【中小企業の銀行対策】売上至上主義がもたらす功と罪とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、売上至上主義がもたらす功と罪について考えます。
今日の論点は以下の2点です。
1 売上増加がもたらすものとは?
2 売上拡大にはメインバンクとの対話が不可欠である
どうぞ、ご一読下さい。
1 売上増加がもたらすものとは?
事業を興して会社を設立して5年、10年も経ってくると、曲がりなりにも会社としての体が整ってきます。
経営者とすれば、せっかく興した会社なのだから、会社を大きくしたいと考えるのは、至極自然なことです。
会社を大きくするというのは、いろいろな考え方があります。
従業員を増やす、複数の事業所を展開する、商工会議所等の経済団体で知名度を上げるなど、会社を大きくするというのは経営者それぞれが想いがあることです。
ただ、会社を大きくするという最もシンボリックな要素が「トップライン(売上高)」です。
「トップライン」が会社を大きくするという最もシンボリックな要素である理由が、特に、中小企業のようなローカルビジネスの場合、トップラインが上がることによって、即ち営業エリア内でのシェアアップに繋がることにあります。
営業エリア内でのシェアアップは、業界内での存在感アップを象徴するので、同業他社からは一目置かれる存在になり得ます。
売上増加は、会社の存在感を高めるのに最も効果的なやり方であることは間違いなさそうです。
2 売上拡大にはメインバンクとの対話が不可欠である
このように、トップラインを上げること自体、経営者は自身のモチベーションを高めることができます。
しかしながら、トップラインを上げることへの弊害も存在します。
トップラインを上げることへの最大の弊害が、資金の問題です。
中小企業の場合、特殊なケースを除けば、取引の力関係上、弱くなってしまいがちです。
端的に言えば、仕入先や外注先への支払は早めに求められる一方で、お客様からの売掛金の入金は後ろ後ろへ倒れがちです。
言い換えれば、回収サイトよりも支払サイトの方が短くなるケースが大半です。
このため、売上が増加基調にある場合には、資金繰り余力が低下してしまいます。
自社の流動性預金の平残が常に億単位を維持できているような中小企業はごく少数なので、増収基調では増加運転資金がどうしても必要になってきます。
特に、現在の年商が3億円だけれど、4年後に10億円超を狙うような成長指向の強い経営者であれば、相当程度の運転資金が要ります。
このため、取引金融機関、中でもメインバンクとの間で、増加運転資金を調達できるよう、しっかりとした対話が必要です。
必要に応じて、短期的な成長を前提とした事業計画をメインバンクに示して、メインバンクにお諮りする必要があります。
他方、このような短期的な成長を目指す中小企業はむしろ少数派で、借入金負担が重く、元本の約定返済を着実に履行していくためには、売上至上主義を捨てて、成長速度を横ばいとして想定した上で、原価管理を徹底し、元本返済に足りうるようなFCF(フリーキャッシュフロー)を確保することを優先するのがマッチベターな選択です。
このように、売上至上主義がもたらすのは、功も罪もあります。
自社が成長を優先しトップラインを上げてシェア奪還を目指すのか、借入債務の圧縮を優先すべく成長よりもコストコントロールを徹底するのかという経営方針を経営者が明確にする必要があるのです。