【中小企業の銀行対策】金融機関の業態別によって金利差が生じる理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関の業態別によって金利差が生じる理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 金融機関の業態別の金利差
2 単純にメガバンクとの取引が望ましいとは限らない
どうぞ、ご一読下さい。
1 金融機関の業態別の金利差
金融機関には、3メガバンクや信託銀行等の大手銀行、地方銀行、第二地方銀行並びに信用金庫といった具合に、大雑把に言ってしまうと、金融機関の業態が大別されます。
よく、「どの銀行と取引すれば良いの?」と聞かれるのです、この質問は非常に厄介で、一概には答えられないというのが北出の本音です。
他方、日本銀行金融機構局が、毎月月末近くに、金融機関の業態別に前月分の「貸出約定平均金利の推移」を発表しています。
それによれば、直近の2023年11月実績で、全ての借入金を対象とし、いずれも年率で、都市銀行(ここでいう都市銀行は、3メガバンクに加えてりそな銀行と埼玉りそな銀行)0.694%、地方銀行0.798%、第二地方銀行(旧相互銀行)0.937%並びに信用金庫1.418%となっています。
中小企業経営者の皆さんは、この利率について、どのような感想をお持ちでしょうか?
「まあ、大体、うちと同じくらいやな」と思われる経営者であれば、会社はかなりの優良企業です。
他方、「えらいやっすいなあ!」とショックを受けた経営者もなきにしもあらずでしょうが、そんなにビビる必要はありません。
なぜならば、大企業ほど優良先が多い傾向があり、大企業ほど資金需要が旺盛で、金融機関からの借入金が増えるため、約定金利の平均値をとると、どうしても低く出てしまうからです。
他方、金融機関の業態別では、少なからぬ差が見て取れます。
都市銀行は低く、地方銀行、第二地方銀行の順に高くなり、信用金庫は、信用金庫の約定金利は、都市銀行の2倍以上です。
なぜ、このような差が出てしまうのでしょうか?
その一つ目の理由としては、先ほども申し上げましたが、都市銀行のような大規模金融機関ほど、優良先が多いため、平均した約定金利は低くなります。
他方、地銀、第二地銀そして信用金庫となるほど、中小企業や小規模事業者への貸出比率が高くなるため、平均約定金利はどうしても高めになってしまいます。
二つ目の理由としては、金融機関の資金調達の構造に差があるためです。
金融機関の最大の資金調達源が一般預金者から集める預金ですが、大規模金融機関の場合、大手企業との預金取引は、当座預金や普通預金といった流動性預金のウェイトが高いので、資金調達コストである預金者に払う預金利息が相対的に少額です。
他方、信用金庫のような地域金融機関であればあるほど、個人取引がウェイトが高いため、定期預金等の定期性預金での調達が多くなり、流動性預金よりもより多くの預金利息を支払う必要があります。
このため、大規模金融機関ほど資金調達コストが低く、運用の要である融資の利率もより低く設定することができるのです。
さらに、個別の事情として見逃せないのが、金融機関の経営環境に地域差が存在することです。
トヨタグループを中心とした堅実経営の製造業の多い名古屋地区では、「名古屋金利」と称されるように、金融機関相互の融資利息のディスカウント競争が激しい地域がありますし、西日本中の地方銀行が営業店を構え、熾烈な融資競争が繰り広げられている大阪では、中小企業であっても借入の利率にシビアです。
他方、地方に行けば行くほど金融機関の競争が少なく、また、一都道府県に一地方銀行という原則で、金融機関の寡占化が進んでいるような地域では、優良先であっても相対的に金利が高めに設定される傾向があります。
中小企業経営者は、地元の金融機関の競争度合いなど、地域の金融情勢にも目を配る必要があります。
2 単純にメガバンクとの取引が望ましいとは限らない
1で見た通り、日本銀行が「貸出約定平均金利の推移」を毎月発表していて、その平均約定金利を見た中小企業経営者の中には、「うちの金利は高い。メインバンクがボリまくってる。けしからん、早速、メガバンクで肩代わりしてもらうよう、交渉してくる」と息巻く方がいらっしゃるかもしれません。
ところが、現在のメインバンクとのご縁をバッサリ切って、メガバンクに乗り換えることはそう簡単なことではありません。
特に、メガバンクの中には、市中の支店から法人取引を法人営業部やエリア支店、支社等に移管してしまっているので、法人取引部隊に直接アクセスすることが容易でなくなってきています。
また、もちろん、BS、財務次第ではありますが、年商2億円程度でメガバンクと取引しようとしても、中小企業経営者が思うように取引深耕とはなりません。
融資だけではなく、ビジネスマッチングに関しても、メガバンク等が全国展開をしている一方、地域密着の中小企業や小規模事業者の場合、地元のビジネスマッチングのネタが十分見込めません。
大阪や東京で新たな営業展開を検討しているのであればまだしも、地域密着の営業スタイルであれば、むしろ、地銀、第二地銀や信金の方が豊富な情報源となる可能性が高まります。
また、目先の金利だけでメインバンクを変えていては、いつまで経っても、メインバンクとの真の信頼関係は結べません。
「金利で動く社長」と思われては元も子もありません。
目先の金利に捉われるのではなく、毎期収益計画とその収益を実現するためのアクションプランを明確化して、計画を着実に達成し、地道に内部留保を蓄積して、財務体質を強化していれば、メインバンクの格付は引き上げられ、自然と適用金利も引き下げられます。
中小企業経営者は、借入金に対する支払利息をコストとして捉えながら、メインバンクとの円満な取引関係を実現し、メインバンクとの信頼関係を長い目でより深くしていく必要があるのです。