【北出経営事務所開業15周年】過去15年間の中小企業を巡る金融環境の変化とは?

本日4月10日は弊所、北出経営事務所の開業記念日で、本日で開業15周年を迎えました。
開業15周年という節目に合わせて、過去15年間の中小企業を巡る金融環境の変化について振り返り、考えてみることにします。

今日の論点は、以下の2点。

1 2009年の中小企業金融円滑化法施行で何が変わったか
2 中小企業を巡る外部環境は刻々と変化する

どうぞ、ご一読下さい。

 

1 2009年の中小企業金融円滑化法施行で何が変わったか

2009年8月に行われた総選挙で、民主党が圧勝、人民党が下野する一方、2009年9月には、鳩山由紀夫氏が内閣総理大臣に首班指名され、民主党政権が発足しました。
鳩山内閣で就任した亀井静香金融担当大臣の「中小企業が可哀想ではないか!」との鶴の一声で、2009年12月、中小企業金融円滑化法が施行されました。
政権発足から、中小企業金融円滑化法施行までたったの3ヶ月。
中小企業金融円滑化法は、超ハイスピードで施行された法律だったのです。

中小企業金融円滑化法の柱が、中小企業等の債務者が業況悪化や資金繰り余力低下といった状況に陥った際に、中小企業等債務者の要請に応じて、返済条件の緩和に債権者、関係各機関が柔軟に対応することを明確化したことです。
中小企業金融円滑化法施行後は、メインバンク等債権者に「ちょっとしんどいから返済止めてくれませんか」と要請することで、余程のことがない限り、メインバンク等債権者は返済条件の緩和(リスケジュール)に応じるようになりました。
中小企業にとって、リスケジュールが身近な存在になったこと自体、当時は画期的なことだったのです。

なぜ、中小企業によってリスケジュールが身近になったことが画期的だったのか、その理由について掘り下げます。
中小企業金融円滑化法施行前では、メインバンク等債権者がリスケジュールに応じた段階で、債務者区分を「要管理先」(「破綻懸念先」を含む。実質的な不良債権と見做される)以下に引き下げなければなりませんでした。
「要管理先」に債務者区分が落ちてしまうと金融機関は、実質信用部分(担保や保証等で保全されない部分、実質「裸」の部分)について必要十分な貸倒引当金を有税で積む必要がありました(融資先が倒産や支払不能の状況に陥ったわけではないので、貸倒引当金を積んだ場合、税務当局は無税償却を認めないため)。

ところが、中小企業金融円滑化法施行によって、金融機関はリスケジュールに応じたからといって、債務者区分を「要管理先」以下に引き下げる必要がなくなった(「その他要注意先」にとどめることができた)ため、金融機関にとっては、不良債権として必ずしも分類する必要がないという「アメ」を得ることができたのです。

つまり、中小企業にとっては、リスケジュールがより身近なものになったことに加えて、金融機関は不良債権の増加を抑制できたという具合に、中小企業にも金融機関にも、「アメ」が与えられたというわけです。

中小企業金融円滑化法は、2013年3月末で期限切れとなりましたが、行政庁は、金融機関に対して、債務者からの条件変更の要請には柔軟に対応することを引き続き求める行政指導を今に至るまで継続しています。

他方、中小企業金融円滑化法及びその後の行政指導によって、低金利、マイナス金利の下、元本返済負担が軽減された中小企業が、ゾンビ化して、延命処置されているという指摘がされていることも見逃せません。
いずれにしても、中小企業を巡る金融環境に、中小企業金融円滑化法は大きな大きな変化をもたらしたことは間違いないことなのです。

2 中小企業を巡る外部環境は刻々と変化する

次に、中小企業金融円滑化法の後の中小企業を巡る外部環境について考えていきます。

民主党から政権を奪還した自民党は、安倍晋三内閣総理大臣のリーダーシップの下、「アベノミクス」を経済政策として立ち上げ、市場緩和によって、ジャンジャン日本銀行などを通じて資金が市場にばら撒かれました。
禁断のマイナス金利が解禁され、金融機関の融資残高の増加が期待されましたが、残念ながら、中小企業に融資の雨が降ることはありませんでした。

これには金融機関としても合理的な理由があって、いくら市場に資金が潤沢に供給されても、無理やり中小企業に資金を貸し付けることができませんでしたし、そもそも返済原資が確保されない融資は背任にあたるので、不良債権となることが見えているような融資に取り組むわけにはいきません。

アベノミクスの恩恵は、残念ながら中小企業にはごく限られたものになってしまいました。

そして、中小企業を巡る外部環境の変化の極め付けが、2020年春の新型コロナウイルス感染症の拡大でした。
大阪も、東京も、未だかつて経験したことがなかった事実上のロックダウンが現実のものとなりました。

飲食業も、宿泊業も、中小サービス業は、深刻な経営危機に瀕することになりました。
中小サービス業の小規模事業者では、法的整理に踏み切ることなく、廃業が多数発生しました。
大阪の街中でも、一等地の路面店でも、しばらくの間、空きテナントが目につきました。

他方、金融機関も信用保証協会も政府系金融機関も、コロナ資金で全力で中小企業を支えました。
中小企業再生支援協議会(元中小企業活性化協議会)では、コロナ特例リスケ、収益力改善計画等の制度で、リスケジュールにかかる金融調整が実施されました。
今なお、コロナ関連の支援は続いていますが、コロナの後始末はまだまだ終わることはありません。

このように、たったの15年間を中小企業の金融環境という視点で爆速で振り返ってみましたが、中小企業にとって、金融環境はその時々で大きく変化することが改めてわかりました。

中小企業側が主体的に金融環境という外部環境をコントロールすることは実質的には不可能です。
しかしながら、刻々と変化する外部環境に適宜対応し、先手を打っていくことは可能です。

中小企業経営者は、日々変化する金融環境に目を配りながら、自社がサスティナブルな存在であり続けるため、不断の努力を怠ってはならないのです。

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