【中小企業の銀行対策】メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、絶対にメインバンクにしてはいけない金融機関の特徴について考えてみます。

今日の論点は、以下の2点。

1 メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴その1「事業再生のノウハウが乏しい」
2 メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴その2「資金運用力が弱い」

どうぞご一読下さい。

1 メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴その1「事業再生のノウハウが乏しい」

北出がしゃべらせて頂くセミナーの最後の質疑応答で、中小企業経営者からよく聞かれる質問が「どの金融機関をメインバンクにするのが良いですか?」です。
これは、非常に難しい質問で、「一概には言えないのですが」とお断りをした上で、「社長の肌に合う金融機関をお選び下さい」と北出はお答えするようにしています。
金融機関のカチカチの組織特性が効いているのかもしれませんし、類は友を呼ぶとはよく言ったもので、一つの金融機関があるとして、似たような人たちが集まるようになっていることを実感させられます。
石橋を叩いて渡るような長男坊的な社風の金融機関もあれば、三男の集団のようなイケイケの金融機関もあります。
その金融機関の資本関係や沿革などを知ることで、長男坊的な大人しい金融機関なのか、イケイケの金融機関なのか、おおよそ見当がつきます。

その上で、中小企業経営者ご自身のキャラクターとマッチする金融機関をメインバンクに選択すべきだと北出は考えています。

一方で、「この金融機関はあかんやろ」と感じられるケースも少なからずあります。

今日は「この金融機関はあかんやろ」の観点から、メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴を掘り下げてみます。

利益(Profit)を取りに行ったところ、利益と表裏一体の関係にある地雷(Risk)を踏んでしまって、一時的に赤字になってしまって、経営改善が必要になる中小企業は少なくありません。
あるいは資金繰り余力が低下してしまって、リスケジュール(返済条件の緩和)が必要となるケースもままあります。

中小企業経営者の中には、「当社は優良企業やから、経営改善なんかは縁遠い話で、関係ないわ」とおっしゃるかもしれません。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大やビッグモーターのような業界大手の不祥事が顕在化することで、想定外の外部要因の脅威が会社の事業継続に支障が出かねないことはいうまでもありません。

今は順風満帆に見えていても、先行き不透明感の増す中、リスケジュールが必要になることは、どの中小企業でも起こり得る話です。
金融庁の来年度の監督指針の中でも、コロナで傷んだ中小サービス業に対して、金融機関が単に資金繰りの支援だけではなく、事業再生に積極的に関与することが明文化されています。

いざ、経営改善局面になったり、事業再生が必要となった場合、会社の存亡の鍵を握るのがメインバンクです。
経営改善局面であれば、メインバンクが他行を主導して、債権者等関係各機関に働きかけることで、各行の協調体制が維持できるわけですが、他行や信用保証協会に積極的に働きかけることを放棄するようなメインバンクを北出は何度も目撃してきました。

そういう場合、メインバンクの営業店担当者は決して悪気はないのですが、本部の与信所管部門を含めて、事業再生に関するノウハウが乏しいケースが散見されます。
メインバンクに事業再生のノウハウが乏しい場合、最も悲惨な立場に置かれるのが、債務者たる中小企業です。
残念なことに、事業再生へのノウハウが乏しい金融機関がメインバンクであった場合、債務者の経営改善や事業再生の進捗スピードは驚くほど減速してしまいます。

実際、債務者の中小企業サイドから見て、自社のメインバンクに事業再生や経営改善のノウハウがあるのかどうかを見極めるのは簡単ではありませんが、預金残高や融資残高が同等の金融機関と自社のメインバンクのディスクロージャー誌を比較して、金融機関としての融資先に関する経営改善の進捗状況を見極めることができます。

とはいえ、実際に経営改善や事業再生が必要な局面となった時点で、メインバンクに事業再生へのノウハウが乏しいからといって今更メインバンクを変えるわけには行かないのが現実です。

なので、創業当初や会社の成長局面で、自社のメインバンクの事業再生へのノウハウを見極めて、場合によっては、新たなメインバンクへの取引ウェイトを高めておいて、徐々にメインバンクを変更していくことが必要かもしれません。

2 メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴その2「資金運用力が弱い」

メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴の二つ目「資金運用力が弱い」について掘り下げています。

そもそも、金融機関のビジネスモデルは「おカネの商社」です。
おカネが余っている一般の預金者や企業から「預金」という形で資金調達をして、「預金」を原資として「貸出金」として、資金需要のある企業や一般個人におカネを融資するというのが金融機関のビジネスモデルです。

資金運用力が強い金融機関とは、資金調達したおカネを、企業や一般個人に融資という形で売り切ることができる金融機関を指します。
逆に、地方銀行X行の預金3兆円に対して、貸出金1.5兆円の場合、預貸率(=「貸出金」÷「預金」×100%)は50%のような金融機関は資金運用力が弱い金融機関と言わざるを得なくなります。
「おカネの商社」という観点からすると、仕入れたおカネ3兆円の内、実際売れたおカネ1.5兆円となるので、残り1.5兆円は「在庫」となってしまいます。
中小企業経営者の中からは、「それやったら、在庫のおカネをうちの会社に融資してくれればええやないか」という声が聞こえてきますが、不特定多数の預金者から預金を集めている以上、金融機関としてはわざわざリスクを過剰に取って不良債権を作るわけにはいきません。
在庫としておカネが余っているからと言って、安易に融資をしまくるわけには金融機関としてはいけないのです。

また、「どうせ売れない在庫があるのであれば仕入を減らせばええやないか」と懸命な中小企業経営者が声を上げますが、金融機関が仕入を減らすということは「預金をドンドン引き出してください」と預金者に宣言することになるので、預金者は皆、「あの金融機関は近々潰れる」ということになってしまって、信用不安が出てしまいます。
なので、金融機関が積極的に仕入れを減らすことは現実的にはできないのです。

在庫の1.5兆円を現金で金庫に保管していても運用収益は0円(現金の札束のままでは利息や配当を得ることはできない)となるので、在庫の1.5兆円を債券などを買って運用して、運用収益を得ようとします。

公社債等を購入して運用する際に、安全資産への投資が前提となるので、日本国債、米国国債といった国債や比較的格付けの高い社債などを購入します。

ところが、ここ1年ほどの間、ゼロ金利の解除が徐々に見えてきて、長期金利が上昇する(債券価格は下落する)ようになってくると、金融機関が資金運用として保有している公社債に含み損が発生するようになります。
地域金融機関は、投資目的が満期保有としていれば、時価評価をする必要がないので、投資有価証券評価損を直ちに計上する必要はありません。

しかしながら、含み損が発生している保有する投資有価証券が満期を迎える度に、投資有価証券売却損が計上されてしまいます。
いわば、金融機関が時限爆弾を抱えているようなものなので、金融機関は、自己資本比率(国内基準4%)を死守するため、貸し渋りや貸し剥がしによってリスク資産を圧縮しようとします。

残念ながら、今年から始まった長期金利の上昇傾向は来年にかけても継続することが予想されます。
資金運用力の弱い金融機関の投資有価証券の含み損はさらに拡大していくことが見込まれます。

因みに、関西とその近隣の地方銀行で、長期金利上昇局面に於いても、投資有価証券に潤沢な含み益を内包する優良地方銀行は、京都市本店の京都銀行、大津市本店の滋賀銀行、三重県津市本店の百五銀行などが挙げられます。

1で取り上げた事業再生のノウハウ同様、投資有価証券の含み損益の状況は、金融機関の公式サイトで公開されているディスクロージャー誌を閲覧することができます。

中小企業経営者は、自社のメインバンクに事業再生のノウハウと資金運用力に関する情報を収集し、優良金融機関をメインバンクとし、メインバンクとの信頼関係構築に努めていく必要があるのです。

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