【中小企業の銀行対策】コロナ前の成功体験が昔話になってしまった理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、コロナ前の成功体験は昔話になってしまった理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 デフレはもうおしまい
2 伴走型資金の現行制度下の考え方は時代遅れである
どうぞご一読下さい。
1 デフレはもうおしまい
新型コロナウイルスの感染症分類が2類から5類に引き下げられて3ヶ月。
大阪の街中は、マスク姿の方が少数派となり、特にミナミは日本人よりもインバウンドの方が多いくらいの人出となって、新型コロナウイルスがほぼ過去のものになってしまったことを実感させられます。
それに伴って、市中の経済も大きくジャンプアップの様相です。
弊所のお客様サービス業各社の多くが、直近の売上高でコロナ前を上回るばかりか、過去最高の売上を計上しています。
原材料高、人件費の高騰分をB to Bだけではなく、B to Cの業種でも価格転嫁が進んでいます。
もはや、コロナの影響だけではなく、デフレも「さよーならー」の勢いです。
日銀前総裁が退任して間もなく、デフレ脱却が進んだことは少し皮肉ですが、市中の商いのフェーズがデフレからインフレに転換していることは間違いなさそうです。
それを裏付けるのが、コロナリスケ中のお客様で、昨年から今年の始めの頃に、収益力改善計画に移行した場合です。
昨年から今年の始めは、まだまだ新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く残っていた頃で、今にして思えば、まだまだ需要不足の段階でした。
その当時策定した収益力改善計画を改めて見直してみると、収益力改善計画の主眼が、需要過多の中、いかにして売上を回復させるか(トップラインをコロナ前に戻していくか)に置かれていました。
しかしながら、今、現在では、売上はむしろしっかりと立っていて、原材料高、人件費高騰によるあらゆるコストアップへの対処の方が、喫緊の経営課題に転換しています。
現在、そして近い将来、中小企業経営者が対処すべき経営課題は、長らく忘れていたインフレへの耐性強化です。
中小企業経営者は改めて認識を変える必要がありそうです。
2 伴走型資金の現行制度下の考え方は時代遅れである
ここで、気になるのが、現在、制度化されている信用保証協会保証付の伴走型資金の要件です。
セーフティネット4号も5号も、売上減を要件の柱としていて、4号で20%減、5号で5%減となっていますが、完成工事ベースの建設業であれば、月次売上高が大きく変動するので、どこかの月でその要件を満たすことができます。
しかしながら製造業では季節変動が少なく、サービス業では季節変動要因がコロナ前と概ね変わらないので、セーフティネットの売上減の要件を満たすことができません。
そもそも収益圧迫要因がコロナ禍では売上減であった一方で、今現在では、原材料高と外注費、人件費高騰なので、伴走型資金の現行制度下の考え方は、もはや時代遅れと言わざるを得ません。
売上減で大変だ、というのはデフレ下の発想であって、インフレ下では、売上は増えるけれど、それ以上にコストが上昇するわけなので、伴走型資金の要件の見直しが早急に必要だというのが北出の現場感覚です。
なんといっても、デフレは30年もの長きに渡って継続してきたわけなので、デフレマインドからインフレマインドへの転換は容易ではありません。
当然のことながら、デフレの下でのコロナ前の成功体験は使い物になりません。
中小企業経営者は、コロナ前の成功体験をかなぐり捨てて、更に加速しそうなインフレに対応すべく、収益体質をインフレ耐性に転換することが喫緊の経営課題なのです。