【中小企業の銀行対策】疑問があればその場で訊いて解決することの重要さとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、疑問があればその場で訊いて疑問を解決する重要さについて考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 聞くのは一回の恥で済む
2 疑問を解消することが禍根を払拭する
どうぞ、ご一読下さい。
1 聞くのは一回の恥で済む
どこの会社でも、どの業界でも、会社の社風とか慣習とか、商慣習のようなものが大なり小なり存在します。
新聞紙上で会社の不祥事が明らかになるケースで、会社の常識が世間の非常識であることもしばしばです。
社風とか、愛社精神とか、ある面で、大切だとは思いますが、とにかく、会社、業界によって、暗黙の掟があることは間違いなさそうです。
そんな中で、特に、北出が銀行対策コンサルタントの仕事をしていてつくづく感じるのが、金融機関の常識こそ、世間の非常識であることです。
預金にしても融資にしても、ついて回るのが、どこまでいっても債権債務のことですし、連帯保証や担保物件を含めて、他人様のおカネに直結する仕事なので、銀行員には、それ相応の人材も必要ですし、継続的なスキルアップも求められます。
そういう場で働く銀行員、金融機関役職員は、別にひけらかしているのではないのですが、ついつい、専門用語を多用してしまいます。
ショーガシだの、ショウテだの、トウガシなど、普通のサラリーマンからすれば、「なんのこっちゃ???」という言葉が日常的に飛び交っているのが金融機関です。
専門用語が飛び交っている銀行員に対して、自社の資金調達という極めてデリケートな経営課題解決のため金融機関役職員と対峙しなければならない中小企業経営者は、普通に考えれば大変で、対等に立ち向かうことが容易ではありません。
北出の場合、お客様の中小企業さんとお仕事をさせて頂くことになると、早い段階で社長に同行して、その会社のメインバンク以下取引金融機関にうかがうことになりますが、途中から銀行員と北出が話をし始めて、金融機関での打ち合わせを終えて社長とクルマに戻ると、「さっきの会話の半分以上は意味不明でしたわ」なんてことがしばしばです。
北出の場合、期せずして、金融機関担当者と社長との通訳の役割を担うことになるのですが、金融機関側の話だけではなく、お客様の中小企業の側の業界特性や商慣習などを金融機関側に伝えることも同時進行で行います。
中小企業側の業界特性や商慣習によって、その会社にとっての資金需要が発生する仕組みも明らかにすることができます。
他方、金融機関の側も中小企業の側も、どこか他人行儀で、当たり障りなく対応しようとすると、お互いわからないことがいつまで経っても解明されず、果ては相互不信に至ってしまう恐れがあります。
双方に余計なプライドがあったりすれば、よくわからないこともスルーしてしまったり、最悪の場合、片や「この社長、わかってんのか? アホちゃうか」で、片や「この銀行員カッコつけやがって。ムカつくやっちゃ」と感情的にこじれてしまうことさえ起こり得ます。
このようなことが起こらないためにも、金融機関の側も中小企業の側も、わからないところがあれば、臆することなく、「ちょっと、それってどういう意味か教えてもらえないでしょうか?」と一言、訊いてみるべきです。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とはまさにいい言葉です。
相手から聞き出すには、相手の説明に対して、自分の言葉で言い換えて「これで合ってますか?」と念押しすると、相手も自身の説明が通じたと感じることで、安心することができます。
金融機関の側も中小企業の側も、下らない見栄やプライドなどはかなぐり捨てて、わからないことはさっさと訊いてしまうのが最も効果的です。
2 疑問を解消することが禍根を払拭する
中小企業側が、金融機関に対して、疑問を解消しないまま突き進む最も危ないケースが「融資の実行時」です。
金融機関営業店(支店等)の担当者が「稟議の承認が下りましたので、今週中に実行させてもらいます。書類がありまして、社判、会社の実印、社長の署名、社長の実印で、次は・・・」と債権書類にハンコを押したり、署名したりで、毎度のことながら、まあまあのセレモニーです。
実際のところ、「融資実行時」に担当者から「ここにハンコを」とお願いされたら、社長であっても(もしかしたら奥様も)書面の内容をろくに確認せずに、ハンコをついて署名をしてしまうのが普通です。
確かに、ハンコをつけば今週中に融資を実行してもらえるとなれば、「細かいことは、ま、ええか」となってしまいがちです。
他方、金融機関と交わす債権書類は、全て、会社や社長個人の実印を押印する大事な大事な「契約書」です。
取引先と「取引約定書」等の契約書を交わす時、中小企業経営者の多くは「うちの会社に不利なこと、書いてないやろな」と契約書に目を通すに違いありません。
「いや、メインバンクとは長い付き合いで、親父の頃からずっとメインバンクやから、信頼してる」という方もいらっしゃるかもしれませんが、本来であれば、一呼吸置いて、「この書類、金銭消費貸借契約証書の条文、ちょっと読ませてもらってもええですか」くらいの注意深さがあってちょうど良いくらいの重たい書面です。
金銭消費貸借契約書や銀行取引約定書等、金融機関で一般に用いられる契約書では、著しく金融機関に有利に作られているわけではありませんが、双方が揉めた時の「合意管轄」が中小企業の本社とは距離のある金融機関本店所在地にある裁判所となっていたりするので、最低でも一度目を通す程度の注意が必要であることは間違いなさそうです。
よくわからないまま、疑問点を訊かないままで、実印を押してしまってから、数年経ってから、「そんなん、聞いてないで」と金融機関と揉めるようなことは断じて避けねばなりません。
中小企業経営者は、金融機関との取引だけではなく、会社経営に関わるあらゆる事で、疑問を疑問のまま放置するのではなく、社長のプライドや見栄はかなぐり捨てて、「それててどういう意味ですか?」と訊いてしまいましょう。
中小企業経営者にとって、分からないことを訊いてしまって、疑問を解消することが禍根を払拭するために効果的な方法なのです。