【中小企業の銀行対策】金利上昇を見据えた収益改善が必要な理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金利上昇を見据えた収益改善が必要な理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 金利上昇は春以降か
2 支払利息の増加は経常損益をモロに痛める
どうぞ、ご一読下さい。
1 金利上昇は春以降か
昨年後半に上昇しかけた長期金利は、一旦、落ち着きを取り戻しているように見えます。
住宅ローンの固定金利も一気に上がっていくのかと懸念されましたが、驚くような利上げは発生していません。
他方、アベノミクスの申し子というべき存在であった日銀黒田総裁が退任し、そもそもの安倍元総理が凶弾に倒れ、自民党安倍派も解散ともなれば、アベノミクスの神通力は弱まる一方です。
東京都内のマンション販売価格の平均値が1億円を超えたという報道からも、ミニバブルの到来も否めません。
いよいよ、金融引き締め間近を感じさせられます。
日本銀行は、春闘の賃上げ動向次第で、マイナス金利の解除に踏み切る可能性が高まっています。
では、中小企業にとって、金利上昇の影響はどのようなものでしょうか?
「春闘なんか大企業に関係することやし、うちの会社には直接影響はないよ」とたかをくくっている中小企業経営者がいるかもしれませんが、残念ながらそういうわけにはいきません。
マイナス金利解除が中小企業にとって、どのような影響があるのか、次のチャプターで掘り下げてみることにします。
2 支払利息の増加は経常損益をモロに痛める
中小企業にとって、利上げの影響はどのようなものか、考えてみます。
信用金庫等ごく一部の金融機関では、長プラ連動の中小企業向け融資では、金利の上昇が発生しているようです(今時、長プラ連動は極めてレアで、メインストリームではありません)。
他方、中小企業の借入金は、金融機関が独自に設定している短プラ(短期プライムレート)に連動したり、優良先の場合は市場金利(TIBOR3ヶ月もの等)にスプレッドを乗せるケースがほとんどです。
幸いにも、現在のところ、メガバンクや各地方銀行の短期プライムレートは底ばい状態のままなので、ほとんどの中小企業では、金融機関からの利上げ要請はなされておらず、試算表ベースでも支払利息の増加も発生していません。
そもそものお話ですが、市中の金利が上昇することによって、中小企業向け融資の適用レートがアップすることで、中小企業でのPL(損益計算書)の営業外費用の「支払利息」が増加するというわけです。
仮に、借入金の年間平残が300百万円の場合で、現状の平均適用レートが年率1.875%であれば、年間の支払利息は5,625千円です。
市中の短期金利が上昇することで、金融機関から現在の平均適用レートを年率0.5%引き上げられる場合には、平均適用レートは年率2,375%に上昇し、年間支払利息7,125千円に達します。
年間の支払利息増加額は実に1,500千円です。
支払利息は営業外費用なので、支払利息の増加は営業損益には影響しませんが、営業損益に営業外損益を通算した経常損益で、支払利息の増加分1,500千円の減益要因となってしまいます。
しかも、金融機関の適用レートの上昇は一過性のものではなく、そのまま継続するだけではなく、市中の金利は以降上昇基調が続くことが想定されるので、支払利息の増加は継続することが予想されます。
支払利息の上昇は、中小企業サイドでは如何ともしがたいものなので、継続的な収益圧迫要因となってしまいます。
更には、ドル円の為替相場が大幅な円高に触れない限り、原材料価格は高止まり、人手不足も相まって、原価高、人件費高が続きます。
中小企業経営者としては、市中の金利が上昇する前に、政府系金融機関の固定金利の制度融資を活用して設備投資に踏み切って、生産性向上と省力化(省人化)を推進することで、来るべき原価高、人件費高に加えて、支払利息の増加に備える必要がありそうです。
特に、製造業においては、生産性向上と省力化(省人化)によって、派遣等の外注費を削減することで、支払利息上昇分を吸収することも検討しなければなりません。
中小企業経営者は、春以降、市中の金利が上昇し、自社の支払利息が増加し、収益圧迫要因となることを念頭に置いて、抜本的な収益改善に取り組む必要があるのです。