【中小企業の銀行対策】費用性の資産が計上されているBSがアウトな理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、費用性の資産が計上されているBS(貸借対照表)がアウトな理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 費用性の資産とは何か
2 費用性の資産計上されないために必要なこと
どうぞご一読下さい。
1 費用性の資産とは何か
会社の決算書は、大きく2つの概念で構成されます。
1つ目が、期間中のフロー(儲かったか損したか)のPL(損益計算書)です。
一番上から、売上高①、売上原価②、売上総利益③(=①ー②)、販売費及び管理費④、営業損益⑤(=③ー④)、営業外収益⑥、営業外費用⑦、経常利益⑧(=⑤+⑥ー⑦)、ここまでにしときますが、この順番に並んでいます。
本業で儲かったかどうかが営業損益⑤で、主に利払後の損益が経常利益⑧で、⑤も⑧もプラス(黒字)であれば、まあよし、となって、比較的わかりやすい構造です。
2つ目が、期末時点の資産と負債の組み合わせを示したBS(貸借対照表)です。
借方(BSの左側)が全額資産で、貸方(BSの右側)が負債で、「資産」ー「負債」=「純資産(資本の部の合計)」となっています。
「資産」>「負債」となっていれば資産超過で、安全性としては望ましい形です。
逆に、「資産」<「負債」であれば債務超過となってしまって、金融機関としては、なかなかニューマネーを出しづらくなります。
ここまでは簿価ベースのお話ですが、資産の部の中には、不健全な資産が混じっていることがままあります。
オーナー企業で多いのが、オーナー一族向けの貸付金、仮払金、立替金が計上されているケースです。
これらが出てしまう理由としては、領収書がない(あるいは会計事務所から費用計上できないとされる場合)ケースが散見されます。
金融機関では、これらを「費用性の資産」と位置付けて、実態ベースのBSで「費用性の資産」を控除します。
したがって、場合によっては、簿価ベース(決算書上)では資産超過だけれど、金融機関の実態ベースBSとしては「実質債務超過」となってしまいます。
「実質債務超過」となれば、プロパー資金が出づらくなって、取引金融機関の取り組みスタンスとしては良くて「現状維持」、場合によっては「撤退回収」となりかねません。
「実質債務超過」とはならない場合でも、「費用性の資産」が計上されていること自体、取引金融機関の心証は決して良いものではありません。
金融機関の審査の目線は、BS7割、PL3割です。
なので、BSは健全(十分な資産超過)で一時的な赤字は対金融機関には大したダメージにはなりませんが、PL黒字でもBS実態ベース債務超過であれば審査の目線は極めて厳しくなります。
中小企業経営者は、特に、オーナー企業において、「費用性の資産」がBS上に計上されることを全力で回避しなければならないのです。
2 費用性の資産計上されないために必要なこと
「費用性の資産」をBS上に計上しないためにはどうするべきでしょうか?
その対策として、大きく2つが挙げられます。
1つ目が、会社の経費と個人の支出を厳格に分別することです。
オーナー企業といっても、会社と個人は別主体です。
会社の経費は当たり前ですが、会社が経費計上して会社が支出すべきです。
しかしながら、「これは個人の支出やろ」と客観的に判断される支出は役員報酬の中で賄わなければなりません。
会社と個人を厳格に分別しておくことは、経営者保証ガイドラインで連帯保証債務を外すべく金融機関と交渉する時にも大恋な支障となります。
2つ目が、会計事務所と常日頃からコミュニケーションを密にすることです。
試算表は毎月作成されるわけなので、経営者が試算表をPLだけではなく、BSにもしっかりと目を通して、必要に応じて仕訳を訂正する必要があります。
会計事務所とのコミュニケーション不足によって、費用性の資産が計上されているケースが散見されるため、会社側が主体的に費用性の資産の計上を回避する努力が必要です。
BSを会社が疎かにすると、必要な資金調達に支障が出かねません。
中小企業経営者は、金融機関との信頼関係を構築するためにも、費用性の資産がBS上に計上されていないことに常日頃から注意を払い、金融機関との良好な関係構築に努める必要があるのです。