【中小企業の銀行対策】経営改善局面の会社の適切な役員報酬の水準とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、経営改善局面の適切な役員報酬の水準について考えます。

今日の論点は以下の2点。

1 過度な役員報酬削減はファミリーの危機を招く
2 アクションプランを着実に実行して役員報酬を確保する

どうぞ、ご一読下さい。

1 過度な役員報酬削減はファミリーの危機を招く

ご時世を反映して、コロナ資金を含めた借入金が過剰となっていたり、財務体質が脆弱であったり、2期連続で赤字決算となっていたり、はたまた、リスケジュールをしていたりと、経営改善局面の中小企業は世の中、数知れません。

経営改善局面の中小企業の場合、経営改善計画を取引金融機関に提出したり、定期的にモニタリング(業況報告)を取引金融機関に行ったりで、経営者としては、一刻も早く、「普通の会社」に戻りたいという気持ちが先行します。

そうなると、経営改善のため、取引金融機関からは暗黙のうちに、トップラインを上げる(入りを増やす)こと、コストをカットすること(出を減らす)ことと、その両方を求められます。
他方で、経営改善局面の中小企業では、例えば、売上拡大のため営業部員を増やすのがままならなかったり、盛大な広告活動ができなかったり、省力化の設備投資に踏み切れなかったりで、トップラインのアップやコストカットなどへの抜本的な具体策が打ちにくいというのも動かし難い現実です。
経営改善局面での中小企業では、実際には、現有の「ヒト、モノ、カネ(+情報)」といった限られた経営資源をフル活用するしかありません。

こうした中で、ついつい槍玉に上がったしまうのが、「役員報酬」です。
確かに、経営改善局面に至った経営責任を明確にするという点で、役員報酬を削減するというのは合理的ではあります。

とはいえ、経営者といっても、一旦、会社を離れれば、一人の人間で、家族もあります。
子供がこれから大学受験ともなれば、教育費だってかかります。

このようなケースで、よく経営者から「役員報酬をもっと下げるべきだろうか」とこっそり相談がありますが、「社長、これ以上、役員報酬を下げれば、生活に支障が出てしまうのでは?」とお尋ねをします。
北出は基本的に、社会通念上、家族構成に合った最低限の役員報酬はしっかり取るべきだと考えています。

経営改善局面の経営者は、平時よりも強いプレッシャーにさらされます。
取引金融機関の担当者や役席の前では、やせ我慢であっても、「弊社は収益改善のための施策を着実に実行していきますので、どうぞご心配なく」と言い切らねばなりません。

そのようなプレッシャーの中での経営者は、自宅に帰って過ごす家族団欒の場は、数少ない心休まる場所です。
ところが、役員報酬を過度に削減してしまうと、奥さんは常にご機嫌斜めです。
「あんた、こんな役員報酬でどうやって生活していくつもりなん」と奥さんから詰められるようでは、経営者にとっての安住の場がなくなってしまいます。
下手をすると、家族の不和にまで発展しかねません。

もちろん、一定の貯蓄はあるのでしょうが、貯蓄を崩していくのも限界があります。
繰り返しますが、家族構成に見合った最低限の役員報酬はとるべきなのです。

2 アクションプランを着実に実行して役員報酬を確保する

役員報酬を過度に削減した場合の弊害をもう一つ触れておきます。
役員報酬を削減したといっても、実際、ファミリーの生活の質を落とすこと自体、そう簡単なことではありません。
ファミリーの生活の質を落とさないまま役員報酬を削減してしまうと、貸付金や立替金、仮払金といった費用性の資産が膨張していくので、BS(貸借対照表)の健全性が失われていきます。
金融機関の審査部門も信用保証協会もファミリー向けの貸付金等費用性の資産増加を断然嫌うので、経営改善の途が遠のいてしまいます。
役員報酬の過度な削減は財務体質にも大きな負の影響をもたらすのです。

このようなことを踏まえて、北出が経営改善計画等を策定する際には、計画策定の段階で、債権者、関係各機関に対して、家族構成からすると明らかに役員報酬が少な過ぎて、費用性資産の増加をもたらすことを理由として事前に役員報酬の増額(適正化)への賛同を得るようにしています。
まともな金融機関であれば、役員報酬の増額(適正化)には賛同して頂けますし、こちらも正論を申し上げているつもりです。
同時に、経営者には、新たな役員報酬の範囲内で家族の生活を維持するようにして、間違っても貸付金等の使途不明金が出ないよう、約束して頂きます。

役員報酬を増額(適正化)することによって、経営者は家族への金銭面での不安を排除することができるので、本業に集中することが出来ます。
さらに言えば、経営改善計画等に明文化したアクションプランを実行に移していくためのモチベーションを高める効果もあります。

逆に言えば、アクションプランを着実に実行することによって、適正な役員報酬を確保することにも繋がります。

中小企業経営者の皆さん、ご自身の役員報酬は適正ですか?
ご家族の実情を踏まえて、ご自身の適正な役員報酬がいくらなのか、一度考えてみる機会を持ってはいかがでしょう。

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