【中小企業の銀行対策】リスケ慣れが事業継続を危うくする理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、リスケ慣れが事業継続を危うくする理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 リスケジュールは事業継続のための緊急避難的な措置である
2 金利引き上げがボディブローのように効いてくる
どうぞ、ご一読下さい。
1 リスケジュールは事業継続のための緊急避難的な措置である
2009年、今から遡ること16年前の日本では、リーマンショックの嵐が吹き荒れる一方、民主党政権への政権交代が実現しました。
金融担当大臣に就任した亀井静香氏の「中小企業が可哀想ではないか!」との鶴の一声で、いわゆる「中小企業金融円滑化法」が制定されました。
従前までは、リスケジュール即ち、債務者区分が要管理先以下に引き下げられた(事実上の不良債権になってしまっていた)ことから、リスケジュールの途は極めてハードルが高く、特に中小企業レベルでは、リスケジュールに金融機関が協調して応じるケースは極めてレアでした。
ところが、「中小企業金融円滑化法」によって、リスケジュールに応じたからといって、金融機関の債務者区分は必ずしも不良債権にする必要がなくなったことから、金融機関としては、債務者(特に中小企業)からの条件変更(リスケジュール)の要請に柔軟に対応することができるようになりました。
「中小企業金融円滑化法」は2013年に期限切れとなりましたが、以降も、金融当局が金融機関に「リスケジュールへの対応は柔軟に行うこと」という行政指導を行なっているため、粉飾決算をしていたり、反社会的勢力に加担しているというなケースでない限り、金融機関はリスケジュールに必要に応じて対応しています。
とはいえ、リスケジュールの趣旨は、あくまでも事業継続を最優先とした緊急的な措置です。
金融機関からの借入金は、補助金や助成金とは違って、当たり前ですが、返済しなければならないものです。
少なくとも、法律もさることながら、商取引上の倫理観として、「借りたものは返す」というのは、子供でも分かることです。
しかしながら、一度リスケジュールに踏み切ってしまうと、リファイナンスを実現して、債務者区分を「正常先」に回帰させていくことは容易なことではないというのが現実です。
このため、リスケジュールに応じてもらっている中小企業の中には、10年以上もリスケジュール状態にある中小企業がなきにしも非です。
リスケジュールはあくまでも事業継続のための緊急避難的措置であるにもかかわらず、リスケジュールが常態化してしまっているケースが少なからず存在するのが現実なのです。

2 金利引き上げがボディブローのように効いてくる
実際、金融機関にリスケジュールしてもらった場合、専門家を巻き込んで、経営改善計画を策定するのが通常です。
他方、経営改善計画は、非常に重たいものなので、実現可能性をより追求するため、数値計画は保守的なものになりがちです。
また、リスケジュールから年数が経過してくると、数値計画よりも実績値が下回っても、「今期は必ず取り返しますので」と経営者がお茶を濁してしまうことが少なくありません。
リスケジュールしてみると、正味のところ、元本返済額にもよりますが、資金繰りはずいぶん楽になるのが通例です。
いつしか、リスケジュール中の経営者は「もう後継者もいないし、大した資産もないし、このままリスケしたままで、俺が死んだら、会社を畳んでしまえばええか」となってしまいかねません。
確かに、これまではゼロ金利、マイナス金利の下では、「リスケしてたらええやんか」と考える経営者がいても不思議ではありませんでした。
ところが、短期金利の引き上げによって、リスケ頼みの緩い意識のままでは事業継続が難しくなる可能性が高まります。
実際、昨年の秋以降、メガバンクと地方銀行の短プラは2度の利上げによって、通算で0.400%引きられました。
一億円の借入残高で、年間400千円です。
「年間400千円、月額なら3万円、大したことないやん」とたかを括っていてはいけません。
従来からのゼロ金利、マイナス金利が異常な世界なのであって、今後、当たり前の「金利のある世の中」に日本も戻っていくことが想定されます。
今後も予想される短プラの引き上げによって、これまでなんとか捻出できていた営業利益が支払利息の増加分で吹っ飛んでしまいかねません。
利払いで利益が吹き飛んでしまうようなことになれば、事業継続に懸念が出てきても不思議ではありません。
このように、金利の引き上げは、リスケジュール中の中小企業にとってはボディブローのように効いてきます。
リスケジュール中の中小企業経営者は、ゼロ金利、マイナス金利下の緩い考え方は捨て去って、気がついたら「アチチチチ!!」と茹でガエルになることのないよう、収益改善のスピードを加速させて、元本返済額を増額して、リファイナンスへの道筋をしっかりとつけていく必要があるのです。