【中小企業の銀行対策】中小企業向け融資の鍵が目利きにある理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、中小企業向け融資の鍵が目利きにある理由について、考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 定量要素7対定性要素3は変わらない
2 定量要素だけでは会社は推し量れない
どうぞご一読下さい。
1 定量要素7対定性要素3は変わらない
中小企業向けの銀行融資は、難しいものだと北出は感じています。
住宅ローンの審査のように、年収や年間返済額といった数値から機械的に融資の可否が決定されるような金融商品もあれば、上場している大企業向けの審査は、代表執行役社長が誰かというよりは有価証券報告書を読み込むことで審査の可否が決まったりします。
他方、中小企業で、かつオーナー企業の場合は、オーナーである社長の経営手腕によるところが多いため、単純に定性要素だけで決するわけではありません。
とはいえ、大赤字では返済原資は捻出できませんし、そもそも返済の見込みがない融資は金融機関は取り組むことはできません。
返済の見込みのない融資を実行すれば、下手をすれば背任に当たってしまって、審査に携わった役職員の手が後ろに回ることも起こりえます。
このため、中小企業で、かつオーナー会社であっても、金融機関の融資審査の目線は、一見すると目に見えにくい定性要素3割に対して、決算書、試算表や資金繰り表等の定量要素が7割を占めるというのは、北出としては妥当な配分だと考えています。
おそらく、定量要素7対定性要素3の割合は、金融機関の暗黙の中で、今後も続いていくことが予想されます。
2 定量要素だけでは会社は推し量れない
他方、ここ最近、企業の不祥事が明るみなる中で、「やっぱり定量要素て大事やな」というのが北出の実感です。
ビッグモーターにせよ、ジャニーズ事務所にせよ、両社共に規模は大きいけれど、非上場の会社です。
ジャニーズ事務所に金融機関の与信が出ているのか、定かではありませんが、売上も収益も高水準で、金融機関のいう定量要素からすれば、「優良先」と映っていたと考えるのが妥当です。
他方、社長兼オーナーのお人柄や経営手腕をどこまで金融機関が把握できていたのか、疑問符がつかずにはいられません。
定量要素は、市場環境のような外部要因に加えて、会社の中の数字では顕われてこない内部要因で構成されます。
さらには、オーナー企業において、オーナー兼社長とその一族が取締役会と株主総会を事実上支配することを考えると、オーナー兼社長のお人柄や経営手腕ほど重要な定性要素はあり得ません。
もちろん、オーナー兼社長が「オレはアホ社長の象徴です」のような名札をつけているわけではないので、オーナー兼社長の経営手腕を金融機関等外部から評価するのは容易なことではありません。
さらに、金融機関の中小企業向け審査の現場では、決算数値を行内システムに入力すると財務状況の良否や改善状況が弾き出されるようになっているため、金融機関の現場の担当者も、目の前の決算書への検証がおざなりになってしまいかねません。
このような事態を打開すべく、金融機関では、担保偏重との批判をかわすためにも、定性要素をより重視する方向に舵を切っていくことが期待されます。
中小企業経営者は、金融機関が定量要素と並んで、目利きによる定性要素も重要視することを肝に銘じて、金融機関担当者に「この社長、なかなかできる人やんか」と一目置かれるよう、日々研鑽を重ねなければならないのです。