【中小企業の銀行対策】無借金経営の功罪とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、無借金経営の功罪について考えます。

今日の論点は以下の2点。

1 無借金の経営者は相当「気楽」である
2 借金は会社の成長エンジンである

どうぞご一読下さい。

1 無借金の経営者は相当「気楽」である

「うちの会社は無借金やねん」と胸を張る経営者がいらっしゃるかもしれません。
業歴が長くて、長年に渡って利益を社外流出させることなく手厚い内部留保を蓄積しまくって、設備投資を極力手控えていれば、BSの資産の部は、固定資産や繰延資産はほとんどなく、流動資産が資産の大半を占め、潤沢な現預金によって流動比率が80%みたいな会社であれば、確かに無借金、もしくは実質無借金(借入金よりも現預金が多く、その気になればいつでも借入金を完済できる状態)経営を実現することができるかもしれません。

他方、非上場中小企業で、無借金あるいは実質無借金である会社は、少数派であると考えられます。
特に、製造業はお客様からのニーズに応えるため、生産設備を定期的に実施する必要がありますし、建設業でも大型受注を請け負うと回収は後々となる一方、材料費、外注費並びに現場経費の支払が先行するので短期の引当資金は必須ですし、重機の購入には設備資金借入もついて回ります。
複数店舗を展開する飲食業であれば、出店資金は借入に依存するのが通常です。

確かに、無借金中小企業であれば、金融機関に決算書を提出する必要もありませんし、ましてや資金繰り表や試算表の提出を求められることは一切ありません。
メインバンクもサブバンクもなく、金融機関に忖度したり、気を遣ったりする必要が全くありません。
一言で言うならば、銀行対策しなくて済むのなら、経営者として、これほど気楽なことはありません。

しかしながら、そもそも、中小企業は、取引の力関係上、相対的に立場が弱いため、回収サイトよりも支払サイトが短くなるため、増収局面では、間違いなく増加運転資金がなくてはなりません。
非上場中小企業経営者が「うちの会社、借金まあまあ、あるんやで」とおっしゃるのであれば、それは当たり前のことですし、ましてや恥入る必要なぞは全くないのです。

2 借金は会社の成長エンジンである

上記でも申し上げましたが、無借金は経営者としては非常に気楽です。
しかしながら、経営者として、事業家として、無借金を誇っているようでは、いつまで経っても、会社は成長しません。
マイナス金利、ゼロ金利の今までならとにかく、金利が着き始めるようになると、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)ではありませんが、現金の価値は下がる一方です。
今日の100万円は、1年後には、間違いなく100万円を割り込みます。
無借金で投資もせず、増加運転資金を調達しないままだと売上も良くて横ばいです。
DCFからすると、横這いでは、緩やかながらも、右肩下がりの下降曲線を描いていくのです。
それでは、いくら無借金とはいえ、30年先、50年先、事業を継続していけるのか、次世代に会社を残していけるのか、大きな疑問です。

現金をそのまま現金として持ったままでは同業他社との競合には勝ち抜けません。
現金、あるいは借入金の調達によって、次の成長に向けた投資を継続していくことによって、会社を次世代に残していけることができるのです。

借入は、会社の成長エンジンそのものです。

経営者は、過剰債務に陥ることなく、しかしながら、次世代に残すための投資のため、必要な借入金を調達することに注力しなければなりません。
非上場、中小オーナー経営者は、必要な資金をタイムリーに調達するため、メインバンクとの良好な関係を維持、向上させていかねばならないのです。

【中小企業の銀行対策】2023年9月中間期ディスクロージャー誌から垣間見えるメインバンクの健全度とは?も併せてご一読下さい。

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