【中小企業の事業承継】ジュニアが身につけるべき「帝王学」とは?
1 中小企業の事業承継の現状とは
中小企業の事業承継が様々なところで論じられるようになりました。
わが国の中小企業の数はざっと420万社。
わが国の会社の中で、中小企業が占める割合は99%。
そのほとんどがオーナー企業です。
高度成長期やバブル期に創業した会社の業歴はゆうに30年超です。
わが国の人口ピラミッド以上にオーナー創業者の高齢化はより一層進行しています。
中小のオーナー企業の事業承継はもう待ったなしです。
中小企業は、ヒト、モノ、カネいずれも限りがある一方で、オーナー経営ならではの意思決定の迅速さという中小企業ならではの強みもあります。
オーナー経営で大きな経営資源の一つが「オーナーの力量」です。
失われた30年、コロナ禍となれば、アホ社長では、会社は傾きます。
オーナーが決する会社の方針次第では、会社を活かすことも殺すこともできてしまいます。
特に、オーナーが一から立ち上げた創業者は、決して順風満帆な局面ばかりではなく、数々の修羅場を乗り越えてきた力量とお人柄が備わっています。
「あの社長がおっしゃるのであれば」と取引先もメインバンクも一目置く存在です。
創業者とすると、しかるべくタイミングで血が繋がったジュニアに継がせたいというのが人情です。
一方で、数々の修羅場を乗り越えてきた創業者の心情として、「ジュニアに苦労させたくはない」というもまた人情です。
もしかして、ジュニアがいい大学を出て、大企業のサラリーマンとなっていたら、「このまま今の会社に居れば良い。会社はわしの代で終わりや」と自主廃業を選択したり、M&Aで第三者に株式譲渡するケースも増えています。
北出が念じているのは、自主廃業は取引先も従業員も切ってしまうわけで、「オーナー一族の都合で勝手にやめんなよ」です。
社名を一定期間、残すこと、従業員の雇用を守ることなどを条件として、第三者への株式譲渡も選択肢とすべきです。
これが令和5年の中小オーナー企業の事業承継の風景です。
2 かわいい子には旅をさせよ
事業承継を受けるジュニアにしても、それ相応の覚悟が求められます。
厳しい世の中ですから、ジュニアは事業承継後、数えられないような修羅場に立ち向かうことになります。
ジュニアには、多少、スパルタ教育が必要です。
かわいいかわいい、では、取引先をウィンウィンの関係を発展させ、メインバンクと信頼関係を築き、従業員を守ることはできません。
何も、JCやYEGに入るだけではありません。
リーダーとしての力量を身につけ、社内から慕われ、社外からは、メインバンクの支店長から「あの社長は、わかいけどなかなかのやり手やなあ」、取引先には「この会社なら安心してお取引できる」という安心感を植えつけることが必要があります。
「あの2代目は親の七光りだけやんけ」と思われては元もこもありません。
武者修行のような苦労も経験させなければなりません。
俗な言い方ですが、「かわいい子には旅をさせよ」で、しっかりと帝王学を身につけさせねばなりません。
事業承継後の創業者も「あとはわしゃ知らん」ではなく会長なり相談役に就任し、当初は週3回の出社を週一回、月2回、1ヶ月に一度と徐々にですが、着実に実権をジュニアに移譲していきます。
大所高所から、ジュニアに助言をし、ここぞという時に創業者の胆力を見せつけることも大切です。
このように、事業承継は簡単ではありません。
創業者は、しっかりと計画的にスケジュール感を持って、会社が最も良い状態で事業承継を実行する必要があるのです。