【中小企業の事業承継】事業承継後でも当面は先代の経営方針を踏襲すべき理由とは?
今日は、中小企業の事業承継として、事業承継後でも当面は先代の経営方針を踏襲すべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 会社に必要なものは連続性である
2 新社長のカラーは小出しで良い
どうぞ、ご一読下さい。
1 会社に必要なものは連続性である
会社として最大の経営課題であった創業者から直系子息への事業承継が、紆余曲折を経て実現できた「事業承継後」について今日は掘り下げます。
創業者がゼロから立ち上げて、バブル経済崩壊、その後の失われた30年を経て、直系子息への事業承継が円滑に実現できた暁には、創業者とすれば、「最後の仕事を成し遂げた」という達成感を感じていることでしょう。
とはいえ、数々の苦難を切り抜けてきたという自負に溢れる創業者としては、代表権を持った会長として、「まだまだ隠居するには早い」とばかり、毎日会社への出社を欠かしません。
これまでの社長室が会長室となる一方、新社長は個室の社長室を設けようとするか、はたまた、「社員との融和を一気に進めたい」という希望から、事務室の中央に社長席をしつらえるかもしれません。
他方、社員からすれば、事業承継、もっといえば、新社長の誕生は大きな関心事です。
内心、「新社長が経営方針を変えて、古参の従業員をリストラして、会社の経営方針を変えるかもしれない」という一抹の不安を抱えているものです。
新社長は新社長で、内心では、先代で、代表権を持ったままの会長たる父親には、様々な思いを持っているかもしれません。
新社長とすれば、自身のカラーを早々に出して、会社の方向性を大きく変えようとするかもしれません。
とはいえ、代表取締役社長が交代したからといって、会社に関わる様々なステークホルダーに変化が起こるわけではありません。
メインバンクを新社長が変えようとしたところで、これまでの取引実績があり、メインバンクとの信頼関係が曲がりなりにも存在するのであれば、格別の合理的な理由がないにも関わらず、メインバンクを変更するのは、会社として得策ではありません。
代表取締役社長が変わったことで、外部のステークホルダーとの関係性の変化が起こるようでは、会社としての信用を維持することは困難です。
社長が変わっても、会社にとって重要なことは「連続性が維持されること」に他ならないのです。
2 新社長のカラーは小出しで良い
北出60502kとはいえ、代表権を持ったままの会長である新社長の父親も、徐々に歳を重ねていって、永遠に現役というわけにはいきません。
また、いかに、中小企業とはいえ、デジタル化を推進したり、環境負荷の低減といった社会から要請されるような経営課題に対処していく必要があることは間違いありません。
従来からの会社が創出してきた付加価値を上回るような新たな商品やサービスへの新規参入も必要です。
新社長は、ちょっとイキって、「俺のカラーを出して、会社を改革してやる!」と息まきたくなるのはわかりますが、様々な経営課題を認識することをファーストステップとして、会社が内包する「ヒト・モノ・カネ」を最大限に活用できるよう、会社をステップアップする準備を進めていくことが肝要です。
新社長は、焦らず、しかしながら、徐々に新社長のカラーを出していくことが、会社を円滑に変革していくのに効果的です。
新社長のカラーは、「小出しで良い」のです。
中小企業経営者の高齢化は、我が国全体の人口ピラミッドより進行しています。
中小企業経営者は、事業承継後の会社のあるべき姿を見据え、次世代経営者と共有しながら、円滑な事業承継を実現していく必要があるのです。