【中小企業の銀行対策】リスケジュールから脱却しリファイナンスを実現する際に立ちはだかる壁とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、リスケジュールから脱却して、リファイナンスを実現する際に立ちはだかる壁について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 まずは償還年数10年程度をクリアする
2 リファイナンスへの道は平坦ではない
どうぞ、ご一読下さい。
1 まずは償還年数10年程度をクリアする
2009年、当時の民主党政権が樹立され、同年12月、政権交代から時間を置かずに成立したのが「中小企業金融円滑化法(2013年3月末にて期限切れ)」です。
中小企業金融円滑化法自体は期限切れとなりましたが、以降も、債務者(中小企業等)から金融機関に返済条件緩和の要請があれば金融機関は柔軟に対応することを行政庁が行政指導を行なってきたことから、新型コロナウイルス感染症拡大の相まって、少なからぬ中小企業がリスケジュールの状態にあることは想像に難くありません。
他方、リスケジュール状態が続いていれば、資金調達へのハードルは高く、次なるステージを目指して成長軌道を描いていくことは容易ではありません。
そもそも、金融機関からの借入金は、補助金や助成金ではないので、「借りたカネは返さねばならない」のが当然のことです。
収益を改善し、返済原資を創出して、返済期間10年間でリファイナンスを実現し、債務者区分を正常先に回帰させていくことがリスケジュール中の中小企業経営者の喫緊の課題です。
とはいえ、弊所のお客様の中小企業でも、リスケジュールに踏み切った後、収益を改善し、返済原資を相当程度捻出できるようになってきた会社も確実に増えてきています。
リスケジュールからリファイナンスを実現するための第一ステップが、既往の借入金を10年間で返済できるようになること(債務償還年数10年程度)です。
例えば、3億円の金融機関借入金がある場合、返済期間10年間(返済回数120回)なら月額返済額は2.5百万円、年間返済額は30百万円です。
過年度分の消費税や社会保険の滞納があり、滞納分を通常発生分に加えて納付しているケースでは、滞納分を納付し切った段階で、毎月の滞納分の納付分を金融機関返済に丸々充当することによって、償還年数が一気に10年程度にまで短縮することができることもあります。
もちろん。一旦、リスケジュールしてしまった後に、収益改善を図り債務償還年数を10年程度にまでもっていくのは、経営者にとっては並大抵の経営努力ではありません。
しかしながら、「必ず、普通の会社に戻ってやる」という強い意志を持った経営者だけが、異次元の収益改善を実現していることを北出は実感しているのです。
2 リファイナンスへの道は平坦ではない
とはいえ、10年間で返済できるような返済原資を捻出できるようになったからといって、それでリファイナンスが無条件で実現できるわけではありません。
ここからが意外と大変で、リファイナンスへ意外な壁が立ちはだかるのです。
一つ目に立ちはだかる壁が信用保証協会の存在です。
リスケジュールに踏み切らざるを得なくなった中小企業は100%信用保証協会の保証付の融資があります。
信用保証協会の保証制度は様々で、コロナ禍や景気悪化局面ではその時々に「制度融資」が運用され、金融機関も積極的に「制度融資」を利用します。
一般保証と違い、財源や制度が違うため、「制度融資」と一般保証との一本化が実に難しいのです。
もちろん、北出や取引金融機関は必死の思いで保証協会との折衝を行うのですが、ここに時間がかかってしまうのです。
二つ目に立ちはだかる壁が、BS、もっといえば、実態ベースの債務超過の問題です。
収益改善によって簿価ベースでは債務超過を解消できても、仮払金のような費用性の資産があったり、貸付金等の資産性のない資産が資産の部に計上されていると、実態ベースでは実質債務超過を脱することができずにいます。
「正常先」の要件が教科書的には実態ベースでの資産超過であることなので、審査部や融資部といった本部与信所管部署の理解を得ることが難しくなります。
三つ目に立ちはだかる壁が、法人税です。
リスケジュールに追い込まれる要因として赤字が続いたことが想定されます。
赤字が続けば、税法上の繰越損失が存在するため、税法上の繰損が存在する限り決算申告時の法人税は均等割分のみとなります。
しかしながら、リファイナンスが見えてくるということは即ち収益改善が大きく進んでいることでもあるので、税法上の繰損がどんどん減っていきます。
税法上の繰損を使い切ってしまうと、実効ベースで課税所得に対して30%超の法人税が課税されるため、法人税の課税が返済原資縮小に直結します。
このように、経営者自身の血の滲むような経営改善によってリファイナンスが見えてきても、リファイナンスの実現には大きく3つの壁が経営者の前に立ちはだかります。
中小企業経営者は、3つの壁に怯むことなく、リファイナンスを実現するため、経営改善のスピードを緩めることなく、ますます経営改善を加速させていく必要があるのです。