【中小企業の銀行対策】知ってそうでよく分からない銀行支店長という存在とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、知ってそうでよく分からない銀行支店長という存在について掘り下げます。

今日の論点は、以下の2点です。
1 支店長は支店の最高責任者である
2 支店長であっても厳しい業績評価にさらされている

どうぞ、ご一読下さい。

1 支店長は支店の最高責任者である

中小企業経営者からすると、メインバンクから保証協会の保証付だけではなくプロパー融資を受けているような取引があると、外回りの担当者がつくのが通常です。
このため、メインバンクとの普段のやり取りは、担当者を通したものなので、通常、支店長を対面することはあまりありません。
支店長と対峙する時は、よほど大口融資を受けて、支店の業績が上がり、支店長が喜んだ時か、あるいは業績が悪化し、「社長、これからどうするつもりなんですか?」と詰問されるような状況になったり、融通手形(通称、ユウテ)がバレて、支店長の堪忍袋が切れて「今後、一切、ニューマネーは出さん」と啖呵を切られる時かのいずれかです。

なので、通常の融資取引や入出金の取引に於いて、支店長は登場しないので、支店の最も奥の大きなデスクの陣取る支店長の姿しか見たことがない中小企業経営者の中には、「支店長て何やってんのやろ?」と不思議に思うことがあるかもしれません。
確かに、見た目には、支店長はどのような存在なのか、よく分からないというのが本当のところかもしれません。

まず、支店長の最大の役割が「支店(営業店)の最高責任者であること」で、わかりやすいのが融資取引にかかる稟議の決裁です。
メガバンクの場合、営業店(支店、支社、法人営業部等)の部店長(支店長、法人営業部長、支社長等)の決裁権限は2億とも3億とも言われますが、地銀、第二地銀や信金・信組の支店長の決済権限は、もう一桁少ないというのが北出の肌感覚ですが、必ずしも、地銀大手の支店長だからといって支店長決裁が大きいとも限らず、信金の支店長は決裁権限が小さいとも一概には言えないようです。

次に、支店長の方針が色濃く出るのが、その営業店の営業方針です。
通常、外回りの担当者が融資案件を拾ってくると、店内協議の席上で、最終的に支店長が「前向きにやれ。取引深耕して残高シェアを上げていけ」とか、「プロパーはあかん、保証協会の保証が大前提やぞ」だとか、融資先への取組方針を決めます。

そして、何よりも支店長として最大の権限が支店内の「人事権」です。
支店長が支店内の人事権を掌握しているがために、次席(副支店長や次長)、役席者(支店の課長や支店長代理等)以下も支店長の指示に絶対服従するのが支店長の人事権によるものです。
支店長から「あいつはあかんヤツや」とレッテルを貼られると、僻地の支店に飛ばされないとも限りません。

「人事権」については、金融機関に限らず、他のどの組織においても同様の傾向がありますが、特に、金融機関では、支店長の人事権は絶対なのです。
金融機関支店長の人事権については、中小企業オーナー経営者も参考になるのではないかと北出は勝手に考えています。

【中小企業の銀行対策】知ってそうでよく分からない銀行支店長という存在とは?

2 支店長であっても厳しい業績評価にさらされている

かつての銀行員は、「いつかはクラウン」ではないけれど、「いつかは支店長」という目標を持って、行内政治や同期との競争にさらされながら頑張ってきたものです。
ところが、金融機関によっては、経営統合によって営業店(支店等)が集約され、支店長ポスト自体が減ってしまっています。
経営統合をせず単独で生きている金融機関でも、システム化の推進と効率化によって、営業店の数が減っています。
仮に、地銀中位行であれば、支店等営業店の数はざっと150から200。
支店長が150人から200人いるということであり、150人から200人の支店長は皆、ライバルです。
この中から、さらに頭角を表して、執行役員に昇進するのは、多くて5%ほど。
実に20倍の狭き門です。

金融機関の営業店は、どこも、皆、「独立採算制」です。
100円儲けるためにいくら経費がかかるのかを示す営業係数で営業店の成績が測られているケースも散見されます。
リスケジュール先が収益を大幅に改善し、リファイナンスを実現して、債務者区分を正常先に回帰させることができれば、積んでいた引当金が利益として戻ってくるので、支店長にとってはプラス評価に直結します。
支店長は支店の中では最高責任者ですが、銀行の組織全体から見れば、まだまだ上には上がいるわけです。
多くの金融機関では、エリア別で支店を管轄する役員がいて、その役員は、抜き打ちで支店を訪問します。
支店長が奥の支店長席でふんぞり返っていたら、役員から「はよ、お客様のところへ行ってこんかい!」と檄が飛んできたりします。

このように、銀行支店長といっても、厳しい業績評価にさらされています。
中小企業経営者は、社長業は激務ではありますが、銀行員も楽な家業ではないことを認識して、自社の持続可能性をより一層高めるための経営努力を惜しんではならないのです。

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