【中古自動車販売業の銀行対策】業界大手の騒動が個々の中小中古車販売業者に与える影響とは?
今日は、先月からマスコミを散々賑わせている中古車販売大手の騒動が、個々の中小中古車販売業者に与える影響について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 金融機関が業界を十把一絡げで与信判断を行うリスクがある
2 中古車販売業界にはこんな時だからこそ金融機関へのコミュニケーションが必要だ
中古車販売業経営者の皆様、どうぞご一読下さい。
1 業界を十把一絡げで与信判断が行われるリスクがある
中古車販売大手の騒動が起きてから早1ヶ月。
件の中古車販売大手について、主要行が短期資金の借換を見送り(手貸だったのか当貸だったのか、はたまたコベナンツがひかれたコメラインの条項違反だったのかはわかりませんが)、90億も回収したのは北出個人的には大きな驚きでした。
「その会社」は非上場のため計数面の多くが定かではありませんし、北出個人がどうのこうのコメントする立場にはありません。
しかしながら、他の中古車販売業者各社に様々な影響が及んでしまうのではないかと、北出個人は懸念を拭えません。
こう言っては角が立つかもしれませんが、製造業や、中古車以外の卸や小売業から比較すると、もともと、中古車販売業界の金融機関からの目線はあまりポジティブなものではありません。
金融機関の外回りの担当者が、中古車販売業者さんから資金の要請を受け、営業店に帰ってきて店内で協議する際には、部店長(支店長や法人営業部長、支社長等)や次席(副支店長や次長)から担当者に向かって、「おい、お前、ホンマに大丈夫なんか!」といった類の少々ネガティブな反応になってしまいがちです。
平時でもそういう傾向の中、業界大手の騒動が勃発した今となっては、金融機関の営業店はとにかく、本部審査部門では業界を十把一絡げで厳しい与信判断が行われてしまう可能性がなきにしもあらずです。
真面目に日常業務を回している大多数の中小中古車販売業者からすれば、オークションをオンライン化するなどして取引を透明化する等、業界の健全化に注力してきましたが、今回の騒動はとんだ災難で、火の粉が降りかかってきたようなものです。
2 中古車販売業界にはこんな時だからこそ金融機関へのコミュニケーションが必要だ
世間でこれだけの騒動になったからには、中古車販売業界に携わる経営者は皆、危機感を持っておられるはずです。
オークションを通じた取引の決済は概ね1週間程度のサイトなので、仮に相場が下がって売価が下落しても、仕入値も同じように下がることが予想されるため、粗利益率に大きな変化は見込まれないことが予想され、ポジティブな要素だと言えます。
他方、収益と資金繰りの面でのネガティブファクターが、相場の下落によって保有している在庫の車両に含み損が発生してしまうことです。
特に、コロナ禍で自動車メーカーの稼働率が低下して新車が市中に出回らなくなったことで、仕入を高値買いしたケースがあるかもしれません。
ロシアへの経済制裁によるロシア向け中古車の禁輸が、中古車相場を押し下げる材料にもなりかねません。
このような状況だからこそ、債権者で資金の出し手であるメイン行他、金融機関に対して、そのような懸念を払拭するため、平時以上に密にコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。
「業界は荒れているかもしれないけれど、当社はコンプライアンスを尽くしているのに加えて、御行には今月以降、月次モニタリングとして業況報告をさせて頂きます」とメイン行に働きかけると、メイン行はさぞかし安心してくれるはずです。
業界がネガティブな今だからこそ、取引金融機関に経営状況を透明化することが求められます。
もちろん、取引金融機関に経営状況をよりわかりやすく開示すれば、取引金融機関が取組スタンスを維持してくれる絶対保証はありません。
しかしながら、取引金融機関に対して、資金の要請の時だけ接触するのでは、金融機関との信頼関係を築くことは難しくなります。
中古車販売業界の経営者は、業界の危機をピンチをチャンスに変えるべく、取引金融機関との距離を縮める絶好のチャンスでもあるのです。