【中小企業の銀行対策】節税とサステナビリティ向上とが両立しないわけとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、節税とサステナビリティ向上が両立しないわけについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 確かに税金はなるべく払いたくない
2 過度の節税は取引銀行が決して評価しない
どうぞ、ご一読下さい。
1 確かに税金はなるべく払いたくない
ちょうど今が、確定申告真っ最中の季節です。
中小企業経営者でも、一定以上の役員報酬等の所得がある経営者は、会社の決算とは別に個人の確定申告を行う必要があります。
先だって政権与党の中で、政治家の裏金事件が明るみに出るような報道があると、生真面目な経営者ほど、「うちの会社も俺個人も厳格にやってるのに、政治家はけしからん」と憤ることがあっても不思議でも何もありません。
日々、必死で売上を確保して、お客様へのフォローに徹して、生産性の向上とコンプライアンスの徹底に励む経営者からすると、「なるべく節税したい」と感じるのが正直なところです。
確かに、心情的に、なるべく税金は払いたくないと感じるのが人情というものです。
そのような経営者が一生懸命、節税策を考えるのは極めて自然なことです。
次の章で、具体的な節税策のリスクについて考えてみることにします。

2 過度の節税は取引銀行が決して評価しない
生命保険会社、特に、外資系やカタカナ生保の営業職員は、中小・中堅の優良企業をめがけて、一時払いの保険商品を強力に進めてきます。
確かに、保険商品による節税効果は認められます。
しかしながら、取引金融機関の目線は決して保険商品をポジティブに評価することはありません。
その理由は、単純に、現預金が社外に流出してしまって、自己資本比率が低下することが、金融機関が評価する安全性を著しく毀損することになってしまいます。
自己資本比率の低下と安全性既存は、信用格付の低下を招くことが避けられない他、場合によっては、債務者区分が正常先からその他要注意先に転落する懸念さえ払拭できません。
自己資本比率の低下と安全性の毀損は、スプレッドの適用レートの引き上げをもたらすことも想定されて、思わぬところで、支払利息負担が重たくなり、経常損益での減益要因になる可能性があります。
このように、保険商品による過度な節税は、会社自体のサステナビリティを阻害しかねません。
節税と会社のサステナビリティ向上は、残念ながら、両立できないのです。
加えて、生命保険会社、特に、カタカナ生保は、取引金融機関と違って、運転資金や設備資金の与信を出してくれるわけではありません(契約者貸付制度はありますが、あくまでも保険積立金の範囲内。金融機関で言えば、預金担保貸付と同様で、基本的に、金融機関では預金担保貸付は預金と貸付が両建てとなるため預金を解約することが対応するのが原則です)。
メインバンクの担当者が一時払いの生命保険が購入されたことを知れば、「社長、なんで僕に相談してくれなかったんですか!」となって、メインバンクの心証は間違いなく悪化します。
「これはまずい」と経営者が生命保険を解約しようとすれば、元本が割れてしまうことは避けられません。
カタカナ生保の営業職員に抗議しようとしても、固定給がないフルコミッションで、離職率も極めて高い営業職員は退職してしまっていることもなきにしもあらずです。
このように、保険商品による節税は安易に行なってはいけません。
少なくとも、保険商品での節税を検討する際には、メインバンク担当者にお伺いを立てて、相談することをお勧めします。
このように、過度の節税とサスティナビリティ向上の両立は困難です。
中小企業経営者は、安易に節税に走ることなく、本業を研ぎ澄ましつつ、納めるべき税金はきっちりと納めて、残余の税引後当期純利益を内部留保として蓄積することが会社自体のサステナビリティ向上を図る必要があるのです。
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。
