【中小企業の銀行対策】事業性資金のリスケジュールと住宅ローンとの関係性とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、事業性資金のリスケジュールと住宅ローンの関係性について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 協議会案件では住宅ローンは金融調整の対象外である
2 過度な役員報酬削減は危険である
どうぞ、ご一読下さい。
1 協議会案件では住宅ローンは金融調整の対象外である
新型コロナウイルス感染症の影響はほぼ収束した今でも、飲食業、宿泊業といった中小サービス業では、コロナ資金の借入金が重く、リスケジュール状態にあるケースが散見されます。
事業性資金(会社の借入金、個人事業の場合の個人ローンを除いた事業資金)をリスケジュールするのは、事業継続のため、取引金融機関としても柔軟に対応して頂いているのが現状です。
とは言え、借入金は、言うまでもなく補助金や助成金ではないので、返済しなければなりません。
「借りたカネは返さなければならない」のです。
リスケジュールは謂わば出欠状態にある会社に止血をするようなものです。
1年間あるいは2年間の元本返済を全止めにする間に、出血している傷口を塞いで、営業キャッシュフローを創出して、元本返済を再開、概ね10年以内に償還年数を10年程度にすることでリファイナンスを目指し、債務者区分を「正常先」に戻していくというのがリスケジュールの経営改善のフローです。
出血状態を止血するために、やるべきことはたったの3つで、1つ目は、売上を増やす(入りを増やす)、2つ目は、コストカットする(出を減らす)、そして3つ目は、その両方を実践する、ということに尽きます。
このうち、コストカットする(出を減らす)ために、経営者がいの一番にできることが、「役員報酬の削減」です。
「役員報酬の削減」は事業性資金をリスケジュールするのに当たって、ある種、経営責任を明確化するという観点でも、取引金融機関に対しては効果的です。
ところが、多くの場合、中小企業経営者自身が住宅ローン債務者であるため、住宅ローンの返済のため、役員報酬カットが難しいという風になりがちです。
他方、住宅ローンが民間金融機関の場合、会社のメインバンクで組まれているケースが多いので、メインバンクが住宅ローンの保証会社と調整して、事業性資金と共に、住宅ローンも限りなく利払いのみに近い形で、リスケジュールすることになるのが通常です。
また、住宅ローンがフラット35のような政府系金融機関である場合も、比較的リスケジュールに柔軟に対応してくれるケースが多いようです。
一方、中小企業活性化協議会のリスケジュール案間では、経営者個人の住宅ローンは、金融調整の対象外であるため、住宅ローンのリスケジュールは、経営者個人が住宅ローン会社等住宅ローン債権者と交渉する必要があります。
2 過度な役員報酬削減は危険である
役員報酬の減額と住宅ローンとの関係性についてみてきました。
他方で、リスケジュールによって経営改善を図っていく中小企業経営者にとっては、日々が「経営改善との闘い」が続きます。
日々「経営改善との闘い」が続く中、家族と自宅を守ることは、心のよりどころです。
過度な役員報酬によって、日常生活に支障が出るようなことがあっては、経営改善はままなりません。
家族との不和が生まれるようなことがあっては、頑張れるものも頑張れなくなります。
また、過度な役員報酬によって、日常生活を維持するため、役員報酬で足りない生活費が経営者向けの貸付金としてBS(貸借対照表)上に計上されるようになっては、BSの健全性が損なわれ、取引金融機関の支援継続に支障がでかねません。
役員報酬の減額は大切な経営改善の施策の一つではありますが、日本国憲法第25条1項が「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定していることも忘れるべきではありませなん。
中小企業経営者は、事業性資金をリスケジュールするのに際して、役員報酬の減額が最も手っ取り早いコストカット策ではあるものの、過度な役員報酬削減は日常生活を脅かすようなリスクを抱えていることを勘案して、役員報酬を適正な水準に落とし込むことが重要なのです。