【中小企業の銀行対策】試算表、決算書から異常値を早期発見する必要性とは?
1 試算表や決算書は、過去のものと徹底的に比較する
経理周りがしっかりしている中小企業では、概ね前月の試算表が当月20日前後位に出来上がってきます。
北出は、お客様の会社の社長や経営層とで試算表や資金繰り表を手に、お客様の会社のメインバンク以下取引金融機関各行にモニタリングにお邪魔していますが、20日から月末前までが北出には繁忙期となります。
多忙な社長、経営層は、ついつい、試算表の損益を重視しがちで、前月実績に対して、売上の増減、売上総利益率の変動、営業損益、営業外・特別損益に注目します。
それはそれでとても重要なのですが、前月実績比較だけではなく、前年同月実績との比較も重要です。
飲食業やサービス業など、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた会社では、「1年前はホンマに大変でしたねえ」と感慨に浸ることもしばしばです。
北出にとって、共に修羅場をくぐった社長や経営層とは、もはや戦友のようです。
早く、コロナ前に戻り、コロナ前を凌ぐ業績を叩き出せるよう、北出も全力で知恵を絞る毎日です。
2 貸借対照表から「異常値」を探せ
試算表にせよ、決算書にせよ、損益重視で、貸借対照表への注目度は必ずしも高くはありません。
しかし、貸借対照表の現預金以外の借方の増加は、キャッシュが流出するので、見逃すわけにはいきません。
損益には現れないフリーキャッシュフローの毀損要因です。
「損益上、利益が出ているのに、キャッシュが足らん」という中小企業あるあるのお話ですが、その原因は、まさに、貸借対照表にある可能性が極めて高くなります。
半分損金の保険の場合、損気の「保険料」に加えて、貸借の「保険積立金」が増加します。
お取引先に積む保証金も、貸借の「保証金」が増えてしまいます。
設備投資による固定資産の増加も見逃せません。
通常の資産の増加、負債の減少であれば良いのですが、「なんだ、この勘定科目の変動は?」というのが時として起こりえます。
経理の仕訳ミスの可能性もあるので、経営者は、貸借対照表の「異常値」に常に目を光らせる必要があります。
金融機関の融資係は、損益はもちろんですが、貸借対照表により高い関心を持っています。
その理由は、融資の審査において、「安全性(潰れるリスクが少ないこと)」を重視するためで、与信リスクを軽減したい金融機関としては当然の与信判断だと言えます。
中小企業経営者は、損益に加えて、貸借の異常値に関心を払い、キャッシュの増加を目指す経営を貫く必要があるのです。