【中小企業経営者の心得】「待ちの商売」が難しい最大の理由とは?

今日は、中小企業経営者の心得として、「待ちの商売」が難しい最大の理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 原価目標はあるがコントロールが難しい
2 過去の成功体験が効かなくなっている

どうぞ、ご一読下さい。

 

1 原価目標はあるがコントロールが難しい

世の中は、ゴールデンウィークは真っ最中。
とはいえ、今日は平日、しかも4月末日で、通りかかった銀行ATMは、支払いをする人たちで、行列ができていました。

ゴールデンウィークということもあり、今日は「待ちの商売」について考えてみることにします。
「待ちの商売」というのは、小売業や飲食業といった一般消費者を対象としたB to Cの商いのことを言います。
「待ちの商売」の経営者は、ゴールデンウィークの売上予測をして、必要な仕入をして、万全の体制でゴールデンウィークを迎えたはずです。

ところが、「待ちの商売」というのは、困ったことに、どれだけ売上が立つか、即ちどれだけ集客できるのか、というのは、正直なところ、「出たとこ勝負」です。
集客を見込んでいても、天気が悪くて、想定以上に集客できないケースもありますし、逆に集客が想定以上で、営業時間中に在庫が底をついて営業を中止せざるを得なくなる可能性もあります。

営業マンがいるようなメーカーや卸であれば、お客様と商談を重ねて、「よし、これでいきましょう」と売る側と買う側が取引条件を合意して、商いが成立します。
つまり、商いが成立する段階で、トップライン(売上高)が確定します。
トップラインから、原価はいくらで、粗利が金だけで、売上総利益率が決まっていきます。
突発的な非常事態が起こらない限り、粗利益が見込めて、収益を確保することができます。

これをPLで考えてみると、メーカーや卸の場合、受注の段階で、
+)売上高( 確定)
ー)売上原価(確定)
=)売上総利益(確定)
となります。

一方、「待ちの商売」の場合、営業開始の段階で、
+)売上高( 未確定)
ー)売上原価(確定)
=)売上総利益(未確定)
となってしまって、メーカーや卸の経営者からすると、リスクの大きさに驚愕するかもしれません。
集客が想定を下回った場合、売上原価の中で、期末(最終日)棚卸高を計上すれば、売上総利益を確保することはできますが、在庫が残ってしまうと、キャッシュになりません。
PL上では、利益が出ているように見えても、在庫の滞留はキャッシュフローは痛めてしまうので、在庫を極力圧縮するという教科書通りの経営に徹する必要があります。

例えば、飲食業の場合、FL(F=Food仕入、L=Labor人件費)を売上高に対して、60%に抑えることと経営者が店長にノルマをかけるのですが、そもそも、分母がいくらになるか、営業開始前は未確定なので、原価目標はあるものの、そのコントロールは極めて難しいというのが北出の実感なのです。

2 過去の成功体験が効かなくなっている

更に、「待ちの商売」を難しくしているのが、急速に進む円安です。
小売業の商品の仕入単価は上昇基調ですし、飲食店が使用する業務用食材のほとんどは輸入品なので、原価率は上がる一方です。
一般消費者の間でも、値上げはもう当たり前、というコンセンサスはできているとはいえ、販売単価を引き上げることには、「待ちの商売」の経営者にはまだまだ抵抗感が残っています。

また、新型コロナウイルス感染症が、2類から5類になってから最初のゴールデンウィークということもあり、行楽地も街中も人でいっぱいです。
インバウンドの急増も無視できません。

新型コロナウイルス感染症を経験した今、一般消費者の行動は変容しています。

これらの要因によって、過去の成功体験が通じなくなってしまっています。

とはいえ、「待ちの商売」の経営者にとっては、ゴールデンウイーク後半は絶好のビジネスチャンスです。
くれぐれも、販売機会の喪失といった残念な事態に陥ることのないよう、「待ちの商売」の経営者は絶好のビジネスチャンスを陣頭指揮で全力で駆け抜けていく必要があるのです。

 

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