【中小企業経営者の心得】B to Cの経営破綻が与える深刻な影響とは?

今日は、中小企業経営者の心得として、B to Cの経営破綻が与える深刻な影響について考えます。

今日の論点は、以下の2点です。

1 B to Cの"C"はアマチュアと心得よ
2 倒産に至る原因の一つが取引金融機関の支援姿勢である

どうぞ、ご一読下さい。


1 B to Cの"C"はアマチュアと心得よ

昨日から東京の学習塾運営主体が破産手続きへの準備に入って事業を停止したことが報じられています。
センター試験を目前としているタイミングでの学習塾の経営破綻は、社会に大きなインパクトを与えました。
少なくとも、塾生にとっては、「なんでこのタイミングなの?」というのが正直なところで、お気の毒としか言いようがありません。

学習塾は、基本的にB to Cの範疇のビジネスモデルです。
今回の学習塾の場合、負債額は1億円程度ということで、倒産の規模感からすれば、小規模な倒産に位置付けられます。
しかしながら、一般のお客様からおカネを頂いて、塾の運営がなされているわけですが、B to Cの経営破綻は、一般消費者に貸倒リスクをモロに押し付けるという意味で、北出は勝手に「ダメな倒産だ」と考えています。

翻って、B to Bの経営破綻は、それほどまでに大きな報道とはなりません。
製造業や卸売業の場合、掛けの取引が基本である以上、一定の貸倒リスクは、経営者も覚悟しているものです。
もちろん、貸倒損失は売掛金や受取手形が不良化することでBSを傷めるだけではなく、資金繰りにも大きな影響を与えます。
もらえるはずの売掛金がもらえなくなったことによって、連鎖倒産が発生する可能性さえ起こり得ます。

しかしながら、B to Cではそういうわけにもいきません。
そもそも一般消費者が貸倒リスクを負うという発想さえないかもしれません。
今回の塾の場合でも、塾の代金は前払い(会社から言えば「前受金」)であった可能性が高いため、塾というサービスの提供を完了する前に、会社が経営破綻してしまったわけです。
当然、お客様の立場からすれば、前払いしたおカネの一部を返金してほしいという話になるわけですが、ことが破産事件となればそういうわけにはいきません。
破産事件の場合では、仮に債権者が一般消費者であったとしても、一般消費者だけ他の債権者と別に弁済するということにはならないため、破産事件が終わった後、破産配当があればそれを受け取るという原則は動きません。
「そんな詐欺みたいな話ってないやろ!」というのが一般消費者の感覚ですが、残縁ながら、特別扱いはありません。

一般消費者に貸倒リスクを被せた破産事件は、枚挙にいとまがありません。
2009年の「富士ハウス」、2018年の「はれのひ」などがそれらの典型例です。

B to Cの"C”は、商取引ではアマチュアです。
経営者はプロなのですから、北出の感覚からすれば、プロがアマチュアをいわせるようなことはあってはならないと考えています。


【中小企業経営者の心得】B to Cの経営破綻が与える深刻な影響とは?

2 倒産に至る原因の一つが取引金融機関の支援姿勢である

貸倒リスクに疎い一般消費者から前受金を頂く理由は、ひとえに資金繰りの問題です。
一般施主を相手とした木造工事業者であれば、着工金、中間金をいただくのが一般的ですが、他社との差別化のため、一般施主さんから代金を頂くのを完工時全額とする一方で、メインバンクから工事見合いの引当融資(紐付融資)を受けることで、立替資金需要に対応することができます。
学習塾も年末年始を挟んだ年度末にかけて繁忙期になることは明確なので、外部の講師への人件費等の支払いのため、短期の繋ぎ資金をメインバンクから調達していれば、一般消費者から前受金をいただく必要なぞありません。

ところが、財務状況が悪化すると、メインバンクが短期のつなぎ資金に対応しづらくなります。
短期のつなぎ資金は、基本プロパーなので、実態ベースで債務超過(簿価ベースではなく)になってしまうと、約定返済がつく長期資金ならいざ知らずメインバンクといえども、資金を出すわけにはいかなくなります。
塾の運営主体の会社がどのような銀行取引をしていたのか、知る術はありませんが、BS悪化、実質債務超過→金融機関からの資金調達できず→やむなく一般消費者から前受金をもらう→収益改善に取り組まず赤字体質を放置→資金繰り悪化→資金ショート→破産手続きへという典型的な負のスパイラルに陥った可能性がないとも限りません。

必要な資金をタイムリーに調達するためには、常日頃からメインバンクとの対話を怠らず、業況報告を定期的に実施(モニタリングを回す)することが必要不可欠です。

メインバンクとのモニタリング(試算表を開示する)を回していると、売上総利益率が低下したりするなど、収益が悪化する気配があれば、メインバンクの担当者はアラートを出してくれます。
「社長、今の段階から収益改善に取り組みましょう」。

中小企業経営者は、倒産に至る原因の一つが取引金融機関の支援姿勢にあることを肝に銘じて、取引金融機関への定期的な業況報告(モニタリング)を欠かしてはならないのです。

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