【中小企業の銀行対策】物価高・賃上げ・金利上昇の影響を年商1億円の製造業でシミュレートした結果とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、物価高・賃上げ・金利上昇の影響をシミュレートした結果について、掘り下げてみます。

今日の論点は以下の2点。

1 年商1億円の中小製造業における物価高・賃上げ・金利上昇の影響とは
2 物価高・賃上げ・金利上昇は中小企業にとって三重苦である

どうぞ、ご一読下さい。

1 年商1億円の中小製造業における物価高・賃上げ・金利上昇の影響とは

昨日と今日、2日間に渡って、日本銀行の政策決定会合が開催され、短期金利を従前までの0.1%程度から0.25%を目処として誘導することが公表されました。

植田日銀総裁の記者会見では、賃金と物価に関する話が大半を占めていましたが、中小企業における影響については記者の多くが質問せず、総裁も深く掘り下げることはなかったように感じました。

もう30年近く、特に、短期金利は下がったことはあれど、ほぼ上昇局面はありませんでした。
銀行員でも、50歳代を除けば、ほとんどの銀行員が金利上昇を経験していません。
当然、中小企業経営者にとっても、ゼロ金利、マイナス金利の中で、会社の信用度にもよりますが、低金利の恩恵を受けてきました。
中小企業経営者にとって、低金利の恩恵はなんと言っても、支払利息が安く済んできたことに尽きます。

低金利だけではなく、企業間物価が上昇し、賃上げが現実のものとなってきた中、中小企業レベルで物価高・賃上げ・金利上昇の影響はどのようなものか、少々小振りな会社ですが、年商1億円の架空の製造業をモデルとして、シミュレートをしてみました。
ぜひ、読み進めて下さい。

モデルとした中小製造業のPLは下記の通りです。
売上高1億円、売上総利益率30.0%、営業利益10百万円、借入残高60百万円、某地銀短プラ(年率1.875%)に0.625%を上乗せした平均出来上がりレート2.500%、経常利益8.5百万円をモデルとします。。
下記のPLが、物価高前、賃上げ前、金利引き上げ前(現状)を想定します。

このモデルに於いて、物価高の影響から、材料費、製造経費並びにその他販管費について年換算上昇率を2.000%、賃上げの影響から、労務費、外注費並びに役員報酬を含めた販管費内の給与手当について年換算上昇率を3.000%と仮定します。
加えて、短期金利がアップする影響からメインバンクの某地方銀行の短プラが1.875%から2.125%に上昇し、出来上がりの平均レートが2.750%に引き上げられたとします。

上記の物価高・賃上げ・金利上昇後の想定PLが下記の通りとなります。

平たく言ってしまうと、物価高・賃上げ・金利上昇前であれば、経常利益8.5百万円を叩き出すのに必要な売上高は1億円ちょうどでしたが、物価高・賃上げ・金利上昇によって、投入する経営資源を同一にしたままで、売上高102,265千円、2.265%の増収が必要となります。
もっと言えば、お客様への値上げが必要になる、というわけです。

2 物価高・賃上げ・金利上昇は中小企業にとって三重苦である

物価高・賃上げ・金利上昇の3つのコストアップ要因のうち、物価高については、原材料等の値上げですし、賃上げも人材確保の観点からも中小企業経営者にとっては許容しやすいものですが、金利の上昇、即ち支払利息の増加は中小企業経営者にとっては心情的に受け入れ難いものがあるかもしれません。
いずれにしても、物価高・賃上げ・金利上昇は、中小企業にとって三重苦でしかありません。

上記のモデルで、借入残高60百万円、0.250%の金利上昇の影響によって、支払利息が年間150千円、月額12.5千円増加します。
たかが、年間150千円という声があるかもしれませんが、今回、既定路線となった短期金利の上昇がなければ、この年間150千円を賃上げの原資に充当できたはずです。
ただが年間150千円ではなく、されど150千円です。

さらに、懸念されるのが、短期金利の上昇は今回に限ったことものではないことです。
現に、今日の記者会見の席でも、植田総裁は、追加利上げについて時期はわからないとしながらも、今後、「より金利のある世界に近づけていく」という姿勢が垣間見えました。
たかが年間150千円程度の支払利息が、今後もある程度継続的に増加していくと、中小企業経営者は踏んでおくべきです。

このように、物価高、賃上げ・金利上昇は、中小企業の収益にボディブローのように効いてきます。

中小企業経営者は、デフレ下の緩いコスト意識を捨て去って、物価高、賃上げ・金利上昇を十分吸収できるよう、これまでにないような収益体質の強化に取り組んでいく必要があるのです。

 

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