【中小企業経営者の心得】自社の株式の存在を再認識する必要性とは?

今日は、中小企業経営者の心得として、自社の株式の存在を再認識する必要性について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 株式会社の原点は株式にあり
2 「会社は株主のためのもの」を再考する

どうぞ、ご一読下さい。

 

1 株式会社の原点は株式にあり

「どうせ、うちは会社といっても、うちの家族でやってるようなもんやから、株なんて、関係ないで」
時折、このような言葉を発する中小企業経営者、小規模事業者事業主をお見かけします。

北出は、「社長、個人事業ではないので、会社の株って、ホンマに大事なもんなんです」と僭越ながら意見させて頂くことがあります。
中小企業なので、自社の株式に興味がない経営者で、本当にいいのでしょうか。
今日は、このテーマについて考えてみます。

確かに、世の中の会社の99%(数ベース)が中小企業で占められていて、中小企業はほぼ全てが非上場です。
新興市場はさておき、東証プライムに上場するような会社で、世間で言う「大型株」であれば、機関投資家等が筆頭株主であるケースが多いですが、筆頭株主の持ち株比率はせいぜい数パーセントに過ぎず、個人株主も数多くいます。
そのような会社の株式であれば、毎日株価も動きますし、売買も頻繁に行われます。
そのようなイメージが先行する株式であれば、確かに、中小企業の株式に経営者自身が興味を引かないことは理解できないこともありません。

ところが、いざ、事業承継や事業譲渡といった局面に経営者が立たされると、自社の株式の存在を通よく意識せざるを得なくなります。
その時、初めて、中小企業経営者は、株式会社の原点が株式にあることに気付かされます。

株式会社の株式の価値は、第一義的には、貸借対照表の右側(貸方)の下方にある株主資本合計(純資産合計)です。
簿価純資産合計額から、資産を時価評価(含み損や費用性資産を減算する)ことで、実質的な純資産額が算出されますが、乱暴に言ってしまうと、実質的な純資産額を発行済み株式数で除したものが一株当たりの株価です。
簿価ベースで資産超過であっても、実質ベースで実質債務超過であれば、株価はマイナスです。

仮に、実質債務超過で、株価0円の会社を、息子に事業承継させることは、息子にとっては相当な悲劇です。
もちろん、対税上の配慮は必要ですが、事業承継税制を活用すれば、株価が相当のプラスであっても、自社株に対する相続税は猶予されますから、経営者が息子に事業承継させる際には、相応の株価の株式を譲渡すべきです。

次に、自社株式に関して、重要な観点が「議決権」です。
理想的には、事業承継があろうとなかろうと、オーナー一族が発行済み株式の2/3以上を握っていれば、株主総会での特別決議をいつでも決議することができます。
他方、仮に、息子がまだ経験不足で、番頭にセットアッパーとして一時的に事業承継させる場合、番頭に1/3以上の発行済み株式を譲ってしまうと、特別決議に対する拒否権を与えてしまうことになります。
逆に言えば、番頭にセットアッパーとして一時的に事業承継させる場合、番頭の持ち株比率を1/3未満にしておけば、いつでもオーナー一族が番頭を解任することができます。

このように、株式会社の原点は、株式にあることは明確なのです。

2 「会社は株主のためのもの」を再考する

こうなってくると、中小企業経営者は、皆、自社株式への認識を強くします。
何がなんでも利益を出して、内部留保に利益を蓄積して、株価を上げていくと共に、配当や役員賞与として株主に還元することを意識するようになります。
7年後に、新興市場に上場して、上場成金になることを決意するかもしれません。

それが、株式会社の本質であることを疑うわけには行きませんし、それはそれで会社、と言うよりは、株主の方針なので、異議を唱えるつもりもありません。
しかしながら、株主の利益を最優先しようとすると、かつてのハゲタカのように、強欲な連中に成り下がってしまう可能性も拭えません。

本来の中小企業の良さでもある、大家族主義的なおおらかな社風を一掃することには必ずしも賛成することはできません。
7年後に新興市場上場も良いけれど、向こう30年間、緩やかながら着実に成長軌道を描いてサティスナブルであることの方が、中小企業のあるべき姿なのかもしれません。

多くの中小企業が、従業員が近隣出身者であった李、お客様や仕入先も地場企業で、メインバンクが地域金融機関であったりするため、その経営スタイルは、地域密着です。

中小企業経営者が、自社株式への興味を強くし、安定した事業承継に繋げていくことを願って止みませんが、自社株式への認識が深まった経営者だからこそ、「会社は株主のためのもの」で良いのか、再考する機会になさってはいかがでしょう。

公式サイト「子息・子女までの次世代に残せる中小企業の創造」もご覧下さい

ハンコの画像
子息・子女までの次世代に残せる-中小企業の創造

【中小企業の銀行対策】会社と個人をきっちり分別する必要性とは?も併せてご一読下さい

【中小企業の銀行対策】会社と個人をきっちり分別する必要性とは?
【中小企業の銀行対策】会社と個人をきっちり分別する必要性とは?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA