【中小企業の銀行対策】土地購入には慎重であるべき理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、土地購入には、慎重であるべき理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 土地購入資金は「寝てしまう」
2 さりとて「不動産の力」も無視できない
どうぞ、ご一読下さい。
1 土地購入資金は「寝てしまう」
中小企業であっても、業歴が長くなり、会社としての規模を拡大してくると、何かと経営課題として浮上してくるのが、不動産の売買です。
業歴の浅いスタートアップのような会社には、不動産を購入するような資金的な余裕もなく、内部留保の蓄積も道半ばなので、事務所や工場は取り急ぎ賃貸物件で用意するのが一般的です。
ところが、賃借している限り、いつ、大家さんから「建物を取り壊してマンションを建てるので、1年以内に退去して下さい」などと通告されてしまうと、急ぎ代替物件を探さなければなりません。
適当な代替物件が見つからなければ、事業継続に支障が出かねません。
また、経営者の立場からしても、文字通り「一国一城の主」になりたいと考えがちなので、本社社屋と底地を自社物件として取得したいと考えるのも自然です。
ところが、本社社屋と底地を売買で取得する際、金融機関から資金調達をする場合、建物は減価償却費を計上することで借入金の返済原資を捻出することができますが、困ったことに、土地は減価償却の対象ではないため、土地購入部分の資金は、「寝てしまう」形にならざるを得ません。
資金を次の成長に振り向けるべきであるという考え方からすると、土地購入よりも生産設備の増強といった成長投資に資金を振り向けた方が合理的であるということもできます。
このように、キャッシュフローの面からすれば、自社で土地を購入ことには慎重であるべきだと北出は考えるのです。
2 さりとて「不動産のチカラ」も無視できない
他方、不動産自体が持つ力についても、軽んじるのは早計です。
特に、都市部での不動産のチカラは、地方ではみられないほどの資金調達の源泉でもあります。
例えば、大阪の場合、新興市場にIPOするような新興企業であっても、梅田にあるオフィスは賃借物件です。
一方、船場や本町で本社を自社物件で保有する老舗中小・中堅企業は、明治の代から自社物件を保有していて、簿価は下手をすると1円単位です。
そのような会社が保有する土地の含み益は莫大で、想像を超えるような担保価値を有していて、必要な資金調達は古くから続くメインバンクから十分できていて、苦労してIPOをする必要性もありません。
もちろん、かつてのバブル経済がもたらした狂乱物価と、その後の凄まじい地価下落によるバブル崩壊を忘れてはいけません。
現に、直近でも、コロナ禍では、インバウンドに支えられてきた不動産価格の上昇にストップがかかったことは記憶に新しいところです。
土地購入に際しては、土地購入資金が「寝てしまう」資金であるデメリットがある一方、都市部で顕著に見せつけられる「不動産のチカラ」という強烈なメリットをバランスよく両立することが、中小企業経営にとって重要です。
中小企業経営者は、基本的には、土地購入にかかる資金が「寝てしまう」リスクであることをしっかりと認識して、過度な不動産購入には慎重を期しつつ、キャッシュフロー重視で、フリーキャッシュフローを次なる成長に振り向けていくことに普段の経営努力を注ぐ必要があるのです。