【中小企業の銀行対策】売掛金の中身が会社の健全性を示すバロメーターである理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、売掛金の中身が会社の健全性を示すバロメーターである理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 勘定科目明細の「売掛金」はチェックされている
2 長期未収債権を撲滅するために必要なこと
どうぞ、ご一読下さい。
1 勘定科目明細の「売掛金」はチェックされている
税務署への決算申告が終了して、取引金融機関に決算書を提出する「決算報告」は、提出する側の中小企業経営者も提出される側の金融機関担当者もいつもよりもピリピリすることがなきにしもあらずです。
金融機関によっては、ネット上からアップロードするようなケースもありますが、依然として、紙ベースの決算書を金融機関に持参して、コピーをしてもらうわけですが、PLで収益を、BSで安全性をサクッと確認するのが普通です。
時間の関係もあって、「お預かりした決算書でわからないことがありましたら、別途おうかがいするかもしれません」と金融機関担当者が配慮してくれたりしますが、当たり前ですが、勘定科目明細は、金融機関担当者によって仔細にチェックされます。
特に、チェックされるのが「売掛金」です。
一年前の売掛金の勘定科目明細と同じ先、同じ金額が記載されていれば、「事実上の不良債権やな」と実態BSで差っ引かれます。
また、「その他何件、金額いくら」という記載も見た目がよくありません。
もちろん、会計事務所の方針もあるのでしょうが、勘定科目明細の売掛金は金融機関で特にチェックされるので、お客様とトラブったり、お客様が事実上倒産してしまったケースがあれば、決算報告の時に、金融機関担当者に先んじて「実は、売掛金のこの部分が実質貰えない不良債権です」と言ってしまった方が心証が良いことは間違いありません。
売掛金は「回収できる」ことが前提です。
「回収できる」はずの売掛金が不良化してしまうと、入るはずの入金がいつまで経っても入金されないので、資金繰りにも悪影響を与えてしまいます。
回収不能の売掛金は、会社にとって百害あって一利ない最悪の存在なのです。
2 長期未収債権を撲滅するために必要なこと
諸悪の根元のような回収不能の売掛金ですが、現実に、北出がお客様の決算書を拝見して、売掛金の勘定科目明細に接してみると、小売業でなければ、回収不能の売掛金が完全に0というわけにはいきません。
それでは、回収不能の売掛金、長期未収債権を撲滅できないのでしょうか?
多くの中小企業では、取引の力関係が相対的に弱い場合が少なくありません。
お客様の方が力関係上強い場合、営業担当者は、ついつい取引条件をしっかりと詰めないまま取引を開始してしまいがちです。
「すみません、御社から弊社へのお支払いですが、支払条件はどうでしょうか?」と切り出した途端、相手方は「オタクの代わりはいくらでもいるんだから、そんな細かいこと言うんだったら、オタクは出入り禁止だね」なんて逆ギレされることがなきにしもあらずです。
しかしながら、売買や契約といった取引は、あくまでも会社対会社のことなので、取引条件を取引開始までに明確化することは当然のことです。
取引条件を曖昧にしようとして、逆ギレするような客先であれば、今後も何かと火種になりかねないので、さっさと取引を解消して、まともな得意先を開拓した方がずっと建設的です。
とは言え、新規開拓といってもおいそれと開拓できるものでもなく、取引条件が曖昧であったり、トラブルが発生してしまうともらえる売掛金ももらえなくなってしまいます。
また、夜逃げのような形で、得意先が行方知れずになってしまうと、無税償却出来なくなってしまうことも起こり得ます。
いずれにしても、回収不能の売掛金、長期未収債権は限りなくゼロを目指さなければならないことは言うまでもなくありません。
中小企業経営者は、売掛金、債権回収を営業担当任せにしてはいけません。
長期未収債権の存在は、取引金融機関からの評価を間違いなく下げてしまいます。
そのようなことにならないよう、営業担当に取引条件を明確にさせると共に、得意先とのトラブルを早期に把握して、先手先手で得意先へ適切に対応する必要があるのです。