【中小企業経営者の心得】「囚人のジレンマ」から脱してもう一段の値上げを実現しなければならない理由とは?

今日は、中小企業経営者の心得として、より一段の値上げが収益改善の鍵である理由について考えます。

今日の論点は以下の2点。

1 値上げをするかしないかは「囚人のジレンマ」と同じである
2 デフレ時代の発想を転換する

どうぞご一読下さい。

1 値上げをするかしないかは「囚人のジレンマ」と同じである

外国為替市場のドル高円安は、一時期のことを思えば、一服感が出てきています。
しかしながら、メーカーから卸、卸から小売への企業間物価の上昇傾向は未だ続いています。
仕入先からの値上げ通告がファックス一枚、なんてことも世間ではままあるようです。

困ったことに、仮に外為市場が円高に振れたからといって、上がってしまった企業間物価は容易には下がりません。
来年にかけても、企業間物価は高止まりすると踏んでおいた方が良さそうです。

他方、小売や飲食といったB to Cでは、値上げは「後追い」となっています。
原価が上がって、「もうこれ以上は自社では値上げ分を吸収できない」となって、泣く泣く値上げに踏み切るというケースが大半です。
値上げをするのか、見送るのか、という選択は、競合他社との間で、知らず知らずのうちに、ゲーム理論に一種である「囚人のジレンマ」に囚われています。

具体的な例を示します。
通りを挟んで斜向かいに立地するラーメン店が2店舗存在すると仮定します。
2店舗共に、仕入先から値上げや、人件費、光熱費の上昇で、収益が圧迫されています。
困った2店舗の店主は、こっそりと話し合いをして、「今の950円のラーメンを来月1日から1,000円値上げして1,050円にしよう」と合意をしたとします。
ところが、いざ月が明けても、相手方の店舗はラーメンの値段を950円で据え置いたままで、値上げに踏み切る気配がありません。
モロに競合関係にあるこちら側は、値上げをしてしまってはお客様が根こそぎ流れてしまうことを懸念して、値上げすることなく、我慢大会が続いてしまう。

これが競合するラーメン店2店舗に於ける「囚人のジレンマ」の関係です。
2店舗の店主にとって、ベストな選択は、2店舗共に値上げをすることです。
しかしながら、「囚人のジレンマ」に囚われてしまった二人の店主は、値上げに踏み切れず、結果として、2店舗共に相手方を使用できなかったため、値上げを見送ってしまったことで、2店舗共に大損です。

このような「囚人のジレンマ」から脱却しなければなりません。

2 デフレ時代の発想を転換する

上でも申し上げましたが、残念ながら、多くの小売、飲食では、値上げが「後追い」です。
原価の上昇分を後追いで上げているので、値上げ自体が不十分です。

さらに、上がっているのは原価だけではありません。
人手不足によるバイト時給の高騰、水道光熱費の値上がりなどなど、コストアップは広範囲に及びます。
中には、コロナの真っ最中に引き下げてもらった賃借料も、ビルオーナーさんからの「もういい加減、元に戻してもらわないと。うちは協力金ももらってないし、固定資産税は待ってくれないからね。他にも入居したいお店も出てきてるんでね」という切実な声に押されて、賃借料もコロナ前に逆戻りです。

「値上げをしたらお客が逃げる」という『囚人のジレンマ」は、まるで30年以上にも及んだデフレ時代に根付いた呪いです。
原価と経費に適正利益を上乗せして、価格設定をするというのが、本来のあるべき価格設定の姿です。

複数店舗を構えて、店舗も賃借で、バイトも何十人と雇っている中堅・中小サービス業と、父ちゃん母ちゃんで自宅でやってる小規模事業者とは、そもそも費用構造が違います。

このように、中小企業経営者は、呪われたデフレ時代の発想から脱却しつつ、お客様に十分満足してお帰り頂けるようなホスピタリティあふれるサービス提供を、幹部だけではなく、非正規従業員にも徹底する必要があるのです。

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