【中小企業の銀行対策】「足りないから借りる」から脱却しなければならない理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、「足りないから借りる」から脱却しなければならない理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 入金の範囲内で支払を賄うことを大原則にする
2 「足りないから借りる」は過剰債務の温床である
どうぞ、ご一読下さい。
1 入金の範囲内で支払を賄うことを大原則にする
業種、業態によって、資金繰りには特性があります。
例えば、建設業で、公共工事を多く受注していれば、前受金を受注直後に役所から受領しますが、原材料費や外注費、現場経費などの支払が先行して、あっという間に前受金を食い尽くしてしまって、立替払いが出てしまいます。
もちろん、当座預金の平残(ヘイザン、平均残高のこと)が4億も5億もあるような会社であれば資金繰りに困ることはありませんが、普通の中小建設業であれば、前受金を食い尽くした後の立替払いに対応する、メインバンクから工事見合いの引当融資を受けるのが普通です。
しかしながら、完工後、完成検査を無事パスすれば、年度末から年度明けにかけて、残りの工事代金が役所から振り込まれてきて、引当融資は完済されます。
あるいは、年末に原材料や商品を仕入れて、年明けにかけて売り切るようなケースであれば、繋ぎ資金の短期運転資金の融資を受けて、春先には完済となります。
このように、入出金のズレは日常的に発生しますが、トータルとして押し並べて、入金の範囲内で支払を賄うことができれば、借入金への依存度は決して高くなることはありません。
そして、トータルとして押し並べて、入金の範囲内で支払を賄うことができれば、試算表上では、最悪のケースでの経常損益での赤字は減価償却費の金額以内に納めることができます。
借入金への依存度を高めることなく、赤字体質に陥らないためには、入金の範囲内で支出を納めることは大原則なのです。

2 「足りないから借りる」は過剰債務の温床である
ところが、世の中には、「足りへん時は、銀行から借りればええやんか」と考える中小企業経営者もいらっしゃいます。
「足りないから借りる」場合に、取引金融機関の対応として、「既往の長期借入金を折り返す」ことが繰り返されます。
例えば、金額30百万円、期間5年(60回)で、月額元本返済額500千円の借入金があったとして、順調に返済を進めてきて3年間が経過し、残債が12百万円となった借入金について、当初の実行額30百万円で折り返して借り換える方法です。
これですと、真水で18百万円のニューマネーが入ることになり、さらには、月額元本返済額500千円は変わりがないので、経営者にとってみれば、借入が増えたという実感が薄いのです。
金融機関担当者は、長期で18百万円の追い貸ができて、自分の成績にもなりますし、信用保証協会の保証付であれば、支店長も「リスクなしでええやないか」とご機嫌です。
「足りないから借りる」というわけで、長期の折り返しを繰り返していくと、最初は、当初の実行から3年で折り返していたのが、2年になり、1年になり、いつか折り返しが効かなくなってしまうと、過剰債務に陥るだけではなく、リスケジュールまっしぐらという最悪のパターンに突入してしまいます。
過剰債務に陥ることなく、リスケジュールを回避するためにも、トータルとして、入金の範囲内で支払を賄うのは大大原則なのです。
中小企業経営者は、この当たり前の大原則を改めて肝に銘じて、健全な銀行取引を実現し、会社のサステナビリティを高めていくための経営努力を怠ってはならないのです。

