【中小企業の銀行対策】横浜銀行からみえる「一県一行」の罪と罰とは?
1 まさかの神奈川県で・・・
今日、地銀の雄である横浜銀行を傘下にもつコンコルディアFGが、TOBにて第二地銀の神奈川銀行を完全子会社化へとの報道が駆け巡りました。
金融庁や財務省の大きな方針の「一県一行」に沿うものですが、地方ならいざ知らず、人口900万人以上、大阪府より多い人口を抱える神奈川県で、まさかの「一県一行」が実現するとは、北出、夢にも思いませんでした。
神奈川県では、横浜銀行と神奈川銀行以外にも、3メガバンクがひしめき、有力な信用金庫が乱立しているので、地方のような寡占化は懸念されないのかもしれませんが、それにしても事実上の巨大地銀の横浜銀行が弱小神奈川銀行をパクッといったようなものなので、「一気に銀行再編加速か!」的なステレオタイプな論調が活発化しそうです。
サプライズの「神奈川ショック」です。
2 なぜ、今、再編なのか?
このサプライズが、なぜ今なのでしょうか?
一つの答えが、「金利の上昇局面だから」です。
銀行の売上は「貸出利息」なので、金利の上昇局面は「増収基調」です。
一方、金利が上がるといったところで、銀行の売上原価である「預金利息」はそうそう上がるものではないので、売上総利益である利鞘(「貸出利息」ー「預金利息」)は今後増えていくことが想定されます。
ゆくゆくの利鞘アップが見込める今は、金融再編の絶好のチャンスというわけです。
と、ここまでが新聞的なお話ですが、ここからが北出が感じているところです。
金利が上昇局面であれば、金融機関は金利を引き上げやすい(というか、自動的に上がる)のは当然として、物価と同じで、「どうせ上がるんだからしょうがない」という雰囲気が蔓延すると、金融機関は正常先ではない要管理債権やその他要注意先でも、「も、ちょっと上げとこか」となりがちです。
言い方を変えると、金融機関の本音としては、「リスクに応じた金利を頂きやすくなる。ありがたや!」ということになって、もしかすると、市場の金利の上げ幅以上に、特に融資先中小企業に「も、ちょっと金利、上げさせて頂きますね」と言いやすくなる、というわけです。
また当たり前のことですが、金融再編が起こる、特に一県一行の状態になると懸念されるのが「独占、寡占化の進行」です。
一県一行が進んでしまうと、域内での金融機関相互の競争がなくなるので、サービス水準が向上しにくくなることが懸念されます。
そもそも、一県一行主義とは戦前、戦時下に移行していく中で、経済を国家が統制するための政策なので、令和の世の中で、「そんなん、ほんまにありなんか!」と単純に北出は心配になってしまいます。
3 中小企業経営者は、「一県一行」にどうやって立ち向かうべきか
「一県一行」が進行すると、金融機関相互の競争が少なくなり、金利が高止まってしまう懸念が強まる中、金融機関から融資を受けている中小企業経営者は、どうやって立ち向かうべきでしょうか?
中小企業経営者の防衛策として実践していくべきことは、一言で言えば「しっかり情報武装すること」です。
「社長、すんません。なんとか、上げさせてもらわないと支店に帰れへんのですわ』的な泣き脅しは通じない経営者だと、金融機関担当者に思わせておくことが重要です。
そのために必要なことが「金利に強くなること」です。
メインバンクが設定している自行短プラが何%か、金利は0.125%刻みであること、そもそも現在の金利が何%で短プラや市場金利のスプレッドがどれだけか、等々、自社が適用されている金利を把握しておくことは必須です。
また、市場金利は日々動いているので、日経電子版等を適宜閲覧して、市場金利の相場感を磨いておくことも肝要です。
金利の引き下げ局面が続いてもう30年以上。
中小企業経営者だけではなく、金融機関営業店のほとんどのメンツが金利引き上げ局面を知りません。
実は、金利の引き上げは、中小企業経営者も、金融機関側も手探りの状態が続くのです。