【中小企業経営者の心得】非上場オーナー経営の心地良さとは?
今日は、中小企業経営者の心得として、非上場オーナー経営の心地良さについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 非上場オーナー経営の経営者は絶対権力者である
2 世の中は万事スピード重視である
どうぞ、ご一読下さい。
1 非上場オーナー経営の経営者は絶対権力者である
中小企業経営者の中には、「うちはしがない中小企業やからね」と謙遜される人がいます。
しかしながら、「だから上場企業はいい」と単純な話にはなりません。
何故、上場が絶対的なものでないのでしょうか?
確かに、「当社は上場企業でございます」といえば、営業上でもちょっとは有利に働きそうな気がします。
創業者であれば、株式の価格がどどーんと上がって、上場長者になれるかもしれません。
上場初日に取引所でモーニングベルを鳴らす経営者は、そうそう多くはありません。
とはいえ、東証プライムならいざ知らず、新興市場での上場企業は、正直なところ上場企業の体を成していないケースも散見されるような気がしてなりません。
また、ディスクローズや内部統制への対応など、人的負担も金銭的負担もバカにならないくらいです。
現実に、コロナ前では年間40から50件程度であったMBO(Management Buyout)ですが、最近では、年々その件数は増加傾向にあって、2023年には、実に1年間で93件にも達しています。
MBOで非上場化する際に、上場時に経営者が得た創業者利益で一般の株主から買い取るような形です。
MBOで非上場化する大きなメリットは、上場企業としての負担を無くすることに加えて、オーナー経営者が再び多数の株式を保有して、会社を支配できることです。
実際に、発行済み株式の66.7%以上を経営者自身とその近親者で保有すれば、経営者は、会社の中で絶対権力者として君臨することができます。
世の中の中小企業の多くは、非上場で、かつオーナー経営ですが、オーナー経営者は気付かないうちに、自らが主導して意思決定を行なって、会社を運営しているというのが現実です。
このように、非上場のオーナー経営者は、会社の絶対権力者として君臨することができ、かつ、上場したり、M&Aをしない限り、後継者も絶対権力者としての地位を維持できます。
非上場経営者は、心地良いことこの上ないのです。

2 世の中は万事スピード重視である
北出が考える非上場オーナー経営の最大のメリットは、「意思決定の迅速さ」です。
会社として、意思決定をする場合、2週間前までに取締役会の開催を取締役に周知して、取締役会の決をとる必要があります。
下手をすると、社外取締役の日程が調整できず、取締役会の開催は来月みたいな話になりかねません。
商談相手に「取締役会に諮る必要がありまして、3週間ほど時間を頂けませんか」と告げた途端、商談相手は、「そんなに待てませんわ。今回は、見送らせて頂きます。こんなんじゃ話にならん」とせっかくの商談が破談になりかねません。
中小企業でオーナー経営であれば、代表取締役社長の夫、営業担当の専務取締役の息子、経理担当の常務取締役の妻なら、「おい、この案件、やってもええか」と社長が二人に諮って、「社長がええと思うんやったら、ええんと違うん」と二人が納得すれば、取締役会は立派に成立です。
「そしたら、今から相手に早速電話しとくさかい」という具合に、商談はスピード決着で、めでたしめでたしです。
これはほぼ家族経営で、意思決定の極端な例かもしれませんが、スピード重視の世の中なので、このくらいの意思決定のスピード感が必要なのかもしれません。
他方、オーナー経営者が独断専行して、リスクばかりを踏んでしまっては会社の持続性に支障が出かねません。
また、資金調達をメインバンク以下、取引金融機関各行からの調達に依存せざるを得ないため、メインバンクをはじめとした取引金融機関との対話やモニタリングをしっかり行うことが経営者の重要な役割であることは言うまでもありません。
必要に応じて、社外の専門家などに助言を求めつつ、迅速な意思決定を行う必要があるのです。