【中小企業経営者の心得】「倒産」と「自主廃業」との決定的な違いとは?

今日は、中小企業経営者の心得として、「倒産」と「自主廃業」との決定的な違いについて考えます。

今日の論点は、以下の2点。
1 「倒産」よりも「自主廃業」の方が圧倒的に多い
2 「自主廃業」するくらいならさっさと売ってしまおう

どうぞ、ご一読下さい。

1 「倒産」よりも「自主廃業」の方が圧倒的に多い

我が国の企業の数としては、大半が中小企業で占められています。
我が国の人口ピラミッドと同様、中小企業の経営者の高齢化も急速に進展しています。
バブル期にサラリーマンから30歳で独立したオーナー経営者は、現在、60代半ばです。
もちろん、オーナー経営者の長男が既に会社を継いでいて、創業者は、会長や相談役に収まっているケースも少なくありませんが、「どうせ、将来は明るくない」とか、「息子は大企業に就職できたし、ワシみたいな苦労をさせたくもない」と、自主廃業を選択する経営者も現実にいらっしゃいます。

民間信用調査会社の帝国データバンクによれば、2022年の全国の倒産件数は、6,799件(前年比14.9%増)に対して、同年の旧廃業・解散の件数は、53,426件(前年比1,300件減)となっています。
2022年は新型コロナウイルス感染症の影響も加味する必要があるのでしょうが、自主廃業の件数は、倒産件数の実に7.9倍にも達していて、「倒産」よりも「自主廃業」の方が圧倒的に多いことが分かります。
民間信用調査会社の倒産件数は、破産法や民事再生法といった法的措置となったものをカウントしているようですが、それにしても両者の件数の差は無視できないほど大きなものです。

倒産の要因は、業界環境の悪化、大口不良債権の発生など様々ですが、自主廃業を経営者が選択する動機は、後継者がいないというのが圧倒的に多いはずです。

そもそも、「倒産」と「自主廃業」とはどのような違いがあるのでしょうか?
考えてみることにします。

自主廃業とは、経営者が主体的に商いをやめてしまうことです。
自主廃業のXデーを決めて、「弊社は、昭和60年創業以来、お取引先様等関係各社からご愛顧を頂いてきましたが、この度、令和7年3月31日を以て、自主廃業することとなりました。みなさま、これまで本当にありがとうございました」といった類の通知を取引先等に事前にお送りして、半年とか1年といった一定期間に徐々に商いを縮小していってフェイドアウトする、というのが自主廃業です。
平たく言えば、自主廃業は、会社の謂わば「自己都合」で商いをやめる、ということです。

他方、倒産とは、経営者が全く不本意なままで商いをやめてしまうことです。
例えば、月末の手形決済資金をメインバンクにお願いしていたのに、ニューマネーが出ずに、不渡り必至の状況となった場合や、租税公課を滞納して、お客様の会社に売掛金の差押通知が送られて、「取引約定書」記載の条項に基づいて、お客様から取引を切られてしまった場合に、倒産に至るというわけです。

自主廃業は、自ら経営者が選択して商いをやめることである一方、倒産は、外部からの圧力に会社が耐えられなくなって経営者が泣く泣く事業継続を断念すること、ということができます。

このように、倒産と自主廃業は、天と地ほどの違いがあるのです。

2 「自主廃業」するくらいならさっさと売ってしまおう

倒産と自主廃業との違いについて見てきましたが、一方、両者の難易度についても考えてみる必要があります。

「事業をやめる」ことと仮定して、話を進めます。
自主廃業するためには、自主廃業する時点で、負債を全部払い切ることが原則です。
仕入先への買掛金や、外注先への未払金、諸経費の未払費用、さらには、事業をやめてしまうと借入金の返済原資が失われてしまうので、金融機関からの借入金、これら全てを資産を換金することで、キレイさっぱり支払ってしまう必要があります。

このため、BS(貸借対照表、簿価ベース)で資産超過であることが自主廃業の大前提です。
通常、事業を清算する際の「清算貸借対照表」は、資産の一部が簿価よりも目減りする(例えば、在庫を資金化する際には、簿価よりも安く買い叩かれたり、土地などの固定資産を売却するには一定の期間が必要となる)ことが想定するため、ボカベースだけではなく、「清算貸借対照表」ベースで資産超過とならない限り、さっさと自主廃業することはできません。
それゆえ、自主廃業するためには、財務体質が相当健全であることが必須となるわけで、自主廃業へのハードルは実はかなり高いと言えるのです。

他方、倒産(破産法による清算)の場合は、代理人の弁護士先生に一任して、裁判所に破産手続きの申し立てを行ってもらう(もちろん、代理人の弁護士先生への相当程度の報酬や裁判所への預納金が必要)ので、言葉は悪いですが、「簡単」です。

話を自主廃業に戻すと、仮に後継者もおらず、無借金で売掛金を集金するなどしたら自主廃業ができるような会社であれば、今流行のM&Aによる売却を検討すべきです。
取引先があって、従業員もいて、リアルの工場や店舗があるのであれば、売ってしまう選択肢も大有りです。
価格はとにかく、株式譲渡で価格がつけば、役員退職慰労金代わりのおカネ(株式譲渡益には課税されることを忘れずに)を手にすることができます。
新たなオーナーがつけば、全てとは言えないにせよ従業員の雇用も守られ、取引先にも迷惑をかけることもありません。
M&Aでの売却先が見つからなければ、最後の最後に自主廃業を選択すれば良い話です。

こう言っちゃあなんですが、経営者の都合で、「自主廃業」するなんてのは、経営者のわがままそのものです。

世間では、「倒産」と「自主廃業」がごっちゃにされている感は否ませんが、オーナー経営者の高齢化が益々進行することが予想される中、オーナー経営者が育ててきた分身のような事業を簡単に閉じるような選択を安易にしてはいけないのです。

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