【中小企業経営者の心得】仕入と在庫管理を現場任せにしてはいけない理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、仕入と在庫管理を現場任せにしてはいけない理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 仕入適正化と在庫管理徹底がキャッシュフローを改善させる
2 仕入と在庫管理を現場任せにしてはいけない
どうぞご一読下さい。
1 仕入適正化と在庫管理徹底がキャッシュフローを改善させる
ようやく落ち着きを取り戻しつつある外国為替市場でのドル高円安ですが、今年一気に進んだ円安による原材料高が、様々な業種の中小企業の収益圧迫要因になっています。
製造業の原材料然り、建設業の建設資材然り、飲食店の業務用食材然り、原材料高は、経営者の頭の痛いところです。
こう言う時だからこそ、仕入を適正化し、在庫管理の徹底による過剰在庫の排除が、中小企業の喫緊の課題です。
ところが、今更ながらですが、仕入を適正化し、在庫管理を徹底しなければならないのはなぜでしょう?
確かに、仕入が多過ぎて、製造業や建設業の場合、原材料のままや仕掛品で倉庫に眠っていたり、決算時点で出荷できなかった製品がパレットに積まれていると、期末棚卸高が多く計上されるため、製造原価や売上原価は大きくなくなり(期末棚卸高が多額計上されると製造原価、売上原価が圧縮されるため)、損益計算書上の売上総利益率を押し下げることはありません。
つまり、仕入が多くなっても期末棚卸高が同じように多額計上されれば、売上総利益の額は行って来いとなります。
損益計算書だけを注目すると、仕入が多くても期末在庫が多ければ、利益が出てしまいます。
ところが、問題はキャッシュフロー、資金繰りです。
仕入と期末在庫が両建てで増えてしまうと、両方の要因で、営業キャッシュフローを減少させてしまいます(仕入が大きくなると買掛金の支払いが大きくなり、期末在庫が増えると資産が増えるため、いずれも現預金の減少要因となる)。
これでは、損益計算書上では利益が出ているにもかかわらず、「おカネが足らん」という現象が現実化します。
損益計算書上の売上総利益の金額が同一でも、仕入高、期末在庫を両方を圧縮できれば、キャッシュを生み出すことができるのです。
これが、仕入適正化と在庫管理の徹底がキャッシュフローを改善させる理由です。
2 仕入と在庫管理を現場任せにしてはいけない
損益計算書上でいくら利益が出ていても、キャッシュフローの余力が小さければ、一番困るのは、中小企業経営者です。
なので、中小企業経営者は、社内会議で仕入と在庫管理について数値目標を設定して、「必要以上の在庫は持つな。仕入を絞れ」と声高に指示を出しますが、ところが、北出のお客様の中小企業に於いてもそうですが、なかなか仕入適正化と在庫管理の徹底が社内の隅々にまで浸透しません。
経営者ではなく、現場は、仕入と在庫を絞ることに躊躇するのはなぜでしょうか?
この答えは、比較的簡単です。
現場サイドとしては、在庫が足りなくなって、作業が止まってしまったり、小売業であれば、商品棚に欠品が生じてしまうことにビビってしまうからです。
なので、仕入と在庫管理を現場任せにしてしまうと、どうしても仕入が多くなってしまって、在庫が滞留してしまうのです。
その現場の感覚は至極当たり前のことで、そこが資本家と労働者側との仕事に対する決定的な考え方の違いです。
経営者サイドは、現場の感覚は「そういうものだ」と再認識して、中小企業であれば、経営者自身が仕入と在庫の状況に目を光らせて、適正な仕入と在庫管理の徹底を図っていくことが肝要です。
今一度、中小企業経営者は、「在庫はおカネである」ことを再認識して、仕入と在庫の適正化を実現して、キャッシュを増やしていくための弛まぬ経営努力を怠ってはいけないのです。