【中小企業の銀行対策】増収時に必要となる増加運転資金を調達すべき理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、増収時に必要となる増加運転資金を調達すべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 増収時の中小企業の資金繰りがタイトになる理由
2 増加運転資金は金融機関は対応しやすい
どうぞ、ご一読下さい。
1 増収時の中小企業の資金繰りがタイトになる理由
売上が増える「増収」を実現できた時の経営者は、まさに経営者冥利に尽きるところです。
原材料高のこのご時世、仮に、増収の要因が売価の引き上げ(値上げ)であったとしても、値上げになったからといってお客様が逃げていったわけではありません。
理想としては、「増収増益」なのでしょうが、原材料高に加えて、人件費単価の上昇によって、増益を実現することはそうそう容易なことではありません。
ところで、増収を実現できた際、ほとんどの中小企業に起きることが、資金繰りがタイトになることです。
「売上が増えるわけだから、おカネが増えて、資金繰りは楽になるのでは?」という素朴な疑問が湧くところですが、ところが、中小企業に限って見れば、単純に増収=キャッシュ増加ということにはなりません。
なぜなのでしょうか?
ほとんどの中小企業は、取引関係の力関係上、必ずしも強い立場にあるわけではありません。
むしろ、仕入先が大手であれば、「なるべく早く払って下さい」となって、支払サイトはどうしても短くなりがちです。
弊所のお客様の中でも、筆頭格の仕入先が大手企業で、支払日、午前中に仕入先の方で入金が確認できなければ、仕入先から「午前中に入金確認ができておりませんので、大至急振込をお願いします」という強烈な督促電話が経理に入ったりします。
一方、売掛金の回収は、どちらかというと回収サイトが長くなりがちです。
「うちの支払条件は、月末締切、支払日翌月末日、半金半手、手形は90日、これでよければ取引させてもらいますが」とお客様は強気です。
受取手形はメインバンクで割引いて貰えばすぐ資金化できますが、割引料(実質支払利息)がかかってきます。
こうなると、多くの中小企業は、日常的に受け取るのは遅くて、支払は早め早め、という具合に、資金繰り上不利な状況に置かれます。
ましてや、売上の増加局面となれば、材料仕入や外注費が嵩むため、先行する支払いは益々増え、売掛金と受取手形の残高は増える一方です。
これが、多くの中小企業の資金繰りの日常的な実態なのです。
2 増加運転資金は金融機関は対応しやすい
次に、金融機関としては、増収時の増加運転資金について、どのような対応を取ることが予想されるでしょうか?
考えています。
コロナ資金の事実上の後継制度融資であった伴走型資金の受付が6月末で終了した今、金融機関としては、融資のネタ不足の状態です。
他方、金融機関としては、金利の上昇局面が徐々に見えてくる中、積極的に融資の拡大に取り組んでいきたいところです。
そんな中、「資金ショートしそうだからなんとかしてくれ」という後ろ向き資金に対して、「増加運転資金」となると、金融機関としては、比較的取り組みやすい案件です。
試算表上でも、前年同月実績よりも売上高が増加基調にあって、上記のような支払が先行するような中小企業であれば、営業店の部店長も、本部の与信所管部署も、ネガティブに反応する理由がありません。
金融機関担当者が増加運転資金の話を営業店に持ち帰って役席に報告し、その日の夕刻の店内協議の席でも、支店長も前向きです。
「よし、前向きに行こや。まず、保証協会へ打診せえ。金利はしっかりもうとけよ」
と支店の収益アップに支店長は余念がありません。
このように、回収サイトが支払サイトよりも長めになることや、前年同月比で増収となっていて増加運転資金が必要となることを常日頃から、中小企業経営者は、メインバンク担当者と認識を共有しておく必要があります。
増加運転資金をタイムリーに調達できなければ、せっかくの販売機会の逸失にもつながりかねません。
このような前向きな資金調達をスムーズに実現させるためにも、メインバンクへの毎月モニタリングを怠るべきではないのです。