょ、まって下さい」というのが本音のところです。
メインバンク担当者は、部店に帰店して上長に報告した途端、上長は、「お前、何しとんねん。支店長にどんな面下げて報告するつもりなんや」と怒り心頭になることは間違いないところです。
一般的に、短期資金より長期資金の方が、部店長(支店長等)の評価が高いため、支店長は鬼怒りです。
「もう、あそこには与信は一切出さんからな。お前ももう顔出すなよ」

平たくいってしまえば、長期の一括返済を強行してしまうと、その取引金融機関との間には大きな大きな溝ができてしまいます。
中小企業の場合、一般個人の住宅ローンとは違い、運転資金にせよ、設備資金にせよ、反復的に資金需要が発生するため、一時的な感情や短期的な視点で銀行取引の道を狭めてしまうことは経営判断上、極めてネガティブに働いてしまうのです。
長い間かけて築いてきた取引金融機関との信頼関係が一気に崩壊してしまいかねないわけで、いくら潤沢な手元流動性を確保している中小企業であっても、そのようなリスクは取るべきではないのです。

このように、中小企業経営者の側からすると、些細なこと感じられることでも、金融機関との関係性が崩壊してしまうこともあり得るのです。
上場企業とは違い、資金調達を主として、金融機関に依存する中小企業からすれば、中小企業経営者は、取引金融機関との信頼関係をより確かにしていくことへの経営努力を惜しんではならないのです。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ
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