【中小企業の銀行対策】巷で聞かれる金融機関の「店舗内店舗」が中小企業に与える影響とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、巷で聞かれる金融機関の「店舗内店舗」が融資を受けている中小企業に与える影響について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 金融機関も収益力強化に躍起である
2 融資を受ける中小企業が「店舗内店舗」によって変わること
どうぞ、ご一読下さい。
1 金融機関も収益力強化に躍起である
原材料の上昇や人手不足の中、中小企業が収益力を上げていくのは、相当の経営努力が必要になります。
経営改善局面にある融資を出している金融機関は、融資先の経営改善を推進していますが、かくいうその金融機関も、金融機関によって程度の差はあれど、収益力強化に取り組んでいます。
特に、預貸率が低く、公社債での資金運用比率が高い金融機関にとっては、市場金利の上昇局面は、保有している公社債に含み損が発生する可能性が高まるため、収益力強化に躍起です。
そんな中、金融機関では、営業店での収益アップに取り組んでいます。
融資残高を増やすだけではなく、NISAの効果もあり、投資信託の販売強化によって役務収益を上げていくことに注力しています。
他方、金融機関の営業店は、営業店別に営業係数(100円儲けるためにかかるコストを計算したもの)が弾き出され、部店長(支店長等)の業績評価に直結します。
実際、金融機関の営業店は、日々相当なコストがかかります。
金融機関営業店が夜間に強盗に入られて、現金を強奪されたなんてことになってはシャレにもならないので、警備の費用は一般の民間企業のそれとは相当な金額です。
水道光熱費もバカにはなりません。
何よりも莫大な人件費がかかります。
部店長(支店長等)、自席(次長、副支店長等)の管理職は高所得者ですし(もちろん、個別の金融機関によってかなりの幅があることは事実ですが)、非管理職の課長や支店長代理といった役席者、役職のない若手も含めると、営業店の大小はあり、近年では、OGを中心にパートや派遣従業員の比率を高めてはいるものの、人件費が営業店で最も大きなコストであることは間違いなさそうです。
このため、合併行は当然のことながら、単独で生き残りをかけている金融機関であっても、営業店の統廃合が進められています。
ところが、A支店とB支店を統合して、A支店にしてしまうと、B支店の取引先は、支店名も口座番号も変わってしまいます。
それでは、日々錯綜する膨大な振込事務に多大なる支障が出てしまいます。
取引に混乱を招くことなく、営業店を統合するために登場したのが、「店舗内店舗」という方式です。
A支店の中に、B支店がお引越しをして、2つの支店が同じ場所で営業するのが「店舗内店舗」です。
ただし、A支店の建物の中には、A支店とB支店を分ける壁はなく、A支店とB支店の従業員が一緒に仕事をすることになります。
他方、特に、部店長(支店長等)は、A支店長兼B支店長と両支店の支店長を兼務することになります。
役席クラスや役職のない若手には店舗内店舗によってポストを失うことはありません(兵隊の仕事は減らないのがその理由)が、A支店とB支店の店舗内店舗による営業店統合によって、少なくともどちらかの支店長がポストを失うこととなります。
もちろん、統合され一瞬ポストを失った支店長であっても、業績評価次第によっては、もしかすると、執行役員に昇格する方もおられるかもしれませんが、多くの場合、本部のスタッフ部門に外れたり、出向の憂き目にあうかもしれません。
このように、今時の銀行員は、安泰の職業とは言えないのです。
2 融資を受ける中小企業が「店舗内店舗」によって変わること
「店舗内店舗」の金融機関での中身について上記で書きました。
それでは、実際、中小企業の取引金融機関の営業店が「店舗内店舗」で店舗統合された場合、どのような影響があるか、考えてみます。
上記で書きましたが、「店舗内店舗」によって店舗が統合されても、お客様から入金頂く普通預金や当座預金の口座番号が変わることはありません。
お客様にご迷惑や手間を取らせることはありません。
これがまず重要なことなので、安心して頂きたいところです。
ただし、「店舗内店舗」によって取引している営業店が移転した場合、普通に考えると物理的な距離は遠くなってしまいます。
今まで気軽に自転車で支店に行っていたけれど、これからはクルマで行かなければならなくなるかもしれません。
そのためには、今まで以上にネットバンキングの利用頻度を上げる必要がありそうです。
得意先係や渉外係といった外回りの担当者は変わりませんが、物理的な距離が遠くなることで、もしかすると、外回りの担当者が今までのように足繁く通ってくれなくなる可能性はなきにしもあらずです。
これが一番懸念されることで、営業店が遠くなってしまうことで、担当者とのコミュニケーションが取りづらくなるのは看過できないことです。
このため、試算表や資金繰り表をメールで送ったり、打ち合わせをZOOM等で行うことも考えるべきです。
他方、一部の金融機関では、いまだに「セキュリティの問題」を理由にして、外部メールが使えなかったり、ZOOMでのオンライン打ち合わせに消極的なケースが散見されるのは非常に残念なことです。
言うまでもありませんが、特に、メインバンクとの信頼関係は、中小企業にとっては資金調達の可否を左右します。
「店舗内店舗」で取引営業店が遠くなった場合であればこそ、中小企業経営者は、面倒くさがることなく、担当者との密なコミュニケーションをとることが重要なのです。