【中小企業の銀行対策】コロナ資金の返済難で倒産が増加するという報道を鵜呑みにしてはいけない理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、コロナ資金の過剰債務からの脱却は経営者の胆力次第である理由について考えます。

今日の論点は以下の2点。

1 コロナ資金の返済難で倒産するというのは見当違いも甚だしい
2 租税公課の滞納がなければ事業再生は困難ではない

どうぞ、ご一読下さい。

 

1 コロナ資金の返済難で倒産するというのは見当違いも甚だしい

最近、報道を見ていると、「倒産が増加傾向にある」で、「倒産増加の要因はコロナ資金の返済開始である」というステレオタイプの報道が先行しているように見えてしまいます。
北出に言わせれば、「コロナ資金の返済開始」は中小企業の資金繰りに大きな影響を与えるのは事実です。
しかしながら、コロナ禍以来、コロナ特例リスケや収益力改善計画、現在の405事業といった都道府県の活性化協議会が関与するスキームが存在しているので、「コロナ資金の返済開始」によって倒産が増加するというのは、実務を知らない報道関係者や信用調査会社の無責任極まりない見立てにしか思えません。
しかるべく、専門家が関与しつつ、債権者、関係各機関が債務者とコミュニケーションをとっていくことが運用として確立されているのが、金融機関の事業資金の融資現場の現実です。
2009年に施行された中小企業金融円滑化法以来、金融機関の事業資金の融資現場では、債務者からの返済条件の緩和への要請については柔軟に対応するように、行政庁から金融機関に行政指導が行われていることもあり、事業継続を最優先としたリスケジュール(返済条件変更)が実務としてしっかりと運用されています。

そもそも、返済期間が通常の運転資金では5年もしくは7年のケースが多い中、コロナ資金の返済期間は、民間金融機関で10年間、政府系金融機関では15年間(一部では20年間のケースもあります)と長期に渡るため、月額返済額としてはそれほど大きな金額にはならないのです。

他方、リスケジュールを受け、債権者と約束していた定期的な業況報告(モニタリング)を債務者が怠っていたり、経営改善計画等で明文化した経営改善策であるアクションプランを履行しなかったりする中小企業経営者も、中にはいるのはとても残念なことです。
約束を守ったり、リスケジュールを受けてくれた債権者、金融機関への真摯な態度に欠けているような経営者は、残念ながら事業再生には適さないと言わざるを得ません。

幸い、弊所を頼って下さっている中小企業経営者の皆さんは、金融機関への毎月モニタリングに積極的に対応してくれています。
毎月モニタリングでは、もちろん、良いことばかりではなく、ネガティブな要素もありますが、弊所のスタンスとしては、ポジティブなことも、ネガティブなことも全て金融機関、債権者に開示するというのが基本的スタンスです。
中小企業経営者が債権者から同意を頂いたアクションプランを忠実に実行し、真摯な態度で経営改善に取り組んでいると、不思議なもので、ネガティブな要素が段々潰せるようになるのと同時に、ポジティブな結果が生まれてくるようになります。

「コロナ資金の返済が大変やから、会社を畳もう」と経営者がネガティブな感情を抱くケースとして考えられるのは、例えば、健康上の不安があったり、後継者がいなかったり、さらに言えば、「世間がコロナの返済で会社がたくさん潰れているらしいから、うちもその口やな」と経営者自身が後ろ向きになってしまうことです。
しかしながら、健康上の不安があったり、後継者がいなかったり、というのは、コロナとは関係ないお話です。
後継者がいなければ、M&Aで株式譲渡を進めていけば良いだけの話です。

繰り返しますが、コロナ資金の返済難で倒産するというのは、ステレオタイプな報道内容で、実務を知らない連中の見当違いも甚だしい論調なのです。

2 租税公課の滞納がなければ事業再生は困難ではない

ただし、コロナで痛んだ中小企業の経営改善に取り組む上で、大きな支障になるのが「租税公課の滞納」です。
租税公課は、税金と社会保険料を指しますが、租税公課の滞納があれば、「厄介」です。

税務署、社会保険事務所は、国税徴収法(年金機構は国税徴収法に準ずる)に則って、預金や売掛金といった会社にとって最も重要な資産を差し押さえることができます。
メインバンクの預金が差押られたら、一発で「期限の利益喪失」となってしまい、一括返済を金融機関から求められてしまうので、これまでの取り組んできた経営改善の努力が水の泡となってしまいます。
非常に残念なケースとして散見されるのが、金融機関への返済が正常であるにもかかわらず、租税公課が滞納されているケースです。
優先債権の順番からすれば、これは逆です。
金融機関返済をリスケジュールして、租税公課をきっちり納付するというのが、経営改善のセオリーです。

逆にいえば、手形を切っていなくて、租税公課の滞納がなければ、経営改善が実現されるか否かは、経営者のモチベーションと覚悟によって決します。

経営改善途上の中小企業経営者は、ステレオタイプの報道に惑わされることなく、租税公課の納付を最優先にしながら、債権者に対して、真摯な態度で経営改善を進めていかなければならないのです。

公式サイト「コロナで痛んだ中小サービス業の再生支援」もご覧下さい

コロナで痛んだ中小サービス業の経営改善・再生支援
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