【中小企業の銀行対策】法人預金解約時に中小企業側が留意すべき点とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、法人預金解約時に中小企業側が留意すべき点について考えてみます。

今日の論点は、以下の2点。

1 法人預金はこっそり解約してはいけない
2 法人預金解約時が金融機関の保全状況を確認する機会である

どうぞ、ご一読下さい。


1 法人預金はこっそり解約してはいけない

7月も中旬に差し掛かってきました。
暑さの中ですが、今月もあっという間に月末がやってきます。

原価高と人件費高の世の中ですから、月末の支払を経理の方で詰めていくと、予想外に「資金が足りんやないか!」なんてことにもなりかねません。
当貸や手貸の極度枠がメインバンクから設定されていれば、足らずまいの分を伝票一枚で資金調達できますが、そうでない中小企業であれば、月末まで2週間を切った今の段階で、メインバンクから資金調達するのは時間的に限界です。

こういう時のために、多くの中小企業では、法人の固定性預金(定期預金や積立定期、定期積金)を積んでいます。
固定性預金で満期が到来していなくても、担保で拘束されていない限り、よほどの事情がないかぎり、メインバンクは固定性預金の中途解約に応じてくれます。

他方、中小企業経営者としては、メインバンク担当者にバツが悪いと思えるのか、外回りの担当者が出払う午前10時半とか、午前11時にメインバンクの店頭に行ってこっそりと解約手続きをしがちです。
受け付けた預金係のテラーのお姉さんは、担当者が渉外部屋の席にいるか確認するものの、担当者が外出中だと、預金役席に相談せざるを得ません。
相談を受けた預金役席としても、拘束預金でない限り、中途解約を拒否するわけにもいかないので、法人預金は中小企業経営者的には難なく中途解約できる、と言うわけです。

ところが、お昼頃、外回りから帰店した担当者は、テラーのお姉さんが残してくれていたメモを見て、唖然とします。
(えー、俺、今期、法人預金、ノルマ足りてへんのに。社長、なんで一言、俺に言うてくれへんねん!)と担当者は怒り心頭です。

もちろん、担当者の彼の法人預金のノルマがクリアできるような状況であればまだマシなのですが、(なんで一言、俺に言うてくれへんねん!)ということになると、後々双方に禍根を残すことにもなりかねません。
(あの社長は信用ならん)
そういうイメージが担当者に受け付けられてしまうと、次の担当交代時に「あの社長だけは気いつけておいた方がええですよ」と申し送れをされる可能性さえあります。

したがって、法人預金の解約時には、事前に担当者に一言、「今月、支払が予想以上に多くてな。せやから定期3本の内、1本だけ今回解約させて欲しいねん」と伝えておくことを忘れてはいけないのです。

2 法人預金解約時が金融機関の保全状況を確認する機会である

確かに、法人預金を解約する時というのは、担当者も中小企業経営者も少々気まずいものです。
少なくとも、担当者とすれば、諸手を挙げて「どうぞどうぞ、喜んで解約させて頂きます」ということにはならなくて、渋々解約に応じるというのが本音のところです。

ところが、渋々解約の場合でも、その程度と度合いに差があることも事実です。

金融機関が自己査定を行う場合、債務者の非拘束預金であっても、保全があるものとして取り扱うのが一般的です。
なので、正常先であれば、法人預金が解約されたことによって実質信用部分(担保や保証協会の保証等で保全が及ばない部分のこと、「裸の部分」という金融機関もあります)が増加しても格別の問題は生じません。

しかしながら、要管理先以下であれば、そうはいきません。
法人預金が解約され、実質信用部分が膨張すると、追加の引当を積む必要が出てくるかもしれません。
そうなると、営業店(支店等)の収支が悪化するので、担当者だけの問題ではなくなります。
「今月、支払が予想以上に多くてな。せやから定期3本の内、1本だけ今回解約させて欲しいねん」と担当者に事前に打診した時に、担当者が、「社長、それはまずい。上と相談しますので、ちょっと待っといてください」と時間がかかるようでしたら、正常先から滑り落ちていることを経営者は認識すべきかもしれません。

このように、「担保に取られていない法人預金なのだから、いつでも解約できるやろ」というのは正論ですが、金融機関側としても事情があります。
法人預金の解約時の担当者の振る舞いをよく観察することで、自社の債務者区分を推察する良い機会になるかもしれません。


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