【中小企業経営者の心得】事業再構築に資金力が必要な理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、事業再構築に資金的余力が必要な理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 抜本的な事業再構築にはキャッシュが必要である
2 事業再構築に伴う資金調達も厭わない経営判断が必要になる
どうぞ、ご一読下さい。
1 抜本的な事業再構築にはキャッシュが必要である
アフターコロナになって以降、弊所のお客様の会社の外部環境の変化の大きさがつくづく実感させられます。
アフターコロナ前では、バブル崩壊後30年にもわたるデフレ、超低金利、そして返済猶予(リスケジュール)が中小企業を謂わばぬるま湯に浸らせてきました。
デフレと超低金利によって、賃金も上がらない状況が続いてきました。
しかしながら、アフターコロナになって、社会活動が回復したことで多くの中小企業がトップラインを引き上げることができました。
弊所のお客様の会社でも、トップラインだけ見れば、過去最高売上高を計上するケースが散見されるようになりました。
円安が進行、様々な原材料やエネルギー価格の上昇による原価高と経費の増加が、トップラインの増加幅を相殺しました。
加えて、人手不足を反映した賃金水準のアップは、非正規従業員に支えられてきた中小サービス業の収益を圧迫します。
賃金水準を上げないと、人材流出が止まらず、貴重な戦力が失われてしまいます。
更には、マイナス金利解除によって、借入金の支払利息が増加することが懸念されます。
大手企業がやっているように、デフレの中で生き永らえてきた低採算事業に見切りをつけ、成長が見込める分野への事業再構築がいよいよ必要なフェイズに突入してきました。
儲かっている大手企業でも、低収益のセグメントを縮小すべく、早期希望退職を募るケースが多くなってきているのも、今の世の中の大きなうねりです。
ところが、中小企業に於いて、低収益なセグメントから成長が見込める分野への転換が進んでいません。
その理由はシンプルで、低収益なセグメントを縮小し成長が見込まれる分野への転換には、少なからぬ資金が必要であるからです。
早期希望退職を募る場合、退職金を通常よりも割増することがほとんどです。
低収益なセグメントを縮小し成長が見込まれる分野に転換する際には、場合によっては、既往の設備投資分で未償却分について、設備の除却損等で一括損失計上する必要が出てきます。
低収益なセグメントを縮小し成長が見込まれる分野に転換する際には、割増の退職金を支払えるようなキャッシュが必要です。
同時に、設備の除却損等の少なからぬ金額の特別損失を計上しても、びくともしないような盤石な財務体質も併せて必要となります。
中小企業の場合、多くの場合で、事業再構築に耐え得るキャッシュと盤石な財務体質が十分確保できないため、抜本的な事業再構築に踏み切れないというのが中小企業の現実なのです。
2 事業再構築に伴う資金調達も厭わない経営判断が必要になる
もちろん、多くの場合、事業再構築は、これまでの本業とは全く縁のないような新規分野に進出するのではなく、これまでの事業で蓄積したノウハウを横展開するようなケースが想定されます。
とはいえ、事業再構築が論理的であって、かつ、経営改善計画(事業計画等)にしっかりとブレイクダウンできていたとしても、事業再構築が100%成功する保証はありません。
メインバンクであっても、「社長、ホンマに大丈夫ですか?」と念押しすることも大いにあり得ます。
もちろん、会社にとっても、経営者にとって、事業再構築が大規模になればなるほど、リスクは高まります。
そのため、事業再構築に伴う経営改善計画(事業計画等)は、係数面では、これは最低でもいけて、上振れは確実といった具合に、より保守的に見積もることが肝要です。
そもそも、経営改善計画の類は、楽観的な予測は完全に排除して、計数面ではより保守的で、後々、モニタリング(定期的な業況報告、弊所では毎月を原則とします)の中で、下ブレるようなことが起こらないように立案、作成するのが大原則です。
経営者サイドとしては、より保守的に計数計画を立案し、資金調達が必要となれば、メインバンクに正々堂々と「前向き資金」として資金要請を行うべきです。
このように、事業再構築は、事業再構築を行うこと自体がリスクを伴いますが、「今、この世の中のフェイズで立ち止まってていいのか!?」と経営者は自問自答する良い機会でもあります。
事業再構築に伴う資金調達を行うようなことがある時に備えて、中小企業経営者は、特に、モニタリングを励行して、メインバンクとの信頼関係構築に日々取り組む必要があるのです。