【中小建設業の銀行対策】原価管理の徹底がメインバンクとの信頼関係を継続させる理由とは?

今日は、中小建設業の銀行対策として、原価管理の徹底がメインバンクとの信頼関係を継続させる理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 気付けば工事粗利益が減っていたは通らない
2 長期借入金の返済原資の確保が課題である

どうぞ、ご一読下さい。

1 気付けば工事粗利益が減っていたは通らない

建設業は、依然として我が国の基幹産業の一つで、雇用の面でも、GDPにも大きなインパクを有します。
大阪では、万博を前にして、万博に直接関わる現場だけではなく、ホテルの建設ラッシュが続いています。
度重なる風水害や大規模地震の影響から、建築だけではなく、土木工事の需要もひっきりなしです。
地方では、文字通り、基幹産業で、建設業に何らかの形で携わる就業人口は全体の3割に達するという試算もあるほどです。

他方、一般競争入札の厳格化によって、受注競争は激化していて、最低落札価格付近でのくじ引きでの応札も多くなっています。
入札の厳格化は、元請業者といえども大儲けは出来ません。

特に、建築の場合は、建設資材の価格上昇の影響と、人手不足によって、材料費も、労務費も、はたまた外注費も上昇傾向で、工事原価を実行予算通りに収めることは容易なことではありません。

工期を優先させるために、原価管理が甘くなってしまって、工事が完工し、引き渡しが済んだ後に、実際の工事原価が高くなってしまい、知らない内に工事粗利益が減ってしまうことも今時珍しくありません。

資金が潤沢で、内部留保も十分な元請業者であれば、「今回は泣いておこう」で済んでしまうかもしれませんが、中堅・中小建設業の多くは、「今回は泣いておこう」では済みません。

いうまでもなく、元請業者は、支払が先行します。
役所や施主さんから工事代金を頂くのは、いいとこ、着工時3割で、最後の完工、引き渡し後に7割です。
材料費を払わないと資材が揃わず、現場が動きません。
監督以下、労務費も支払先行です。
外注費は、実質的には労務費の性格が強いことから、先払いが原則です。

元請業者が、全額自己資金にて立替資金を工面できれば、「今回は泣いておこう」でいいのですが、ほとんどの元請業者は、メインバンクから、短期のつなぎ資金を工事引当として借り入れて、資金調達します。

元請業者が、実行予算通り工事を進められず、工事原価がかさんでしまうと、最終の工事代金が入金されても、工事引当の短期つなぎ資金の返済ができません。
「これを返済すると、給料が払えなくなる」。
工事引当が返済できないとメインバンクとの信頼関係は地に堕ちます。
メインバンクとしては、「工事引当はこれっきりやで」と最後通牒となってしまいます。
工事引当のつなぎ資金を調達できないとなると、大口の元請工事の受注が事実上、難しくなります。
これでは、元請工事業者として、事業継続に大きな支障が出てきます。

「気が付けば、工事粗利益が減っていた」はメインバンクには通じないのです。

2 長期借入金の返済原資の確保が課題である

本来、元請建設業者には、長期で資金調達する必要が薄いはずです。
製造業や、卸売業のように、継続的に商いが続くような商売であれば、長期の安定した資金が必要になるかもしれませんが、工事が1件1件完結するような元請工事業者には、つなぎ資金の引当融資は必要でも、長期で資金調達する必要性はそもそも薄いのです。

もちろん、新型コロナウイルス感染症拡大といった非常事態に、手元流動性を確保するために長期で資金調達するというのはわかります。

元請建設業の場合、工事代金は、着工時、(建築であれば上棟時)、完工時といったタイミングで入金されます。
公共工事主体の会社であれば、例えば2月の入金はほとんどなく、4月から5月あたまにかけてドサっと入金が集中する、という具合です。

一方、長期借入金は、毎月元金均等返済なので、入金がほとんどなかろうが、ドサっとあろうが、お構いなしです。
元請建設業で長期資金のウェイトが高まると、仕事と入金の薄い月に返済負担で資金繰りが窮屈になります。

長期借入金の返済原資の確保が課題となっています。

中小建設業経営者は、長期資金を安易に調達するのではなく、短期つなぎ資金をタイムリーに調達して、借り過ぎの状況を解する必要があるのです。

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