【中小企業経営者の心得】円安一服の恩恵を中小企業が享受できにくい理由とは?

今日は、中小企業経営者の心得として、円安一服の恩恵を中小企業が享受できにくい理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。
1 一度上がってしまった原材料単価はなかなか下がらない
2 資金繰り表上でも原価率を高めに設定し続ける

どうぞ、ご一読下さい。


1 一度上がってしまった原材料単価はなかなか下がらない

先週半ば以降、ドル高円安一色であった外国為替市場は、一気に円高に振り戻しています。
いよいよ、大統領選挙の思惑を受けて、米国での利下げと日本での利上げの二つの観測が、進みすぎた円安を是正する勢いです。

価格変動の振れが大きなB to Cでは、輸入食品を中心に、年末にかけて、小売価格の下落が期待されます。

一方、メーカーや卸大手のB to Bでは、円高に振れたからといって、一旦上がってしまった原材料単価がすぐさま下落することは想定しにくいのです。
メーカーや卸大手は、迫りくる賃上げ原資を確保するため、原材料単価の下落分を賃上げ原資に優先的に充当することが予想されます。

少なくとも、外国為替相場の変動分が、実際のB to Cの現場に転嫁されるのは、概ね3ヶ月先以降なので、正味、中小企業経営者が、「ちょっと原材料単価が落ち着いたかな」と実感できるのは、年末近くになりそうです。

中小企業にとって、お客様へのコスト上昇分の価格転嫁が難しい状況が続く中、まだまだ原価高の状況が続くことを中小企業経営者は今から想定しておく必要がありそうです。

2 資金繰り表上でも原価率を高めに設定し続ける

原価率の将来の想定というのは、向こう1年間、6ヶ月間の資金繰り表の作成に大きな影響を与えます。
製造業や建設業の場合、販管費よりも製造原価の方が圧倒的に金額が大きいため、原価率の設定が甘いと、後々、資金ショートが起きてしまい、「こんなはずではなかった」と中小企業経営者が後悔する羽目になりかねないのです。

資金繰り表にはいろいろな書式がありますが、弊所では、発生主義の損益を立てておいて、その上で、キャッシュフローベースの資金繰り表について、発生主義の損益からブレイクダウンしていく書式を使用しています。
高めの原価率を想定しておいてより保守的に資金繰り表を作成しておいて、後々、実勢の原価率が下落すれば、業績としてもキャッシュフローとしても上振れ要因です。

資金繰りを読むに当たっては、楽観論を排除して、より保守的に、厳し目に想定しておくことが鉄則です。
金利(債権相場)もそうですし、為替相場も、まさに「相場」なのであって、「神のみぞ知る」世界です。
「神のみぞ知る」世界を中小企業経営者が楽観的に想定するのは、そもそも無理がある話ですし、見通しが甘いと金融機関担当者から指摘されても不思議ではありません。

直近の外国為替市場での動きを見る限り、これまで続いてきた一辺倒の円安には歯止めがかかりつつあることは中小企業にとってはフォローの風ですし、メーカーや卸大手の中には、価格が高止まる中、他社のシェアを奪還するため、低価格での営業攻勢をかけてくることも予想されます。

しかしながら、円高の恩恵は中小企業が享受しにくく、円高による原材料価格の下落の恩恵を受けるのは、来年以降と踏んでおくべきです。

このように、中小企業を巡る外部環境はより一層不透明感を増しています。
楽観論を排除して、より保守的に将来を見通すことが、中小企業経営者の求められることなのです。


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