【中小企業の銀行対策】安易にメインバンクを変えてはいけない理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、安易にメインバンクを変えてはいけない理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 金利で動く会社は軽くみられる
2 メインバンクとの関係は一日にしてならず

どうぞ、ご一読下さい。

1 金利で動く会社は軽くみられる

マイナス金利が解除され、近いうちに、会社の借入金の利率が上がるのではないかと内心不安に感じている中小企業経営者は少なからずいるはずです。
金利が上がる局面を迎えつつある中、中小企業経営者の中には、「うちのメインバンクは今のままでええんかな?」とも感じているかもしれません。

市中の金利が上昇局面を迎える中、特に預貸率(預金をどのくらいの比率で融資に回せているかという金融機関の指標。「預貸率」=「融資残高」÷「預金残高」×100%で求められる)が高い金融機関にとっては、金利上昇局面では収益力がアップするので、余計、融資先の新規開拓は金融機関営業店(支店、営業部、支社等)にとっては至上命題です。

中小企業の中でも、例えば、帝国データバンクの評点が51点を上回るような会社を金融機関営業店の外回り(渉外係、得意先課、営業課などの部署に属する役職員)がピンポイントで、新規融資を売り込みます。
規模の大きな営業店には、新規融資先を専門に開拓する「新規専担」の外回りがいますが、「新規専担」は一般に人事評価が高く、有望株が選抜されます。

中小企業であっても、優良企業は金融機関の新規融資のターゲットになるので、各金融機関の新規専担が日参します。
中小企業経営者であれば、金融機関から優良先とみてもらえるような健全な財務体質と安定した収益力を実現する必要があります。

わたくし北出が代表を務める北出経営事務所は、大阪府八尾市に所在しますが、大阪市を中心に、3メガバンク、大和銀行時代から大阪にゆかりの深いりそな銀行、関西みらい銀行、京都銀行、紀陽銀行や南都銀行といった地方銀行、大阪信用金庫や大阪シティ信用金庫といった信用金庫、近畿産業信用組合を筆頭とした信用組合など、多くの関西地場の金融機関が乱立しています。
加えて、大阪市内には、全国各地の地方銀行が大阪支店、大阪営業部などを構えています。
大阪は、全国でも有数の金融機関激戦区になっているので、金融機関同士の新規融資先の獲得競争は熾烈です。

金融機関は、新規融資の売り込みに際しては、既存の金融機関との取引よりも有利な条件を提示してきます。
有利な条件の最たるものは利率で、「御社のメインさんが1.875%でしたら、当行はがんばらせてもらって、1.625%でやらせてもらいます。なんとか、うちで新規融資をお願いします」と、新規専担は必死に食いついてきます。

一般に、地方銀行の大阪支店は、預金を集めることに主眼を置かず、個人取引もほとんどなく、ひたする事業性の融資を伸ばすオーバーローン(預金残高よりも融資残高が多いこと)の営業店です。
既存先の融資を伸ばすことと新規融資先の開拓が地方銀行の大阪支店の役割なので、一般的に低めの利率で勝負します。
また、保証協会の保証枠と不動産等の担保はメインバンクを始めとした既存取引行が目一杯使っていますし、るので、地方銀行の大阪支店は、基本、保全は「信用扱い(無担保無保証、取れても個人保証が限界)」です。

確かに、中小企業経営者からすると、「1.625%やったら安いな。今回はちょっと乗っかっておこか」と魅力的に見えてしまいます。
しかしながら、今まで全く取引のなかった金融機関に金利が安いからといって、新規融資の話に乗っかってしまうのは正直、考えものです。
仮に、1.625%で新規融資を受けたとしても、新規先端は内心、「金利で動く社長は軽いな」とほくそ笑んでいるに違いありません。
新規専担の役割は新規融資の実行までなので、以降別の担当者に引き継がれます。
ピンポイントで受けた新規融資先に、本店が地方にある地方銀行大阪支店は大きな関心を払いません。
返済期間5年の長期(証貸)を放り込んで、後は引き継がれた担当者との面談は決算書が出来上がる年一回のみというケースも珍しくないのです。

2 メインバンクとの関係は一日にしてならず

次に、見ず知らずの金融機関から融資を受けた後のメインバンクとの対応について掘り下げてみます。
もちろん、見ず知らずの金融機関からピンポイントで新規融資を受けたからといって、メインバンクが変わるわけではありません。
しかし、見ず知らずの金融機関から融資を受けた中小企業経営者は、これまで長らく支えてくれたメインバンクにいくばくかの後ろめたさを感じるものです。
ついつい、見ず知らずの金融機関を新規融資を受けたことを中小企業経営者は、メインバンクに内緒にするかもしれません。

とはいえ、見ず知らずの金融機関から融資を受けたことは、少なくとも次の決算書をメインバンク担当者に渡した瞬間にバレてしまいます。
メインバンク担当者は、他行の動向を知っておくため、勘定科目明細の金融機関の借入明細を確認するので、「社長、○×銀行から新規融資、40百万円受けたんですね。金利のことやったら、なんで、一言、僕に相談してくれへんかったんですか!」とメインバンク担当者は涙目です。

ピンポイントの新規融資だけでも、メインバンク担当者は、間違いなく気分を損ねます。
他方、メインバンク担当者も人事異動で交代していきますし、社長にとって肌の合わない担当者もいたかもしれません。

しかしながら、「今のメインは話にならん。他行に全部肩代わりしてもらうようにする」というのは、相当なリスクです。
もちろん、今のメインがどうみても誠実に対応してくれないようであれば、メインバンク変更もやむなしかもしれませんが、業歴の長い会社であればあるほど、メインバンクを安易に変えることには慎重でなければなりません。
仕入単価が安いから仕入先を変えるというわけにはいきません。
メインバンクとの信頼関係は、一日にしてならず、なのです。

とはいえ、今後より顕在化していくであろう金利上昇局面で、預貸率が低い金融機関では、有価証券での運用で含み損が多くなれば、真っ当な資金需要にも対応し切れなくなる可能性も無きにしもあらずです。

中小企業経営者は、メインバンクを変更する際には、その金融機関の預貸率、有価証券運用状況、不良債権比率といった金融機関個々の経営状況も勘案して、慎重にジャッジする必要があるのです。

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