【中小企業の銀行対策】資金使徒違反が一発アウトである理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、資金使徒違反が一発アウトである理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 資金使徒は審査の肝である
2 資金使徒違反は「そんなつもりではない」では済まされない
どうぞ、ご一読下さい。
1 資金使徒は審査の肝である
中小企業から資金の要請を受けて金融機関が審査をする際、ザクっと言うと、3点が重要な論点となります。
1つ目が、資金使途で「何に使うのか?」で、売上が伸びて前向きな資金需要のような「増加運転資金」なのか、コロナ禍のように業績が急速に悪化した場合のような「後ろ向き資金需要」なのか、はたまた、将来の生産性向上や省力化のための「設備資金」なのか、金融機関では審査の重要な判断項目です。
2つ目が、返済原資で、「ホンマに返済してもらえるんか」という判断項目です。
金融機関はボランティア事業ではないので、融資した資金は回収しなければ鳴りません。
金融機関が、返済の見込みがないにもかかわらず、融資を実行してしまうと、金融機関に意図的に損害を与えることとして、背任に該当します。
3つ目は、保全で、融資先が返済不能となった時に、どうやって回収するのかという判断項目です。
保全を図る具体策としては、担保であったり連帯保証人であったり、信用保証協会の保証をつけたりします。
今日の1つ目の資金使徒について、掘り下げてみます。
繰り返しですが、金融機関は融資の審査を行う場合、「何に使うのか?」という資金使徒を極めて重要視します。
特に、設備資金に関しては、設備自体が過剰ではなく妥当な規模なのか、設備投資によって将来に渡ってどのくらいの生産性向上や省力化効果が実現できるbのかをシビアにチェックします。
他方、基本的に使い道自由な運転資金よりは、設備投資効果が加味される設備資金の方が、金融機関としては前向きに対応する傾向があります。
資金使徒は、繰り返しですが、金融機関の審査の肝なのです。
2 資金使徒違反は「そんなつもりではない」では済まされない
資金使徒違反について、もう少し掘り下げます。
金融機関では、資金使徒違反が発生しないように、設備資金の場合位は、基本的に融資実行時に、すぐ設備資金支払先(建設業者、工作機械卸売業者、自動車販売店等)に振り込むのが原則です。
融資実行後に設備資金支払先に振り込む場合には、振込日まで通知預金等で縛って、当座預金や普通預金等の流動性預金から設備資金を「隔離」します。
このように、民間金融機関では、資金使徒違反が発生しないよう留意しています。
ところが、日本政策金融公庫のように、預金を受け入れていない政府系金融機関では、設備資金であっても、融資先の金融機関の流動性預金に入金します。
日本政策金融公庫としては、「性善説」を前提に、「きっと融資実行後すぐに設備資金支払先に振り込んでもらえるもの」というスタンスです。
このため、特に日本政策金融公庫の設備資金借入金が運転資金に流用されてしまう懸念は完全には払拭できません。
では、もしも資金使徒違反がバレたらどうなってしまうのでしょうか?
資金使徒違反がバレてしまったら、基本的に「一発アウト」の世界です。
設備資金で融資を受けていながら運転資金に充当するのは、もはや詐欺行為そのものです。
資金使徒違反が明るみに出てしまった場合には、下手をすると期限の利益喪失事項とみなされて、一括返済を求められる可能性がある他、以降の追加融資はまず望み薄となってしまうことは間違いありません。
日本政策金融公庫での資金使徒違反がメインバンク等他の取引金融機関が把握することになったら、メインバンク以下各取引金融機関も引いていくことにもなり得ます。
中小企業経営者が、「たいしたことないや」と資金使徒違反をしてしまった後の代償は、あまりにも大きく、「そんなつもりではなかったんや」と言っても後の祭りです。
このように、資金使徒違反は絶対にダメです。
中小企業経営者は、仮に、赤字に陥ったり、資金繰り余力が低下した場合であっても、取引金融機関各行に対して、誠実なスタンスを維持し続ける必要があるのです。