【中小企業経営者の心得】中小企業にとっての理想的な賞与のあり方とは?

今日は、中小企業経営者の心得として、中小企業にとっての理想的な賞与のあり方について考えてみます。

今日の論点は以下の2点。

1 賞与の基本的な考え方は「利益処分」である
2 賞与かベースアップか

どうぞ、ご一読下さい。


1 賞与の基本的な考え方は「利益処分」である

お客様の中小企業経営者から、毎年6月や11月になると北出に相談されるのが「賞与てどのくらい出すべきやと思う?」です。
真面目な中小企業経営者にとっては、社員の日々の頑張りに少しでも報いてあげようとして、賞与を出してあげたいと言うのが本音です。

大手や公務員には既に賞与は支給済みですが、少なからぬ中小企業の賞与支給日はこれから年末にかけて集中するのかもしれません。

賞与の基本的な考え方は、あくまで「利益処分」です。
社員が頑張った結果、業績予想を上回るような増収や増益となったことで、社員を慰労するという意味合いが賞与です。

なので、賞与は社員の日々の頑張りに対する報いの一つの形ですが、何がなんでも賞与を出すというわけにはいきません。
賞与を出したから資金ショートするようなことがあっては断じてなりませんし、そこまでいかないにせよ、賞与が赤字に原因になってもいけません。

確かに、人手不足は深刻です。
特に、中小製造業は、求人広告を出しても出しても、電話一本、鳴りません。
既存の従業員を引き留め、さらに、優秀な人材を確保していくためにも、賞与は可能な限り支給すべきだと北出は考えています。
メインバンクとしても、優秀な人材確保のための賞与と言われれば、「なるほど、そりゃそうですわな」と異を唱えるわけにはいきません。
返済も約定通りで、賞与を支給しても尚、年間返済額を上回るキャッシュフローが出ていれば、メインバンクは文句のつけようがありません。

それらを踏まえて、「賞与はどのくらいか?」という相談に対して、北出は、「まず、直近の試算表を見て考えましょう」と受けておいて、期末までの決算の着地をおよそ見極め、元本返済の約定分を加味した上で、期末時点でしっかりと利益を残せる程度の賞与で「このくらいが妥当ではありませんか」とお答えするようにしています。

大企業のように、基本給の2.5ヶ月分とか3ヶ月分というわけにはいかないかもしれませんが、社員個々の貢献度によって、賞与の支給水準にメリハリをつけることも忘れてはなりません。
繰り返しになりますが、あくまでも賞与は利益処分の範疇で、利益が出ていて、賞与を支給しても利益を相応に確保できることが賞与支給の大前提です。
賞与を支給することで赤字に転落する懸念がある場合には、北出は躊躇なく、「社長、賞与の支給は見送るべきです」と進言することにしています。

2 賞与かベースアップか

賞与に加えて、中小企業経営者の頭を悩ますのが賃上げです。
給与テーブルのある会社であれば、ベースアップと定期昇給をどうするかも大きな課題です。

新型コロナウイルス感染症拡大以降、円安、原材料高、燃料高に水道光熱費アップなどなど、新型コロナウイルス感染症が概ね収束を迎えた中にあっても、中小企業を巡る外部要因は厳しいものがあります。

もちろん、優秀な人材確保のため、賞与をしっかりと出して、ベースアップもできればそれは万々歳なのですが、そうそう順調な中小企業ばかりではありません。

なので、賞与とベースアップとどちらかと言われれば、北出は、一時金としての賞与を優先すべきだと考えています。
その理由は、月次の給与手当を一旦引き上げた後の賃下げは、労働者にとっての不利益変更に当たるため、賃下げのハードルは高くなりますし、文字通りの固定費となってしまいます。
新型コロナウイルスのような想定外のリスクが今後顕在化しない保証は何もありません。

労組があって経営側とガチの労使交渉が行われるような大企業ならいざ知らず、ヒト、モノ、カネ(+情報)に限りある中小企業が、円満な労使関係を維持発展させ、収益を確保し、メインバンクとの関係を良好に維持しつつ、成長軌道を描き続けることは、考えてみるとそれはそれは容易なことではありません。

中小企業経営者は、年末の賞与シーズンである今だからこそ、会社と社員とのあるべき関係性を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA