【中小企業経営者の心得】勘定科目「福利厚生費」に注目が集まる理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、PLの勘定科目「福利厚生費」に注目が集まる理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 新規採用よりも既存従業員を大切にする
2 福利厚生費はただのコストと捉えてはいけない
どうぞ、ご一読下さい。
1 新規採用よりも既存従業員を大切にする
「人手不足が深刻である」。
アフターコロナの今、毎日のように目にするフレーズになってしまいました。
弊所のお客様の中小企業を見ても、中でも町工場のような製造業や飲食業で、人手不足が深刻化しています。
求人広告を出したり、ハローワークに求人登録をしても、待てど暮らせど、会社の固定電話に「求人の広告を見て電話したんですが」という類のコールはほとんど鳴りません。
求人広告を見ても、表示されている時給単価は上がる一方です。
府県別の最低賃金を若干上回るような時給単価では、問い合わせもありません。
とはいえ、大企業であればさることながら、中小企業の場合、時給単価をジャンジャン上げるわけにはいきません。
既存従業員を上回る時給を提示してしまえば、既存従業員よりも新規採用者の方が、時給単価が逆転してしまうようなことにもなりかねません。
中小企業の場合、時給単価で大手企業と競り合うわけにはいきません。
また製造業の場合、大手メーカーは、「ライン」での作業ですが、中小製造業の場合は、職人的な手作業によるところが多いため、ぽっと出の新規採用者が即戦力には現実的にはなかなかなってくれません。
中小製造業や飲食業の場合は、オンラインで仕事をするというわけにもいきません。
中小製造業や飲食業は現場力がモノをいいます。
必要以上に従業員に干渉するのも考えものですが、若手従業員に対しては、昭和型のお節介な気遣いや大家族的なケアが必要になるかもしれません。
経営層や管理職には骨の折れるお話ではありますが、中小企業の場合、新規採用に注力するよりは、既存の従業員を辞めさせないような経営努力への必要性はこれまでにないように高まっていることは間違いなさそうです。
「うちの会社は、従業員を大切にしています」という姿勢を発信することも重要なのです。
2 福利厚生費はただのコストと捉えてはいけない
他方、中小企業経営者としては、従業員に手厚くしたいという気持ちはある一方、増収増益を達成して、内部留保を手厚くしていきたいというのが偽らざる本音です。
売上を上げ、原価を下げて、販管費を落とす、余計なコストはかけたくないというのが会社経営の基本中の基本です。
特に、製造業でも、建設業でも原価管理を徹底することが至上命題です。
飲食業の場合は、「F(Food、材料仕入)L(Labor)」のコントロールが収益の肝です。
従来から、販管費の中の「福利厚生費」はお世辞にも注目を浴びる勘定科目ではありませんでした。
しかしながら、新規採用者と既存従業員との人件費の整合を取るためにも、労務費や給与手当を上げるのは限界です。
そうなってくると、従業員に広く収益を還元できる福利厚生費が、従業員の満足度を上げるための一つのベンチマークになってくる可能性が高まっています。
「たかが福利厚生費」ですが、「されど福利厚生費」です。
社内の飲み会か、休日のBBQ大会か、社長杯争奪大運動会か、何がいいのか一概には言えませんが、労務費と給与手当を一律にガバッと上げることと比較すると、福利厚生費は、比較的安く上がります。
結果として、社内の融和を図ることができたり、社員の意外な一面を知る絶好の機会になるかもしれません。
人手不足の世の中ですから、福利厚生費の増加くらいは、メインバンクにしっかりと説明すれば、しのご言われることもありません。
会社の方針として、「社員を大切にする」ことをメインバンクに伝えることも決して悪いことではありません。
中小企業経営者は、人材難を克服するため、経費支出を戦略的に行う必要があるのです。