【中小企業の銀行対策】長期金利上昇が中小企業に与えるインパクトとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、長期金利上昇が中小企業に与えるインパクトについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 長期金利の上昇によって一部の金融機関の適用金利が上昇する
2 長期金利上昇が地域金融機関の体力を削ぐ
どうぞ、ご一読下さい。
1 長期金利の上昇によって一部の金融機関の適用金利が上昇する
長期金利の上昇傾向が鮮明です。
長期金利の指標となるのが、10年ものの日本国債の利回りですが、本日の国債市場取引後の長期金利は1.430%となっていて、過去10年間で最も高い水準となっています。
一方、短期金利は、日銀が決定する政策金利に連動していて、短期金利の上昇によって、メガバンクや地方銀行の短期プライムレートが昨年の9月以降、0.150%、0.250%と2度に渡って引き上げられることが公表されています。
中小企業がメインバンクとしている地方銀行は、コロナ資金等一部の制度資金を除けば、短プラに連動している中小企業向け融資が多いため、中小企業経営者にとっても、借入金の適用レートが引き上げられていることを既に実感しています。
他方、長期金利の上昇は、中小企業にとっては、あまり縁がないという風に捉えれがちですが、そう簡単に済ませるわけにはいきません。
中小企業にとって、長期金利の上昇は決して対岸の火事ではないのです。
特に、信用金庫や信用組合といった地域金融機関をメインバンクにしている中小企業や小規模事業者は少なからず存在します。
信金や信組は、資金調達(主に預金)の多くが、固定性預金(定期預金や定期積金)への依存度が高いので、短プラではなく、長期プライムレート(通称「長プラ」)に連動することが多いようです。
信金や信組の場合、長プラ連動になってはいるものの、長プラ上昇にフル連動するわけではなく、年に一度、長プラの変動具合によって、貸付の適用レートを決めているケースが多いように見受けられます。
みずほ銀行の長プラの変動具合を見てみると、令和に入って以降、一時的に長プラは1.000%を下回る水準にあったようですが、今月12日から長プラはわずか1ヶ月の間で、2.000%から2.200%に上昇しています。
ちなみに昨年の4月1日時点の長プラは、1.600%だったので、1年足らずの間で、実に0.600%長プラは上がっていて、短プラの上昇幅0.400%を上回っています。
年度が明け、4月に入ると、信金・信組が中小企業向け適用金利を引き上げてくる公算は極めて大きいのです。
さらには、長プラ上昇は、政府系金融機関の日本政策金融公庫の適用金利にも影響が及ぶことも想定されます。
公庫の金利は固定が多いので、既往の借入金の適用レートに変動はありませんが、新規で公庫から資金調達する際には、制度融資の適用レートが上がる可能性が高まります。
このように、信金・信組や公庫の適用レートが上がるとなれば、中小企業、小規模事業者にとっては、資金調達コストの上昇に直結するのです。

2 長期金利上昇が地域金融機関の体力を削ぐ
先程は、中小企業や小規模事業者が、長期金利の上昇によって受ける直接的な影響について考えました。
ところが、中小企業や小規模事業者にとっては、長期金利の上昇の影響はこれだけにとどまりません。
中小企業や小規模事業者がメインバンクとするケースが多い信金・信組の場合で、規模が小さかったり、預貸率(=「融資残高」÷「預金残高(資金量)×100%)が低水準である場合には、信金・信組は、安全資産とされる日本国債での資金運用への依存度が高まります。
長期金利の上昇は、日本国債の利回り上昇と流通価格(時価)の下落を意味します。
このため、長期金利が上昇することによって、信金・信組が保有する日本国債の価格(時価)が下がってしまいます。
地域金融機関が保有する日本国債の価格下落は、地域金融機関に含み損が発生してしまい、金融機関としての体力が削がれてしまいます。
今のところ、日本の金融機関の経営は安定していて、多少の日本国債の価格下落によって、金融機関の信用が低下することは想定しにくいですが、保有する債権の価格下落によって、地域金融機関の自己資本比率が低下する懸念が出てくると、バブル崩壊時のような貸し渋りや貸し剥がしが再燃しないとも限りません。
このため、間も無く、金融機関は3月末で決算を迎えるため、7月には公表されるであろう2025年度の金融機関個々のディスクロージャー誌を注目しないわけにはいきません。
特に、地域金融機関をメインバンクとする中小企業経営者と小規模事業者事業主は、自社のメインバンクのディスクロージャー誌を注目して、金融機関の体力を把握しておく必要があります。
金融機関のディクスロージャー誌は、営業店(支店等)の待合スペースで閲覧できる他、ネット上でも公表されているので、誰でも簡単にディスクロージャー誌を見ることが可能です。
このように、長期金利の上昇は、中小企業経営者、小規模事業者にとっては決して対岸の火事ではありません。
自社を守るためにも、メインバンクの経営体力について、常に把握しておく必要があるのです。
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。
