【中小企業の銀行対策】銀行員が言う「本部」とはどういう組織なのか?
今日は、中小企業の銀行対策として、銀行員が言う「本部」とはどういう組織なのか、考えてみることにします。
今日の論点は、以下の2点。
1 本部は司令塔で営業店は現場である
2 融資の可否は稟議で決する
どうぞ、ご一読下さい。
1 本部は司令塔で営業店は現場である
中小企業への融資案件に際して、中小企業経営者に金融機関担当者がよく口にするのが「本部が(ホンブガ)・・・」という言葉です。
中小企業経営者にとって、馴染みの薄い金融機関の「本部」という組織について掘り下げてみます。
金融機関の組織の特徴の一つが、「ピラミッド型組織」です。
ボード(役員会等)が決定した経営方針を経営施策として具体化するのが、本部の役割です。
本部が具体化した経営施策を営業店(支店、営業部、法人営業部、支社等金融機関によって呼称は様々)に下ろして、金融機関全体に行き渡らせ実行が移していくというのが金融機関の大きな仕事の流れです。
謂わば、「本部」は司令塔で、営業店は「現場」です。
一言で「本部」と言っても、様々な部や室が存在します。
融資の決裁に関する本部部署は、審査部、融資部といった与信の所管部署ですが、何でも屋と言える総務部、数字を営業店に達成させる営業推進部、コロナで痛んだり経営改善が必要な融資先をサポートする企業支援部、営業店で不正が行われていないか検査を行う検査部、営業店の事務を補佐する事務部、役員のお世話係である秘書部などなど、部署の呼称は金融機関によって違いがありますが、このような部署が「本部」には存在します。
本部部署は、多くの金融機関で、本店営業部の建物の3階より上層階に入居するケースが多いようですが、本部部署だけ別の建物に集約されている金融機関もあります。
本部の部長は、支店長級で、支店長級の役職員を「部店長」といいますが、一般に、本部の部長は支店長級でも上位の方が就任していることが多いようです。
一方、本部と営業店には双方に気を遣っていて、営業店の支店長さんの中には、本部の人間が支店にやってくるのを快く思わない方もおられます。
本部は、第一義的には、営業店の意向を極力汲んでいることを建前にしているように見受けられます。
中小企業経営者は、金融機関担当者が口にする「本部」という組織について、少しでも理解を深めておく必要があります。
2 融資の可否は稟議で決する
中小企業経営者が直接、金融機関本部と関係するのが、審査部、融資部といった与信所管部署です。
中小企業向け融資は、全て、稟議(リンギ)手続きで決裁され、稟議手続きで使用される書類が「稟議書(リンギショ)」です。
中小企業向け融資と言っても、融資先の信用格付けや債務者区分、融資金額、財務状況、保全、返済期間等によって、決裁権限が厳格に決められています。
優良先で、融資金額が少額であれば、支店長決裁(営業店で決裁できること)で決裁できますし、金額が大きかったり、債務者区分が正常先でなかったり、返済期間が10年間といった超長期に渡る場合には、本部決裁(本部の与信所管部署)での決裁が必要となります。
審査部や融資部といった与信の決裁に関わる役職員は、経営職(部店長級)がほとんどで、肩書は調査役や審査役の名刺を持っていらっしゃいます。
与信の決裁に携わる調査役、審査役は基本経営職なので、営業店の融資役席からすると随分役職が上なので、営業店の融資役席は本部の調査役、審査役には最大限、気を遣う必要があります。
また支店長等の営業店の長の決裁権限は、一般に、メガバンクで2億円以上と言われますが、他方、信用金庫のような小規模金融機関でも基幹店舗の支店長さんの決裁権限が意外と大きかったりして、こちらが驚かされることもあります。
このように、中小企業経営者からすると、「本部」という組織は目に見えにくく、馴染みの薄いものですが、融資を受ける側の中小企業経営者としては、仮に融資金額が少額であるにもかかわらず、本部決裁が必要である場合には、自社の信用格付けが優良先でない可能性があることを認識しなければなりません。
また、自社が優良先でないと疑われる場合には、財務状況の課題を見出して、金融機関から優良先とみなしてもらえるよう、BSを綺麗にして、財務状況の健全化を図る必要があるのです。