【中小企業の銀行対策】バーター取引が多過ぎる金融機関をメインバンクにしてはいけない理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、バーター取引が多過ぎる金融機関をメインバンクにしてはいけない理由について考えます。

今日の論点は以下の2点。

1 お互い商売だから一定のお付き合いはしておく
2 過度なバーター取引はコンプライアンス上問題である

どうぞご一読下さい。

 

1 お互い商売だから一定のお付き合いはしておく

弊所の理念は「中小企業と金融機関との橋渡し役」です。
金融機関が上、だとか、中小企業の方が下だとか、昔じゃあるまいし、双方は本来、ビジネス上、対等であるべきだと北出は考えています。
中小企業も金融機関も、お互いにビジネスなのだから、こちらが無理を言ってお願いする時もあれば、相手からのオファもある時はあります。

メインバンクの外回り(渉外係や得意先課等)の担当者は、皆、色々な数字を持っているので、期末や半期末が迫ってくると、担当者も「心苦しい」と思いながら、「実は社長、お願いがありまして・・・」と、系列シンクタンクの会員とか、1年だけのゴールドカードとか、社長個人のNISAの口座開設だとか、大した経費や負担でもありません。

そこは「大人の世界」なのだから、お互い、商売なのだから、許容範囲のお付き合いはやっておくべきです。

「今回は無理を聞くので、次回、こちらが困ったら頼むで」
金融機関の担当者は所詮サラリーマンなので、彼ら、彼女らを、いくら中小企業だからといっても、大の大人のましてや経営者が金融機関担当者を無下にするのは大人気ないことです。

お互い、商売なのだから、中小企業経営者は、金融機関との一定のお付き合いをしておくべきです。

2 過度なバーター取引はコンプライアンス上問題である

中小企業にとって、金融機関とのお付き合い上、幸いなことは、金融庁、財務省の地方財務局が、金融機関に対して、コンプライアンスを徹底するよう、強く行政指導を重ねてきたことです。

悲しいことですが、かつては、金融機関は、力関係上、融資を受けている中小企業に対して、強い立場で接していました。
よくいう「優越的地位の濫用」です。
「優越的地位の濫用」の象徴的な取引が「歩積み両建て」です。
今時、ブヅミなんて、死語になっているし、20代の金融機関役職員は「なんですか、それって?」と知らない用語かもしれません。
「歩積み両建て」の例が、中小企業が金融機関に対して、「30百万円融資してほしい」と資金の要請をした際、金融機関が「ならば40百万円融資しましょう。期間は5年間。せやけど、10百万円は定期預金にして下さいよ、社長」というケースです。
特に、保全のない、あるいは不足する場合、この歩積み両建てが行われていました。

長期資金40百万円、期間60回、毎月元本返済額667 千円のケースでは、融資実行時の保全率(担保等でカバーされる率)は25.0%にしか過ぎません。
わかりやすく言えば、融資実行直後にその会社が破綻してしまった場合、預金で保全できているのは10百万円、裸の信用部分30百万円が貸倒となります。
ところが、融資実行後しばらくは、融資先の会社は手元流動性が上がる(当座や普通預金の残高が増える)ので、倒産リスクは低水準となります。
その後は、返済が進む一方、定期預金の10百万円を事実上拘束(担保にとっているわけではないが解約を金融機関は許さない)することで、保全率は毎月徐々に上昇していきます。
保全率は、融資実行後30ヶ月(2年半)後には、50%を超え、45ヶ月(3年9ヶ月)後には100%に達します。
45ヶ月後以降はフル保全(融資先が倒産しても金融機関には損失が出ない)となるので、金融機関としては左うちわです。

しかしながら、本来必要な資金よりも10百万円が「借り過ぎ」の状態となるため、歩積み両建てが過剰債務の温床となることで、まともな金融機関ではそのような融資は行われません。

とはいえ、北出が見る限り、今でも、歩積み両建てのように見える取引が見受けられることは皆無ではなく、最近でも、融資実行直後に少なくない口数の出資を要請されたりするケースも目撃しています。

融資のバーターに出資を募るなどと言うことは、歩積みよりもひどく、あまりにも乱暴すぎる「蛮行」です。

繰り返しますが、ほとんどの金融機関では、コンプライアンスが徹底されていて、あからさまなバーター取引、優越的地位の濫用は厳に慎まれています。
もしも万が一、中小企業経営者が、過度なバーター取引を強要するような金融機関に遭遇したら、即刻、取引縮小、撤退を視野に入れて行動する必要があるのです。

 

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